常盤通りの自転車通行について

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記事作成日:2017/3/9
ここでは、国道190号の常盤通りに関する自転車通行の問題について現状分析し、一つの改良案を提示している。自転車通行以外も含めた現況については現在の常盤通りを参照されたい。
《 問題点 》
常盤通りは自動車専用道ではなく、自転車の通行は何ら問題ない公道である。しかし現状を踏まえて何処を走るのが適正なのかという問いに対する回答は決して自明ではない。市内外を含めて他の多くの公道と同様の曖昧な規定により運用されている。

下準備として、自転車の通行に関する一般的ルールを確認しておく。
【 一般的原則 】
一般論として自転車は車道を走るべき乗り物として規定されている。歩道内を乗って通行するのは原則的には道路交通法違反なのだが、昭和期以降多くの道路が四輪の通行を元に設計された背景があること、歩行者の安全な通行が再検討され歩道整備が進んだこと、自転車の航行速度が車より歩行者に近いことからいくつかの例外規定を設けて歩道通行が容認されてきた。これによって自転車と四輪との交錯を減少させることができたものの、自転車交通を歩道へ誘導する(追いやる)ことで歩行者の安全を脅かすなどの新たな問題が起きてきた。

そこである程度の幅をもつ歩行者通行空間を再整備し、自転車の通行を法的にも認めた仕様の歩道(いわゆる自歩道)が出現した。これが現在もっとも多い運用方法で、幅の広い歩道があればそこを通る自転車乗りが一般的となった。他方、元からの車道通行の原則は温存されており、自歩道があろうが(別途標識などで通行場所が指示されていない限り)車道を通行して構わない。

以上の前提を踏まえた上で常盤通りの現状を観察し、自転車が何処を通行するのが妥当かを検証する。
【 車道を通る場合 】
常盤通りの車道では、一番外側にあたる第一通行帯はバス・タクシーの専用レーン(ただし午前7時〜午後5時)となっている。自転車で通行するならこの専用レーンの左端に沿って走行するのが妥当なところだろう。[1]
ところが専用レーンのすぐ外側は側道と仕切る植樹帯で路側がまったくない。幅員も充分ではなく、自転車で走るのはかなり危険である。


実際の事例としては、スポーツタイプの自転車のようにヘルメットを装着し原付並みの速度で走る場合が見られる。もちろん法規上何ら問題ない自転車の航行方法であるが、一般的な自転車に対しては常盤通りの車道走行はとても推奨される状況ではない。こんな往来の多いレーンを自転車でノロノロと走るのは、同様に路側へ寄って走る二輪の邪魔になるし危険だからである。四輪のドライバーからすれば、充分に幅の広い歩道があるのに何故車道を走る必要があるのかといった非難も予想される。極端な話、前面のカゴに買い物を積んだママチャリがここをノロノロ走っていてパトカーが通り掛かれば、恐らく(やんわりと歩道へ戻るように)指導を受けるだろう。単純に危険なだけでこの場所を選択して通行する意義が感じられないからである。
【 側道を通る場合 】
では、植樹帯の内側にある側道内はどうだろうか。ここは縦列に駐車している車があっても最低一車線分の幅が空いている。歩行者は当然のように歩道を歩き、側道へ出てくるのは常盤通りを横断するときと側道へ駐車した車の出し入れ位のものである。それ故に歩行者との交錯は少なく自転車で車道の左端を走るよりはずっと安全に思える。


しかし実際にはここを走る自転車も殆どない。理由は目的とする沿線の店舗から離れていること、歩道まで戻ろうにも縦列駐車している車があって困難なこと、停まっている車の運転席ドアが突然開いて危険だからである。駐車目的で出入りする一般車は結構あるし、客の溜まり場を予測して側道を移動するタクシーも多い。特に後ろから車が来たとき自転車だと避けられる場所がない。通行については禁止も推奨もされていない。
逆走は車種に限らず禁止されている
【 歩道を通る場合 】
現状、常盤通りでは9割以上の自転車が歩道を通行している。歩道は相応な幅があるため、歩行者と入り交じる往来方法でも通常の人出状態なら緩速走行で事足りるからである。自転車で用を足す目的地が常盤通りの沿線にある店舗というのも理由にあるだろう。

常盤通りの歩道は幅が5m以上あり、自転車も通行可能な自歩道とみなされている。[2]すべての自歩道には歩行者と自転車が混在して往来する問題があるが、常盤通りの歩道に関しては往来の障害となる設置物があまりにも多いという固有の危険性が存在する。


この詳細については以下の派生記事を参照。
派生記事: 常盤通りの歩道|問題点
歩道は元々歩行者向けの通行空間なため、完全に歩行者寄りな設計となっている。中央に外灯や植樹がなされ、ベンチなども設置されている。これらは歩道を歩く分にあまり障害にはならないが、自転車のように歩行者よりは速く移動する乗り物にとっては危険な障害物である。また歩道内を通行することで、ランダムに往来する歩行者との交錯の危険がある。特に高齢者との接触は重大事故につながる。

以上の問題は、自転車が歩行者に対し充分に配慮して速度を落とせば足りる問題ではある。しかしバス停付近や主要なデパートの出入口付近では買い物客が多く、歩行者との動線の交錯が必然的に増える。自転車がこの自歩道を通行するのは、車が車道を走ることや歩行者が歩道を歩くことに比べて同程度の安全性が確保されていない。歩道の設計や各種構造物の配置により歩行者と共に往来上の危険に晒されている。特に自転車の場合、徒歩よりは速度が出ているだけに危険が大きい。
出典および編集追記:

1. 実のところ公安が専用レーンを第一通行帯と意思決定していることを前提に、自転車は当該通行帯の中であれば何処を走っても(中央だろうが右寄りであろうが)違反ではない。ただし左端へ寄るなどの指導は当然受けるであろう。
専用レーンを走るバス等があっても自転車は優先通行帯から出る必要はない。逆に後続車両がこの自転車を追い越す場合は第二通行帯へ車線変更する義務がある。このように法律での規定と実際の運用には極めて大きな乖離がみられる。

2. ただし沿線には自転車通行可を示す標識類は出ていない。自歩道の目安とされる幅2.0mよりも明白に広いことで自歩道であろうと追認されているに過ぎない。
標識が出ているかも知れない…詳細に調べておらず調査を要する
《 改善案 》
現状では自転車の側が充分に徐行し、歩行者最優先を心がければ済む問題ではある。いくら自転車通行可になっていようが自歩道は自転車が歩行者を危険に晒す程度に高速走行して良い空間ではない。高速航行するなら常盤通り以外も含めて車道を通行すべきである。しかし現状は自歩道を通る以外ない状況でありながらあまりにも航行速度が低下するようなら自転車の効用に反する。四輪には車道、歩行者には歩道という通行空間がありながら自転車が安全に通れる場所がないのが常盤通りの現状である。
【 自転車通行帯の必要性と仕様について 】
自転車の通行を誘導する通行帯の設置を提案する。自転車という乗り物が一定の市民権を得て自転車専用レーンや通行帯を整備する自治体が増えている中、宇部市の顔たる常盤通りにも対処が必要と考える。これは自転車で往来する市民と歩行者の安全性を高めるのみならず、市の観光資源である市街部の彫刻をレンタサイクル等で観て回る来訪者の増加も想定している。

通行帯は自転車の往来場所をそこのみに限定する厳密なものではなく、現状の自歩道内で歩行者と自転車が交錯する頻度を下げるのが目的である。バス停で乗り降りする歩行者と自転車の交錯は避けられないし、自転車も通行帯を外れて目的地の店舗へ向かう流れもあるため完全な分離は不可能である。

したがって従来通り自転車の自歩道内通行も認める。ただしこの通行帯が設置された後は、自歩道の通行ルールは歩行者最優先が現在以上に厳格化されて良い。歩道を歩く買い物客の間を高速ですり抜けるような運転は明確に禁止される。代わりに歩行者側も自転車通行帯へ荷物を置かない、通行帯内で立ち話しないなどの基本ルールが必要である。

仕様としては先行施工されている市道神原町草江線自転車レーンが参考になるが、同一のものは適用できない。幅の広い常盤通りの自歩道は上下線が一つの往来空間と認識されており、自転車の通行者にとって常盤通りの右側・左側という意識はない。したがって通行帯は双方向からの往来を認める仕様でなければ利便性は下がる。幅の広い自転車通行帯を造り中央に破線を引いて上下線を明確にした対面交通の車道のミニ版仕様が一つの方法となる。この仕様であれば前方に自分よりも緩速走行している自転車があった場合の安全な追い抜きも可能となる。

自歩道と通行帯の区分としては、単純に白線を引くだけでは自転車の往来を通行帯へ誘導できない。市道北琴芝鍋倉町線の自歩道がその例で、白線が引かれ自転車のアイコンと文字がペイントされているものの殆ど守られていない。


この原因はペイントされている場所を離れると白線があるだけなので、どちら側が自転車通行を促されている部分かすぐには分からない点にある。市道神原町草江線で試験施工されたように通行帯全体をペイントし、進行方向も明示した方が良い。
ただしこの市道に関しては自歩道はそのままにして車道の路側に自転車通行帯を設置した方が良い
【 側道を改造する場合 】
側道は現状無料で利用できる四輪の専用駐車スペースとなっている現状があり、改良の余地がある。この問題については以下の派生記事を参照。
派生記事: 常盤通りの側道|問題点
側道単独もしくは車道を含めた道路再整備を行う余地があるならば、この段階で側道の歩道寄りに自転車通行帯を造ることを提案する。この場合、側道は歩道より低いので、店舗乗り付けなどで歩道との往来を容易にするために段差をなくす処理が要る。


【 歩道を改造する案 】
歩道の側道寄り部分を自転車通行帯に充てることを提案する。ただしこの部分には地下埋設された機器や彫刻、花壇ポットなどが置かれているのでそれらを揃えた上で内側に設置する。

歩道の中央に設置されている外灯は常盤通りのシンボルであり、夜間に歩道を均等に照らす必要があるため現況で良いが、中央部分の植樹は移設する。中央寄りに設置されている彫刻なども同様に歩道の端へ寄せる。ベンチは老朽化していて更新が必要ならば、現在のような洒落ているけれども場所をとる半月状のものではなく通常の直線形に変更し花壇ポットと同じ側に据え直す。

歩道へ自転車通行帯を設置すると歩行者の往来幅が若干狭くなる。更に歩道は滑り止め加工がされている素焼きのタイルであるため、直接ペイントするとスリップしやすくなる上に外観も台無しになる。既存のタイルにペイントするのではなく、レーンを設置する部分はタイルを外して別の素材を用いた方が良い。いずれにせよ通行帯を設置すると歩行者向けの通行空間を削ることになるので、根本策としては前述の側道を利用する案の方が良い。

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