長生炭鉱火薬庫跡【3】

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現地踏査日:2014/1/3
記事公開日:2014/1/7
(「常盤小学校近くにある謎のレンガ積み構造物【2】」の続き)

2014年の幕開けは気温も高めの穏やかな日和だった。元旦にはやや強かった風も2日以降は弱まり、アジトに籠もって記事書きするのを素直に勿体ないと感じるようになった。
年末は窒素線の廃止に伴う偵察や藤山八十八ヶ所絡みで西に向いての踏査が目立った。それで年始め掛かりの調査は東へ向いて走ることにした。八王子神社での撮影を終えた後、この方面での重要かつ追調査が必要になっていた長生炭鉱の火薬庫跡に向かった。
地図などは初回踏査で掲載しているので省略する

馬守り坂を下って市道常盤小学校線へ入る。
正面右側に目立つ赤茶色のマンションを見ると去年の初調査のことが思い出された。


初回踏査では「ちびっ子ギャング」がわらわらと寄り集まっただけではなく、現地ではヤブ蚊の集団にもまとわりつかれた。ちびっ子ギャングは飽きて退散したもののヤブ蚊の多さは如何ともし難く、数枚の写真を撮っただけで撤収せざるを得なかった。

冬休みなので外で遊ぶ子どもたちが懸念されたが、マンション近辺には人影がなく静まりかえっていた。
もっともここから山口宇部道路を隔てた先にある常盤小学校では体育イベントか何かが行われているのだろうか…BGMと人の話し声がここまで聞こえていた。


小学校でのイベントに向かうのかここまでの写真を撮る間も数台の車が山口宇部道路のボックスカルバートをくぐった。
悠長に写真を撮っているとまたあの子たちに「カメラマンが来た!」なんてことになりそうなので、歩道に自転車を停めて足早にあの場所へ…


観光名所や管理者のある遺構とは違うから、説明板はいっさいない。立入禁止など逆に子どもの興味を惹いてしまいそうな余計な立て札もない。雑木林の一部に黒々とした穴が空いていることで判明する状態だ。
今でも情報を持っている一部のコアな人々のみによって観察されている物件なのである。


初回踏査では結構な水が流れていた水路は灌漑用水非需要期のせいか干上がり枯れ葉が堆積していた。
小学校高学年程度の子どもならジャンプで越してしまう幅だし実際一部の子どもたちはそうしているのだろうか…往来で自然にここだけ獣道のような状態になっている。


入口の前にかなりの幹径がある雑木が育っている。
火薬庫が廃された後に根付きここまで育ったのだろう。


思えば去年の秋口は割と雨が多かった。特に初回踏査では雨続きの後にさっと訪れたので水浸しだった。
冬場は空気が乾燥しているせいかレンガ隧道はすっかり乾いていたし足元の枯れ葉も殆ど水分を奪われていた。今回は思う存分調査できそうだ。


初回踏査時は言及しなかったが、今思えば入口のレンガ壁の一部が削られているのは通路に取り付けられていた扉の蝶番を外した跡と思う。
火薬が格納されていたので、通常は入口の扉は閉められていた筈だ。
火薬庫側には削られた跡がないので扉はここだけだったと考えられる


隧道部分の前後は落ち葉と砂が溜まって高くなっていた。
袖壁の端の方は肉厚が薄いせいか土圧に負けて壊れていた。


形の上ではトンネルなのだが火薬庫へ出入りするための通路に過ぎないから扁額はない。当時の記録を記した文字などは何処にも刻まれておらず石碑などもない。あくまでも実用一点張りの構造物だ。


隧道の先は6m四方くらいにくり抜かれた敷地になっていて、中央にレンガ造りの廃墟が存在する。
既に敷地の至る所雑木が生えまくっていていた。


初回踏査では敷地内水浸し状態で足元がハマりそうで歩き回れなかった。今回は乾いた足元に助けられて容易に一番奥まで到達できた。
山の斜面を削って敷地を確保した形跡が今も遺っている。


前回観ることのできなかった火薬庫の裏側まで回り込んだ。
一番下の段は後からレンガを削って穴を空けた痕跡がみえる。


分厚く積もった木の葉を踏み締めて更に裏側へ進む。
敷地は削りっ放しではなく下の段は別途レンガで固めてあった。


火薬庫の裏側。初回踏査ではこの場所は水浸しで到達できなかった。


敷地の角から火薬庫と隧道部分を撮影している。
不測の事態が起きたときのことを想定してか、火薬庫の入口は隧道の延長上から外れた直角方向に設置されている。


足元の不安定な斜面に可能な限り登って火薬庫の全体像を撮影した。
火薬庫の扉も天井も既にない。かつてはどんな姿をしていたのだろうか…


斜面の途中まで登って火薬庫の上部を撮影している。
火薬庫の背丈を追い越して伸びた雑木が上から顔をのぞけていた。


レンガ隧道側の面の下部にも通風口らしき穴があいていた。


こちら側は当初から開口部を造ってレンガを築いていたようだ。
一部後から打ち欠いたような部分も見える。


全体がレンガの密閉された造りならそのままだと湿気が溜まってしまう。保存するのが火薬だから通風を保つ必要があったのだろう。しかしそれならもう少し高い位置に造るような気もする。前後の壁の低い位置を削孔すれば雨水が侵入してしまう。
家屋の基礎部分にも同様の通風口を設ける。元は高かったのだが木の葉が積もったために地面と同レベルになってしまったのだろう。

内部はどうなっているだろう…と言うほど広い火薬庫でもないのだが今回は安全に調査できそうだ。

(「長生炭鉱火薬庫跡【4】」へ続く)

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