山口宇部道路・未知の跨道橋【5】

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現地撮影日:2015/9/19
記事公開日:2015/9/29
(「山口宇部道路・未知の跨道橋【4】」の続き)

2つある未知の跨道橋のうち一つは山口宇部道路側から強引に到達し、更に迫田側からそこへ向かう里道らしき経路も見つかった。しかし岡ノ辻側の経路は藪に消えていたし、南側に架かる跨道橋の方は上に立とうとする試み自体が叶わなかった。

Facebookに展開している当サイトと同名のページも今や読者が700人を超え、日々市内ネタを提出すれば相応なレスポンスが返って来る状況である。こんなマイナーなネタながら、写真つきで掲載すれば跨道橋に関する何か情報が得られるかも知れないと思って15日のこと提出した。その結果、私と同様に気になっていたという声があり、中には記憶が不確かなものの遙か昔に岡ノ辻側から渡って床波へ帰ったことがあるという情報も得られた。[1]
このことから元から里道が存在していて、単に通行する人が居なくなったために自然へ還っただけのように思われた。
やはり昔からの道があった筈だ…
そのことを検証する好適な手段がありながら、ここまで書き上げるまで些か頭の中になかった。国土地理院の拡大モードで眺めれば細いあぜ道さえも表示されるのである。[2]

下は2つある跨道橋の中間を中心にポイントした国土地理院の拡大地図である。
中央の黄色い道が主要地方道6号山口宇部線、即ち山口宇部道路だ。


この状態でも既に2つの橋を渡る細い道が表示されている。地図の右下にある+印をクリックしてもう一段階拡大表示させると更に分かりやすくなる。このたび攻略した北側の跨道橋は、確かに下の市道迫田長谷線から道が通じている。未攻略の南側の跨道橋に至っては双方の市道へ繋がる道が表示されている。昔は普通に通られていた里道の可能性が極めて高い。[3]
日頃の地図の閲覧では専らYahoo!マップを用いているために気づくのが遅れた。航空映像モードでは何処よりも高い解像度で閲覧できるからだ。他方、里道の表示はやや甘く結構頻繁に通行されている里道が掲載されていなかったりする。

初回調査から一週間後、再び萩原方面へ仕事で行く便があった。アジトを早めに出て定例業務を済ませた後で再び下の道から跨道橋へ向かう里道を探そうと思った。

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市道迫田長谷線の起点である。この物件に取り組み始めたため同じ場所から既に数回写真を撮ることとなった。


市道の総括記事は作成した。しかし個人的関わりがそれほどない道なので、一応全線をトレースしてレポート向けの写真は撮ったものの時系列記事を書くかどうかは…気分次第だろうか。

国土地理院の地図では、南側にある未踏の跨道橋へ至る道の始まる場所は住宅地を離れて最初の右カーブのところを示していた。現地ではまるっきり道らしきものがなくそのまま行き過ぎるしかなかった。明白に人様の田畑へ入っていくような状況だったからだ。
しかしもう一つの道の入口…それは現地へ行く前から殆ど目処がついていた。前回、その入口まで訪れて縄張りがあったために引き返したあの場所だ。

ここである。
水路はコンクリートながら上に架かっているのは如何にも古そうな石橋だ。


再び国土地理院の地図に戻ると、跨道橋へ至る里道は市道萩原団地2号線の右分岐を過ぎて最初に出会う左側への道を指示していた。もうゼッタイにこの道以外にないという程の確信度だ。

前回、先への進攻を躊躇させたのがこのトラロープだった。
元から通路として存在していたので江頭川への転落防止柵もここだけは空けられている。


さて、どうするか?

いや、どうするかもこうするかもないよ。当然、行きますわな。ロープを跨いで。殆ど間違いなくあの跨道橋へ向かう里道の確信があるし、そのために定例業務を早めに切り上げてここまで自転車を乗り付けた訳だし…

探索には長丁場が予想されるので自転車を施錠した。長時間離れるときにはお約束なのだが…
ここで思わぬハプニング。
自転車のキーが破れた(涙)


サドルカバーも破れているが、それは元々だ。こないだの史上最悪の転落事故で破れてそのまんまである。
自転車の鍵はキーを差して回してソケットを外し、スポークを通して再びソケットを押し込むタイプである。最初に外そうとしてキーを差したとき、鈍い音を立ててプラスチック部分が割れて外れてしまった。
刺さった金属製のキー部分だけでも回すことはできたが、油ぎれしているせいかそもそもキーの抜き差しが以前から硬かった。施錠した後になって解錠できなくなったらパンク以上に悲惨だ。自転車を押し歩きすることさえ出来なくなってしまう。

何か先行き不安を増長させる出来事だったが、結局施錠せずに自転車から離れた。サドルカバーが破れた錆びサビな自転車だから、誰も乗り逃げしようなんて気も起こさないだろう…

ロープを跨いで入って来ている。一応、周囲を見回して誰か近くに居ないか確認した。
目撃者を作りたくないもののもし近くにどなたか居たなら、むしろ入って良い道かどうか尋ねようと思っていた。


石橋を渡って真っ直ぐ山の中へ道が伸びていることは市道からも分かっていた。
倒木があって思ったよりも荒れている。道は左右へ分かれているようでさっそく迷うこととなった。


更なる不安が押し寄せることになる。それは上の写真を撮ろうとカメラを構えたときから分かっていた。
竹藪の奥に何やら廃屋のようなものが見える。左側には警告を想起させる赤い何かが埋もれていた。


左側に見える赤い何かに接近すると…
立入禁止。


柵のある方は結構整った感じの小道だった。その行く手を塞ぐ形で錆びた鉄枠が置かれ、赤地に白の立入禁止が書かれた布が掛けられていた。見るからに古そうだが、文字は充分に読み取れる。

何がゲッソリさせられると言って踏査中に出会うこの種の標示板ほど困るものはない。日本語の分かる常識人なら「ここから先へ進んではいけない」意味だと理解する。しかし何故いけないのかこの漢字4文字の熟語だけでは推測しようがない。
この先が私有地でこの道自体も私道なら、進攻は非常識である。外国なら柵の内側へ入った途端ピストルで射殺されても文句は言えない状況だ。他方、里道なら通行権がありこんな障壁如きで引き返させられる謂われはない。自己責任は必須条件としても勝手に通って一向に構わない。

判断に迷った。この柵だけならそう悩むことはなかった。侵入阻止の本気度はまったく低く、すぐ横の大木との隙間をすり抜けて進めたからだ。他方、竹藪の先に廃屋が見えていただけに強引な行動は取れなかった。里道ではなくあの民家に向かう私道かも知れない。

竹藪をかき分けるように一軒家の方をズーム撮影した。
外観は家のような成りをしているが建築ブロックの壁のみで窓はない。家ではなく個人所有の倉庫だろうか。


国土地理院の地図コピーは手にしていなかったが、石橋を渡った先の大体のルートは頭に入れていた。橋を渡ってかなり南の方へ移動しつつ斜面を登る筈なので、跨道橋へ向かう道はどう考えてもあの立入禁止柵の先である。しかしその道が通ってはいけないルートだとすると…

思えば石橋を渡った先で右側にも道があるようだった。
地図の示唆とは異なりこっち側が里道なのかも知れない。この程度の地図との相違は一応はあり得る。


直感的にはとてもそうには思えない。大体、跨道橋に向かうのだからすぐ登り坂が始まらなければならないのだ。この方向だと沢地をたどるだけだ。そして昔の道はそういう造られ方にはなっていない。

藪から出る形になりすぐに視界が開けた。
とても道があるとは思えないほど深い草に覆われている。


ヘビの尻尾でも踏み付けそうな気がしてあまり気乗りしなかったが、先にあるものだけでも確認しようと思った。何やらコンクリートの壁のようなものが見えていたからだ。

平坦な草むらをどん詰まりまで進んだところに建築ブロックの壁があった。
離れたところから眺めると何かの道が通っているように思われたのである。


その正体は…ただの溝だった。
上が道路部分となるとき土が崩れないようにコンクリート擁壁を拵えたらしい。


コンクリートの溝から上が長い斜面になっていて、すぐその先を山口宇部道路が通っていた。
ここからでも道路部分が見えた。


どうやら元から道でも何でもなかった。草むらは完全にフラットだったしブロック塀があることから昔は家とか小屋があったのだろう。ほぼ間違いなく私有地だしこういう場所をウロウロすることの方がずっと危険だ。

再び最初の分岐点へ戻ってきた。
一番、ちゃんとした道らしいのは立入禁止の柵がある場所だ。しかしそのすぐ横にも道らしきものが確認できる。


もう9割方あの柵がある先が地図にある里道という確信があった。予想通りの勾配をもって斜面を登っているし柵の向こうもそれほど荒れることのない道の成りを示していた。多分、私有地に向かう私道ではなく単に通れないから立入禁止と書いた柵を置いているに過ぎないのだろう。
それでも竹藪に包まれたあの建物にたまさか住民があって「お前は立入禁止という文字が読めないのか?」と冷笑されつつ誰何される状況が嫌で、仕方なくこの柵を避ける左側のルートを選んだ。

柵のすぐ下にある平場。割と幅は広いがこちらも平坦で斜面を登っていく様子はみられない。
足元もくるぶしまで埋まるほどの草だ。


この先を辿ってみて明らかに道ではないことが判明したなら、最後の手段としてあの柵の向こう側への進攻を考えることにした。

最初に建築ブロックを見たあの場所よりも更に早く答が出た。
通路のように見えるこの部分はまったく丘を登ることなくそのまま竹藪に阻まれる形で終わっていた。


引き返すのも面倒くさい…と言うか足首まで草に埋まる中を何度も往来したくなかった。まだ明らかに道ではないことが分かっていても足元が見える斜面の方が安全だ。
いっちょ、やるか…
お約束の藪漕ぎである。山にはすべて所有者があるので最近は道でない場所を彷徨うことは殆どなくなった。
今や目的地へ到達する道がどうしても分からないときに援用する本当に最後の手段だ。


藪とは言っても竹藪である。草地よりはるかにタチが良い。枯れた笹を踏み付けて足を滑らせること、突き出た枯れ竹株を踏み付けないこと位気を付ければ藪漕ぎのうちにも入らない。
行き止まりになった場所からすれば、柵の反対側にある道は右側になる。そこで行き止まりの平場から直角に右へ進行方向を振り、斜面を強引に登り始めた。

竹が疎らになってきた頃に柵の反対側と思われる里道の途中に出て来た。


無事、里道に復帰する。実質的に立入禁止柵をバイパスしただけだから、知っていながら進攻する分だけ悪質と言われるかも知れない。依然としてこの道が個人の畑地や倉庫で行き止まりとなっている私道という不安は払拭しきれたわけではない。

そして再び不安を沸き起こさせるものが前方に見えてきた。
またしても民家のような建屋が…


それは最初に竹藪の正面へ見えたあれとは別の建屋だった。
いくら何でも農機具庫か何かだろう。
まさか人とか…誰も住んでいないよね?
幸い倉庫らしき建物で行き止まりというのではなく、右への分岐路があった。しかし建物から誰かが出て来そうな気がして足早に通り過ぎた。

(「山口宇部道路・未知の跨道橋【6】」へ続く)
出典および編集追記:

1.「FBページ|2015/9/15」の読者コメント参照。(要ログイン)

2. 主な事業所が保有しているゼンリン©の地図が同等以上の表示を提供している。

3. ただし地図で与えられるのはその場所に道がある(あるいは歴史的にみて存在した)という情報のみである。どのような表示がされていようが私道か里道かなどの情報は与えない。したがって地図に表示されているからという理由だけで誰でも通って良い道という判断には全然ならない。

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