市道神原町草江線【4】

市道インデックスに戻る

(「神原町草江線【3】」の続き)

この記事を書いている現時点では、市道草江五十目山線との交差点から先が未整備状態だった。
今はこれが当たり前だが、ゆくゆくは拡幅整備され、元の状況が分からなくなるであろうから今をお届けしよう。

自転車で通る分には車さえやって来ない限りそう問題ないものの、車同士の離合場面でとっても困るもの。
電柱が激しく邪魔…anger


恐らく昔は溝が剥き出し状態だったんだろうが、コンクリートの暗渠になってお陰で車道幅を稼ぐことに貢献している。しかし電柱を移設することはせず、暗渠と道路の間に立ったままなので車同士が離合するにもその場所を避けなければならない。
自転車だったら溝の上を通ることでやり過ごせるだろう
それにもかかわらず電柱は移設されていない。いずれこの区間は拡幅されるので、そのときに併せて移設しようということらしい。

3年前に撮った、この区間でもっとも狭い場所。
商店の軒先があって反対側には民家のブロック塀。極めつけには道路幅を稼いでくれた暗渠の功労を台無しにする電信柱の立ち位置。


こんな状況なので、通行規制がなかったとしても大型車両が通り抜けるのは物理的に極めて厳しい。電柱か民家のブロック塀をこすること必至だろう。それ以前に他県から近代的で広い宇部空港に降り立ち、市内観光しようと乗ったバスがこんな道を通ろうものなら「宇部とは何と恐ろしい町よのぅ…」という印象を与えるに違いない(苦笑)

大学時代、私は草江駅まで自転車を漕いでいたので、この区間は文字通り毎日お世話になる道だった。大学を卒業するときまで国道からずっとこの幅の道だった。
この区間は特に狭く、車が前から来れば避けられる場所を探さなければならないし、後ろから車の気配を感じれば背後の車をやり過ごせる場所まで大急ぎで漕がされる状態だった。

敢えて2枚の写真を並べてみた。
片や普通車が間断なく行き交うセンターライン付きの道、片やまるで古い住宅地に向かう私道レベル…
この両者が同じ市道であるなどと信じられるだろうか。


それでも今回この市道を改めて自転車で走ってみて、拡幅工事に向けての準備が少しずつ進んでいることが確認できた。
以前は沿線にあった家が予定道路幅ほど退いている。道路予定地は市が買い上げたのだろうか…仮設のガードパイプが至る所設置されていた。


うんざりするほど狭かったその区間だけは同様の道路敷部分が確保され、周囲を囲まれていた。


いずれは退いた家々の軒先近くまで自歩道が伸び、空港まで行き来する車が往来するようになるだろう。


横切る地区道を挟んで、市道か最後の下り坂にかかる。
ここまでの線形から、右側の畑が道路敷に変わる予定なのは疑いない。しかしまだ用地買収ができていないようだ。


この区間は草江駅に向かう最後の下り坂で、寝坊して危ない時間に家を出ることになったときなど、電車に間に合うかどうか宣告される「最後の審判地」だった。
道幅が狭く右側の畑地が高いので、ここからは草江駅は見えない。踏切の警報機が鳴っている状態だけではこれから電車が駅へ到来するのか、それとも駅で待っていた客を拾い終えてまさに出発しようとしているのか分からない。大抵は前者なのだが、踏切の赤いランプが点滅を始めているのを見て危険も顧みずこの下り坂を暴走したものだった。
乗り遅れてしまった記憶が殆どない…そういう日は自主休講したのだろうか^^;

一足先にズームで先の踏切を窺う。
踏切が狭いので、駅入口を使って対向車をやり過ごす離合劇が頻繁にみられる。


何だか今更感アリアリな気がするが、ここへ正規の大型車両侵入禁止の表示板が立っている。


下っていく市道に対し、傾斜地に平坦部を造って畑にしている様子がよく分かる。道路に接する部分は石積みになっている。言うまでもなく拡幅の暁にはすべて撤去される運命だ。


畑の末端部より右へ入る道がある。ここがJR宇部線の草江駅入り口だ。


駅入口の前に個人商店がある。名前を露呈してしまうことになるが、この店でかつて電車の乗車券販売を行っていた。定期を持つことになる学生以前は、ここで数回切符を買い求めた。
最近販売を止めた模様…ガラス戸に「乗車券は車内でお買い求め下さい」の張り紙があった


この個人商店の真向かいが草江駅の駐車スペースになっている。
草江駅について独立記事を書いたので詳細は以下を参照。
派生記事: 草江駅
車が通る有効幅という面では実質的に最も狭いのがこの踏切である。普通車は問題なく通れるが、踏切での離合は軽四ですら不可能。


名称は草江第1踏切。ここにも大型車両侵入禁止の標識が出ている。


商店のすぐ横にあるポストと、電信柱に貼り付けられた山口宇部空港への案内板。
「== 快適な空の旅 ==」というキャッチフレーズに対して市道の貧弱さがかなり寒い。


こういう状況なので、現時点では空港へのアクセスとして草江駅は極めて良好なロケーションを確保していながら、利用手段として積極的には案内されていない。
地元に居ながら山口宇部空港は一度も利用したことがないので想像でしか物を言えないが、鉄道を絡めて空港を利用する人は宇部新川駅で降りて空港行きのバスに乗るか、小郡から出る直通バスを使うだろう。草江駅は早い時期から通勤通学という地元志向な無人駅であり、空の玄関に至る客を呼び込めるほど大層な駅ではないからだ。
手ぶらで飛行機に乗る人は僅少で、普通は相応な手荷物を持っているものである。そんな人が駅から空港まで8分歩かされるのはきつい。周囲にはタクシーも滅多に待機しておらず、どう思っても観光者向けの駅とは言えない。いくら事ある毎に「目的地への到達だけではなく途中のプロセスも重要」を唱える私ですら、あまりの不便さは時間と労力の無駄遣いと考えてしまう。

もっとも個人的な見地としては、この狭隘区間が整備され空港へのアクセスが容易になることは歓迎しても、拡幅工事の早期着工を唱える気はまったくない。今や草江駅まで自転車を漕ぐこともないし、空港を利用することも多分ない。何よりも公共の利益の重要性は理解できても、部外者である私が沿線住民に早期に立ち退くべきだなどと主張できる立場ではないからだ。

元から今の狭い道であるからして、沿線には昔から何十年と暮らしていた住民の家が立ち並ぶ。住んでいる家を追われ、家は取り壊されて庭も失い、数十年かけて自分と家が歴史を刻んできた地がまったく姿を変えてしまう苦痛は、当事者でなければ分からない。人により個人差はあるだろうが、住み慣れた家を追われた人は、その後の暮らしぶりはもちろん考え方や思考形式まで影を落とすことがしばしば起きる。
現時点では補償金という金銭的な対処しか出来ない。恐らくそれだけで片付けられない重い要素があるから現在の難航ぶりがあるのだろう。こうした経緯はひとたび拡幅された道路が完成してしまえば、ほぼ確実に歴史の闇へ葬り去られてしまう。

踏切から眺めた草江駅。
プラットホームが踏切付近まで伸びているので、宇部岬駅を出た電車が接近し始めてから発車するまでは踏切が塞がった状態になる。
常盤駅から来た電車が駅に停まれば列車の後部が見える位置にありながら踏切は開放される


踏切を反対側から撮影。市道のすぐ横に駐車場と駐輪場がある。
いずれ全面的に改良されるからか、路面はかなり傷んでいながらも放置されている。


事実として、鉄道の存在はそこを横切る道の改良工事に対して極めてネガティブに作用する。市道沖ノ旦串線の終点にある梶原第1踏切のように通行量が極めて多いながら幅狭な状態が解消されなかったり、市道厚東川東通り線のように踏切そのものが存在しないために通行不能が放置されている事例がある。鉄道は極めて公共性が強く、道路の仕様や安全設計を吟味するための時間や書類が煩雑だからではないかと想像される。

ちなみに、踏切部分の道路改良工事は最終便が通過して早朝の一番列車が来るまでの深夜帯に施工される。
国道190号の中通踏切だったろうか…踏切舗設のためにレールを除去された施工写真を見たことがある

踏切を渡れば、市道は少しはマシな幅員を取り戻す。空港はもうすぐ目の前だ。


空港前の交差点付近も用地買収が進められているようで、至る所に単管バリケードがみられた。


市道の終点に到着。ここで県道宇部空港線に接続される。
空港前の交差点は信号で交通整理されている。交差点が造られた時期から若干遅れて設置された。


空港敷地内へ入るには何も考えることなくこのまま直進すれば良い。
素晴らしく良好なアクセスである。車の方は、私の案内通り無事に到着できただろうか…^^;

しかし終点から振り返れば…
すぐに狭くなる市道の未整備区間が見えているのである。


空港へのもう一つの玄関口になる交差点なので、信号は結構頻繁なタイミングで変わる。しかし市道がこういう状態なので、県道側が赤に変わったのに市道から出てくる車が一台もない現象が頻繁に起きている。県道は信号が少ない4車線の快適な道なので、無駄な足止めを喰らうありがたくない交差点かも知れない。

もう数年もしないうちにこの未整備区間は拡幅改良される筈である。
たまたまこの方面を訪れたとき工事の進捗状況が分かる写真を撮影できたとか、あるいは未整備区間が全通し供用開始された折にはこの続編をお届けすることになるだろう。
【路線データ】

名称市道神原町草江線
路線番号25
起点国道490号・神原交差点
終点県道宇部空港線・空港入口交差点
延長約2400m
通行制限大型車両通行不能区間あり。
備考

延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください
【追記】(2012/6/20)

今月上旬に空港の公園を訪れ、空港駐車場からこの交差点に出るとき案内される看板を撮影してきた。


直進に一応、草江駅が案内されている。すぐ目の前に見えている駅を案内しないのも不自然なので仕方なく…という感じだ。青看で案内されていても実際にはマイクロバス以外の大型車は踏切を通れないので、草江駅には到達不能である。

踏切の写真を見て分かる通り、市道が自歩道を伴った対面交通の道で延伸されるには、草江駅の駅舎から現踏切までのホームはすべて撤去が必要となる。
ホームだけ切りつめれば草江駅は現状より更に小規模な駅になってしまう。もしJR西日本が空港から鉄道に人の流れを取り込み活性化させようと画策しているなら、当然ホームの延伸は元より駅舎の改築や駅前広場の整備も検討するだろう。

市道の改良だけならホームを切りつめて幅員確保するだけだが、これを機に駅前整備を行うか否かはその対費用効果がどれほど見込めるかというJR西日本の判断にかかっている。この区間の改良が遅れているのは用地買収の件もさることながら、駅自体をどうするのかも要因にあると思われる。

ホームに戻る