市道藤曲門前線【3】

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(「市道藤曲門前線【2】」の続き)

鉄塔の見える沢地部分を過ぎると、本路線は大きく右へカーブした。
写真では既に未舗装路のように見えるが一応アスファルト舗装路である。通行量が少ないため路上に砂が溜まっているからだ。


この先のカーブでちょっと懐かしい感じの構造物を見つけた。
これは恐らく昔の「ごみ箱」ではないかと思うのだが…


こちらに数枚の詳細な写真を載せている。
派生記事: 昔のごみ箱?

またしても廃屋だ。
道も次第に表面が砂っぽくなってきている。何も知らなければ「行き止まりかも知れない」フラグが立ち始める頃合いだろうか。


この舗装路を利用する最後の民家だ。
舗装路はここで左に折れ、庭先まで続いていた。


庭先に小さな屋根のついた祠のようなものが背を向けているのが見える。
民家の庭にある以上、私有物のように思われるのだが、重要な遺構なので掲載しないわけにはいかない。
派生記事: 藤山八十八ヶ所・第76番

さて、問題は本路線の行方だ。
車でここまで乗り込んでしまったドライバー(そんな人があるかどうかは?だが)が「しまった!」とばかりに転回を考え始める瞬間だ。


行き止まりなのではない。道としては真っ当に続いている。舗装路はここで終わりというだけだ。
しかしなおも何処かに抜けられるのでは…とばかりに強引に車を乗り入れようとするドライバーも居ないだろう。


この点、自転車はまったくお気楽だ。車の半分以下の道でも余裕で通れるし、階段があって困っても担いで歩けばよい。たとえ藪が行く手を遮ろうが軽微な藪なら押し歩きで突っ切るまでだ。
そのいずれをも先々で求められることになろうとは…^^;

最後の民家へ到達する頃には坂道は殆どなくなり平坦になっていた。代わりに舗装路から土の地面という素朴な道になった。その変化を慈しむためになおも自転車に乗らず押し歩きした。
タイヤが地面を舐めつつ動くジャリジャリという音、踏み締められる度に乾いた音をたてる落ち葉…車社会から一気に昔の暮らしへワープしたようである。スタート時にアスファルトに塗り固められたのと同じ市道だとは…

落ち葉の道のすぐ右側は送電鉄塔を囲むネットフェンスだった。その先には…

落ち葉で舗装された古風な道。
それも登山道にしては平坦でしかも幅が広い。


振り返って撮影。
遠くからも見えていたあの奇妙な鉄塔の足元へ来ている。この市道がメンテナンス道を兼ねているようで、市道に面して扉が設置されていた。


今のところ鉄塔群すべてをトレースするなどという途方もない計画はないが、近くまで来れば一応撮影するようにしている。先ほどの宇部興産(株)特高線のように無くなってしまうことはないにしても、古い鉄塔の建て替えは結構あるからだ。

ここで自転車を停めて鉄塔を囲むフェンスの外側を調べる過程で、そこから隣接する鉄塔への索道が栄ヶ迫溜め池の上堤に到達する道を兼ねていることが判明した。実際の時系列でもここで市道トレースを中断して上堤の撮影を行ってきた。
派生記事: 栄ヶ迫池・上堤に至る道
(記事が書き上がり次第リンクで案内します)

十数分の小休止を挟んで再びここへ戻ってきた。
それでは続きを行こうか…もうここから先は車が後ろからせっついて来ることはない。


道の近くには割と最近結束されたと思われる竹材が置かれていた。
最後に見えた民家の方によるものだろう。


この他にも同じ路端には随分と昔に投棄された建築ブロックや家を解体した後で再利用を目的に積み上げられたコンクリート瓦が見受けられた。

寂しい場所だが山歩きと思えばそれなりに風情ある道だ。
牛車も通せる程の幅があり、昔からの道とするなら随分と高規格と言える。


さて、本路線が昔からの道であるかどうかは…トレースを開始した時点では分からなかった。この記事を執筆している現時点でもまだ確定的なことは言えない。
地元在住お二方からの話を伺うことができている

両側はみっしりと雑木林に包まれているため視界は殆ど効かない。しかし本路線が尾根伝いに進んでいることは地形から推測された。木の葉を敷き詰めた道の両側どちらも低くなっていたからだ。
今は使われていない細い水路が道に沿って伸びていた。


この場所で水路の位置関係が入れ替わっていた。木の葉の間から露出している岩で気付いた。
簡素な石橋になっているらしいが、全体が落ち葉で覆われ殆ど地面と一体化していた。水路はもう使われていないだろう。


道は鉄塔のところから100m程度直線的に進み、やがて地形に応じて左へ曲がっていた。


曲がった先には伐採された木の枝が無造作に置かれていた。もっとも道としてはまだ四輪が通れる程の幅はあった。


先が明るくなってきた。電柱のようなものが見えるので、割と開けたところに出てきそうだ。


山の中に唐突に出現したコンクリート電柱。左右に道らしきものがあり、T字路に出てくるようだ。
最初何も知らずに訪れたときは、こんなところに道などない筈なのだが…と思われた。


今だから分かるし、地図を眺めることで現在位置を確認できるだろう。だから出てくる場所に今更驚きはないのだが、分かっていても初めて訪れれば地図では掴みきれない異様な眺めに出会うことになる。

右側を眺めたところ。
もの凄い急な登り坂!
点々とコンクリート電柱が並んでいる。幅は今までの道よりずっと広い。


左側を眺めたところ。
もの凄い急な下り坂!
今まで自転車を押してきた道に繋がっているようでもある。下っていく側はやや草が目立っていた。


即ち本路線は麓から山の頂上近くまで伸びるケーブルカーのインクライン同様の斜路の途中に出てきている。
この斜路の勾配はまったく異常で、とても四輪が通れる設計になっていない。特に登っていく斜路の途中にはコンクリート階段のような部分もあり、これにて車で進攻してやろう…などという野望は完全に潰えることになる。
…と言うか通れると思ってここまで車を乗り入れたことのある野心家は居るのだろうか

現在地点を中心にポイントした拡大地図である。
今まで西から東へ、地図で言えば左から自転車を押し歩きしてきたのだった。


斜路の麓には中山浄水場という文字が見える。そのことから斜路の素性が推測できるように、このインクラインみたいな斜路は中山浄水場で造られた上水を押し上げるための経路である。元から四輪などが往来する道として設計されていない。地表部からは殆ど見えないが桃山配水池へ上水を送る配水管が埋設されている。
そうなればこの斜路は水道局管理の道(これが道と言えるかどうかは別として^^;)ということも考えられる。[1]

じゃあ、市道としての本路線は…ここから先一体何処へ行くの?

何だか悪い予感がした。

まさか…
ここを直進なんてことは、ないよね?


先の拡大地図を見ると、ここはT字路ではなく十字路のように記載されている。上の写真で言えば、斜路のどちらも辿らずここを直進する道が存在することになる。もしそれが本路線の行き先だとすれば…

絶対に無理。
こんなの進めるわけないよ(>_<);
さて、我が市道トレーサーの運命はどうなるのであろうか…

(「市道藤曲門前線【4】」へ続く)

出典および編集追記:

1. 例えば高天原浄水場に水を送る導水管は小野田市水道局の所有で、埋設管の上は車も通れる道になっているが全線が水道局の管理となっている。

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