市道藤曲門前線【4】

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(「市道藤曲門前線【3】」の続き)

人里離れた感じのする山道を抜けた先は、何と中山浄水場の上水を桃山配水池まで押し上げる斜路の中腹だった。
斜路が水道局関連の設備であることを考えれば、市道の行き先として予想されそうなのは…
まさか…この藪に向かって直進するとか?


…なんて鎌を掛けて言ってはみたものの、当然ながらここへ訪れる以前から市道路河川管理課の地図で本路線の経路をチェック済みなのである。ましてこれほど分かりやすい分岐点なのだから、どの方向へ進むべきなのかは当然理解していた。だから勿体ぶらずに正解を示すと、

ここで右へ曲がって斜路を登る。
これが本路線の行き先だ。即ち本路線は中山浄水場の埋設管路を一部共用している。

このような路線指定になっている理由はいろいろ考えられる。最もありそうな推測は、水道局によって管が埋設される以前から桃山の高台に向かう一つの古道だったのではというものである。この仮説は後で明らかになる本路線の奇妙な振る舞いも理由となっている。まあ、その点は後でゆっくり述べることとして…

直進でなかったことは今の時期からすれば幸いだった。いくら市道トレースとは言えあんな酷い藪の中へ突っ込める訳がない。ここから自転車を押し歩きしつつ斜路を登るのは楽でないが、あの藪へ突入するのは楽でないという以前に些かの拷問である…

しかしそのことは直進する経路を「辿らなくても済む」ということにはならなかった。本路線から外れるというだけで、信じがたいことに直進する道は市道金山線という別の認定市道になっているのである。


どういうことになっているのか路線図を書いて色分けしてみた。


まず前編の末尾でも触れたように、この場所は本当に十字路となっている。本路線はこの十字路で右に曲がり、中山浄水場の斜路を桃山配水池に向かって登る。斜路を下っていく方はさすがに市道ではない。恐らく水道局管理の通路だろう。
そして十字路から高度を変えず山沿いに進む道が地図に記載されており、市道金山線と呼ばれている。ただし…現地を見る限り誰の目にも道なんてありそうに思えない状況だ。

廃道同然の様相を呈していながらここを起点に直進する金山線は現役の認定市道である。したがって藤山区の認定市道を総なめにしたいなら、いずれ走破しなければならない対象なのだ。
その奇特ぶりは早くから分かっていて3年前に最初のトレースを行っている。あれから3年も経つので、この記事向けに市道藤曲門前線をトレースしたときも可能ならば金山線の最新の画像を撮り直そうと思っていた。ところが…現状がこんな塩梅なので即座に諦めたわけであった。
無理です。
こんなの進めるわけありませんっ(>_<);


3年前の状況は幾分マシだった。それでも終点付近は本当に酷い状況で、走破と言うか自転車を引き連れての脱出は殆ど肉弾戦のような様相だった。初期の走破レポートの様子は以下の派生記事で予定している。
派生記事: 市道金山線
さて、ここから下る経路は市道ではないが置き去りにはできない。中山浄水場の裏門から桃山配水池までは一本の管埋設路なのに、市道と重複する部分だけレポートして十字路から下る部分は放置というのもおかしな話なので。
この部分の構成をどうしようかかなり迷った挙げ句、中山地区にある「その他の道」というセクションへ強引に入れることで記事を書いた。こちらを参照されたい。
派生記事: 中山浄水場・押し上げ管路
上の記事の前半部分は十字路から裏門までの斜路、後半部分はこれから辿る市道部分と重複している。斜路自体は水道局の管轄なので、市道の本路線としては経路のみ軽く扱うことにする。
そうでなければこの先がまだまだ長いのに話が前に進まない…^^;

時系列では自転車を十字路に留守番させ、上記の派生記事向けに裏門まで降りて押し上げ管路の写真を撮ってきた。
ここからは再び市道攻略に戻る…とは言ってもこんな勾配なので、自転車は当然押し歩きだ。かなりきつい…sweat


十字路から先はどういう訳か中央付近だけコンクリート張りになっている。斜路全体にコンクリートを張ったわけではなく、管路に沿って補強している様子でもない。
ところどころで幅が広くなったり奇妙な出っ張りがあったり…わけが分からない。


羽根のように伸びる部分を横から写している。
斜路の勾配がきついので、流れる雨水を両脇に振り分けるためのものだろうか。


羽根部分のコンクリートは等間隔で続いているので、もし上空からこの斜路を眺めれば、魚の骨のような感じに見えるだろう。
こんな奇妙な構造になっている道と言うか斜路というか、まず他には見当たらない。市道路課が設置したのか水道局独自によるものかは不明だ。


コンクリート柱の支持線部分は斜路の中に向けて降ろされている。
普通の道路なら邪魔にならないよう道路の外や平行な向きに設置するもので、当初から車を通す予定がなかったことが窺える。


現在地の山を越えた南側に六角堂があり、あの悪名高い急な直線坂が市道小松原通り線として供用されている。この斜路も中山浄水場から直接桃山配水池へ抜けられる車道となる可能性は…まずなかっただろう。あまりにも勾配がきつ過ぎるのである。仮に斜路全体をタイヤ掛かりの良いコンクリート路にしても四駆でなければ坂を登れないと思う。元から四輪を通す意図がなかったのでかなり例外的だが、見かけは四輪が通れる幅を持ちながらもっともきつい勾配を持つ認定市道の区間と言えるだろう。

次第に斜路の勾配が緩やかになってきた。
この辺りは珍しく斜路の横に露岩が見えている。少しでも勾配を緩くしようと切り崩したのだろう。
浄水場以前の古道が現役だった頃に削ったのかも…


勾配がおさまった先に車止めが設置されていた。この存在により反対側からやってくる車が斜路へ突っ込んでしまう心配はない。車止めは水道局が設置したものかも知れないので、詳細は押し上げ管路の方に書いた。
派生記事: 中山浄水場・押し上げ管路|車止め
押し上げ管の斜路はここまでだ。車止めから先は民家が並び車の出入りもあるので舗装されている。
また、ここから先は桃山地区に入るようだ。
後で示す住宅図でも分かるようにこの近辺は東桃山の3班になる


久し振りのアスファルト舗装路復活だ。勾配も緩やかで問題なく自転車に乗って進める。
この近辺には数軒の家があって日常的に市道を利用して出入りしている。つい先ほどまで山道を走り、斜路を押し歩きするような状況だったのに、更に高いところへ車の通るアスファルト舗装路とは奇妙な感じだ。


斜路の押し歩きがいい加減きつかったので、自転車に跨ってもよかった。しかし跨っているだけで先へ転がる状況ではなくまだ緩やかながら登り坂が続いている。先を急ぐ理由もないし撮るべき物件が多いのでそのまま押し歩きした。
頻繁に訪れる場所とも思えないので撮り残しなく進めたいというのもあった

この場所へ来たことがある数少ない人も、その殆どは桃山配水池の方から到達していると思う。私が初めて訪れたのも確か桃山配水池を観に来たときで、その足で歩いて行き止まりのチェーンが張られたこの場所を訪れている。道の素性が市道云々などという考えを持ち始める以前のことだった。

道路課管理の市道と水道局の管理施設が混在することを知った今でも、複合管理状態に起因するのかも知れない奇妙な道路の造りがみられる。
この場所もその一つで、路肩部分が何だかやりっ放しだ。端までキチンと舗装せず、赤土剥き出しの未舗装部分を2mくらい残している。


舗装の端は適当にねぶり着けられているだけで、管を布設するために元からあったアスファルトを剥がした感じではない。帯状領域の先に上水関連のものと思われるコンクリート小屋があるので、管を布設替えしてそのままになっているのだろう。

コンクリート小屋については上水関連の設備としても収録カテゴリをまだ作っていないので、本路線の派生記事として仕立てておいた。
将来的に上水カテゴリを作成した折りには派生記事を移動する
派生記事: 桃山流量計・その1
流量計を過ぎると、逆からこの区間に乗り入れようとするドライバー向けの告知板に出会う。
私のように斜路を下から辿ってくることは想定されていないので、告知板は当然背中を向けている。


道の左端へ寄ってみた。
この場所から桃山3号配水池の展望台はすぐそこだ。高い展望台が頭をのぞけている。


さて、振り返って看板の素顔を拝見するとして…

「通行止」の標識に補助情報としてこの先100mと記載されている。
車両通行止めは結構見かけるが、工事中でもないのにすべての通行者を対象とした純粋な通行止め標識は珍しいのではないだろうか。
市道厚東川東通り線の未成区間末端にもあったように思う


標識はコンクリート基礎付きでそれほど古さは感じられない。
しかしその両側に置かれている円筒柱の車止めはかなりの年代モノだろう。この奥に家が建つ以前は円筒柱の部分しか道がなかったのではないかとも思える。

なおも道は登り坂だ。
この辺りも水道局関連の設備が目立つ。右側にはかなり大きい角桝があるし、左端には車が段差にタイヤをぶつけないよう注意喚起するために蛍光色で塗られた桝があり…


この蛍光桝(?)から左側へ入る山道があった。正面に見える5号配水池の管理道のようである。実際、違う角度から配水池が見えるかも知れないと思ってちょっと歩いて写真だけは撮影しておいた。しかし浄水関連の施設すべてを詳細に派生記事で追うのは程ほどにしなければなるまい。何しろこの辺りは設備が多いので、派生記事を書きだしたらキリがない…いつまで経っても市道の終点にたどり着けない。それは浄水関連のカテゴリを作成してからということにして、本路線のトレースを究めるにはかなり性根を入れて取り組まなければならない難題が先に控えているのであった。

そうは言ってもこの道路際にある立て札については派生記事で紹介しておかねばなるまい。
派生記事: 郷土愛の立て札
配水池の撮影を行うために、いろいろな角度からカメラを構えていた。自転車は市道路上に留守番させ、草の生えた斜面を上がったり降りたり…

この日は平日だったせいか、配水池の敷地内には草刈りやメンテナンスを行う業者の姿があった。ちょっと腰を下ろして休憩している作業員の中には、せわしなく動き回っては写真を撮っている私を不思議そうに眺めている方もあった。もっとも最近はウォッチされることに関してすっかり耐性がついてしまい、何とも思わない。奇特で危ない匂いのする人物の所作が気になるかも知れないが、それこそ先ほどの郷土愛の立て札の如く、我々足元の郷土を記録するという大義名分の元で実行しているわけでありまして…

さて、先に進もうか。
配水池の間を通る本路線のこの場所でカメラを構えたときだった。


撮影前に一台の軽バンが上の写真の右側にある敷地の中へ入っていくのを見た。宇部市のマークがある軽バンだったので、水道局の職員だろうと推察された。
私が撮影を終えて自転車を押し歩きしていると、軽バンから降りてきたナッパ服の職員が私の歩くよりは速い足取りでこちらに向かっていた。居てはいけない場所で写真撮影している訳でもないので驚きはしない。むしろ何か有用な話でも伺えると思った。

やはり水道局の職員だった。名刺を差し出して何を記録されているのですかと尋ねられた。あいにく私はこの日名刺を携行していなかったので、口頭で「まちなかアート・フェスタ」で写真出展している者ですと名乗っておいた。まあその時点で最も怪しまれずに済む私的肩書きと思ったので。
当たり前だがこの場所で写真撮影することについて問題というのではなかった。ただ、異様に丁寧に撮影しまくっているので傍目にも何事なのだろうと思われて誰何に至ったというところだ。まあ、普通はそう思うよね…^^;

しかし私のような「詮索好きで好奇心の塊みたいな人物」を呼び止めてしまったからには、これも業務の一環と思って頂く以外にない。せっかくなのでいずれ記事にするかも知れない周辺の配水池についていろいろと尋ねてみた。展望台つき配水池の見学可能時期やすぐ近くにある5号配水池[1]の設立時期とか…
この職員が軽バンを停めた場所も含めて普段は立ち入れない場所のフェンス門扉が至る所で開いていた。業者を入れてメンテナンスしているので、立ち会いに来たらしい。だから中で撮影できるか否かを尋ねはしなかった。ダメなのは分かっているし、もし望むなら見学会に参加すれば良いことなので。[2]

いけないイケナイ…また脱線しそうだ。今は市道トレースに集中すべきだ。話が進まない。
その職員は再び軽バンの方へ戻って業者と打ち合わせを行っていた。

5号配水池の入口。この辺りが桃山配水池の敷地としては最高地点である。
ここも門扉は開いていた。接近して撮影したかったが、行儀良く開いた門扉の線上に立って撮影するにとどめておいた。


さて、そろそろ困難な課題が近づいてきた。ここから先は本路線の経路がイレギュラーなことになっているのである。どうイレギュラーなのかは…地図では確認してあったものの現地へ行ってみないことには分からない状況だった。

配水池を過ぎると、久し振りに迷うべき分岐点に出会う。
クランク気味に右へ折れて若干下る道と左へ曲がって更に高台を目指す道だ。
さて、市道の行方はどっちだ?


ここまでは明確に分かっている。道なりに進む右側のクランクが正解だ。

左の高台に登る車が利用するカーブミラーが近くに設置されている。その支柱に貼られているステッカーは「地元管理」となっている。したがって左折が市道の行き先ということはまず有り得ない。


さあ、そろそろ注意して進まなければならない。本路線の本領発揮のときが来た。
「正確に辿るのが非常に困難な路線」という名に恥じない難題がすぐ目の前にあった。
この先の構成をどのようにするのか実はまだ決まっていない…

(「市道藤曲門前線【5】」へ続く)

出典および編集追記:

1. 5号配水池は展望台付きの現3号配水塔ができる前の旧称で現在は2号配水池と呼ばれている。

2. 六角堂も含めて普段は入れない場所を見学できるツアーが時折開催されている。

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