常盤通りの側道

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記事作成日:2017/8/18
ここでは、常盤通りの上下線において、車道と歩道の間に存在する通路部分を側道と仮称して記述している。なお、側道とは本記事作成上の呼び方であり、公式な呼称は別途確認を要する。
《 概要 》
側道は幅約5mの舗装された通路で、常盤通りの松山町一丁目バス停の先から新川橋の手前までの上下線に造られている。側道は車両が通行する道路部分とは植樹帯(以下、本記事での植樹帯とはこの部分を指しての呼称とする)で分離されている。
写真は市役所交差点手前にみられる側道の例。


側道は車2台が横並びする以上の幅が設けられているため、歩道側を縦列駐車可能なスペース、植樹帯側を入退出の際に移動する通路のように使われている。
この駐車スペースは交差点の前後の他に、出入りを要する事業所や駐車場の前では空けられている。


側道は基本的に全区間駐車禁止で、午前11時〜24時の時間帯に限って指定したスペースのみ駐車可という例外規定の形をとっている。
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したがって正規の枠がペイントされていない場所はもちろん枠からはみ出ていたり枠内に収まっていても時間外に停めれば駐車違反となる。午前8時出勤だからと言って早く来て退勤時まで駐車するといった利用法は当然できない。

それでもこのエリアの駐車は無料でチケットの発券やゲート入出庫の手間が要らないので、市民にとって利便性の高い駐車スペースとなっている。利用方法についても特に制限はなく、駐車した場所から離れた店舗に行くことは可能だし、極端な話友達と別々に訪れて車を停め、1台車で乗り合わせて別の場所へ行くことも可能である。利用時間も駐車可能な時間枠内であれば制限はない。
このため平日の昼間は車がびっしり縦列に並び、空いていることが滅多にない。モータリゼーション隆盛期以降慢性的な駐車場不足に悩まされてきた宇部市街部では重宝されている半面、別の問題も起こしている(後述する)。

駐車可能スペースは側道の市役所前交差点までの区間に設置されている。ただし市役所の前は特に利便性が高く庁舎まで歩く距離が短いため、歩行困難な来庁者など特定の車両に限定して駐車を認めている。


その他の区画も特にタクシーの待機用に限定しているスペースもある。

夜の24時まで駐車可能であるものの、実際には午後4時を過ぎるあたりから冒頭の写真のように空きが目立ってくる。これは常盤通りから近い場所で午後5時以降夜遅くまで営業する店舗が少ないことによる。夕刻時から利用するドライバーもある筈だが、実際に訪れてみなければ空きがあるか分からないこと、側道への駐車退出が面倒なこと、デパート等では独自に無料駐車場を持っていることも理由と思われる。
【 側道の交通規則 】
側道は駐車に関して以外は通常の車両走行部分(追い越し車線・走行車線・バス専用帯)と同じ適用を受ける。側道内は一方通行でUターンは禁止されている。これは側道内でも側道と本線の相互でも同様である。
側道もそれぞれの交差点に出会うたびに本線と同じ信号ルールに従う必要がある。したがって側道よりやや離れた本線の信号機を見なければならない。駐車スペースへの入退出を行わず側道部分を通行し続けることに明確な禁止規定は掲げられていないが、交差点を直進するたびに本線から左折してくる車両と交錯する恐れがあり、タクシー以外の一般車両ではあまり見受けられない。
【 駐車目的以外の利用 】
側道の通行は四輪に限定されているわけではなく、歩行者や自転車が通行するのを禁止する規定はない。しかし歩行者は安全な歩道があるのでわざわざ側道を通行する理由がなく、精々駐車した人の往来程度である。自転車も歩行者の多い歩道よりは安全なように思えて、車の出入りが多い上に停まっている車のドアが急に開くリスクもあるため殆ど通行されない。

宇部祭り・新川祭りの際には歩道に出店が並んで混雑するため、人混みを避けて側道を歩く人も多い。
《 成り立ち 》
常盤通りの側道がいつ現在のような利用形態になったのかは調査を要する項目であるが、この部分自体は50m道路を造った当初から存在していた。[a1]50m道路の建設はフェニックス道路と呼ばれていた現在の松山通りよりも後である。[a2]

松山通りとは異なる側道という構造を取り入れた理由はまだ調べられていないが、早い時期に通りの両側へ来客が多い店舗が軒を連ねていたため、通りを走る車両と緩速走行する車および歩行者を分離するための構造ではないかと考えられている。同種の構造をもつ道路が全国に数ヶ所散見されるため、常盤通りの側道もそれらを参考に造った可能性もある。

新川橋に向かう側の側道は同種の駐車スペースとして利用されておらず通路部分のみが遺っている。
Uターン禁止の標識とロードペイントは、同じ側道内の逆走と国道へ出る形のUターンの両方が認められないことを意味する。
このロードペイントは本線にUターン禁止設定したとき併せて施工したものと思われる


この区間はひび割れたコンクリート舗装がそのままになっており、戦後に50m道路を施工した当時のままである。市役所前の側道もコンクリート舗装であるが、この区間ほどの傷みはみられない。一般向け駐車スペースが用意されている場所はすべてオーバーレイかコンクリート舗装を撤去後に打ち換え舗装されている。

側道の歩道側に区画ラインを引いて駐車スペースとして使い始めた時期も調査を要する。市街部に駐車場が乏しいことは昭和後期からの宇部市民の共通認識であり、その時までに改変されたようである。県道(主要地方道)宇部港線市道参宮通り線の道路敷の両側に駐車区画が割り振られたのは平成期に入ってからである。
出典および編集追記:

a1.「宇部ふるさと歴史散歩」p.103 掲載のモノクロ写真では路上を車と歩行者が往来しているものの植樹帯で分離された側道部分が既に見てとれる。ただしいつ頃撮影されたものかは不明。

a2.「宇部東部(M114)1947/3/12(昭和22年)米軍撮影の航空映像」では国道190号相当部分について松山通りと芝中通りは既に現在の形が出来ているものの新川橋までの道路がまだ不明瞭となっている。
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《 問題点 》
側道の駐車スペースはトータルで普通車60台超収容可能な広さがあり、常盤通りに面した店舗などを車で訪れるには利便性が高い。しかしその利点に反して、側道の存在自体が以下のような問題点をはらんでいる。
(1) 事実上、早い者勝ちで利用できる無料駐車場となっている。
(2) 車が縦列で駐車することで入退出の専用通路としてしか使えない。
(3) 側道へ入ってくる車と常盤通りを横断する歩行者や自転車との誤認による交錯事故が起こる。
(4) 側道に駐車した車列が歩道周辺部の視認性を妨げている。
(5) 常盤通りの沿線事業者に災害が発生したとき側道の駐車車両により緊急車両が接近する障害となる。
以下、項目毎に検証する。
【 無料駐車スペース化している問題 】
側道の駐車可能スペースの使用制限は、時間帯のみである。前述のように用途を制限されず半日以上車を停め置ける点では市役所のゲート制ではない庁舎前などの駐車スペースよりも利便性は高い。[b1]事実上数少ない先着順の無料駐車場として使われていて、利用可能時間前から枠内へ停めて乗車したまま待機する例もあるかも知れない。車社会に移行してすぐ駐車場に困窮することとなった宇部市街部の問題の緩和策になっているとは言え、本来は通行空間であるべき道路を公的無料駐車スペースとして提供するのは妥当だろうかという疑問がある。

他方、側道の駐車帯は元々駐車場が少ない市街部において次善的な解決策を提供しているという考え方もある。
【 横断者との交錯 】
車と歩行者の接触はしばしば車同士の事故よりも重大になり得る。この交錯は歩行者が常盤通りを横断しようとするとき、同じ信号を見て左折する車との間でもっとも起きやすい。
左折車による接触や巻き込みは一般の交差点でも起きやすいところに加えて、常盤通りは側道がある故に車が左折のウインカーを出していても歩行者には左折して本線に出るのか側道に入るのか分かりづらい。

同種の場所は常盤通りを横断可能なすべての交差点で起こり得る。
写真は市役所前交差点。


歩行者および自転車が常盤通りを横断しようとするとき、信号が青になると同時に進行する。このとき同じ方向に進んで左折する車がウインカーを上げていても本線に出るのか側道に入るのか分からない。横断者が車の進行をピンク色のように考えていたところ、赤線のように側道へ入って来ることで接触事故が起きる。


実際は左折車が相応に注意しているものだが、やや離れた場所から自転車が走ってきて横断しようと突っ込んできたとき、本線の手前まで出て待とうとする矢先に側道へ入ってきた車に接触し得る。上の写真のように、横断歩道のゼブラは側道部分にまで引かれている。
したがってこの部分は歩行者が絶対優先であり、もし車で接触し怪我を負わせた場合の責任は非常に重くなる。他方、自転車で横断歩道を横切る場合は(自転車は軽車両であり歩行者よりもむしろ一般車両としての注意義務が問われるため)横断時に左折車両と交錯しても歩行者ほどには保護されないと考えるべきである。

この交錯を回避するために、常盤通りを横断する歩行者や自転車ではしばしば歩道の縁ではなく側道部分を先に渡っておいて本線に付随する植樹帯の横で待つ姿がみられる。厳密に言えば横断者の信号無視になるのだが、安全上の自衛手段として日常的に観察される。

側道を縦列駐車スペースに使えば、入庫する車と退出する車の経路が必要になるため普通車2台分の幅がありながら[b2]他の用途には何も使えない。
側道は駐車車両の他にタクシーの往来が結構多い。車に戻るとき縦列駐車の隙間から運転席側に出なければならないのだが、車の影から出てくる歩行者は非常に見づらく側道を通過する車にとって危険である。駐車後に運転席から降りるときも同様の危険がある。
【 非常時のセキュリティ上の問題 】
側道に常時車が停まっていることに起因する弊害もある。平日の昼間みっちり縦列駐車されていれば、歩道に面した事業所で火災など非常事態が起こったとき緊急車両の接近の障害となる。


店舗から来訪者が避難する事態が起きたとき建物の玄関から正面が車列で塞がれていれば、迅速な避難の妨げになる。また、側道と車道の間が植樹帯で仕切られているために、細長い側道の両端以外からの出入りが出来ず緊急時の移動経路確保の上で問題になる。
出典および編集追記:

b1. 市役所の駐車場では監視員によるチェックが随時行われていて半日程度駐車しているとフロントガラスに車を移動するよう求める告知がなされる。一般には駐車することを目的に造られた設備でない限り、たとえ駐車禁止が明示されない道路外のスペースであっても同一箇所に12時間以上、夜間では8時間以上駐車する行為は車両の保管場所法違反となる。

b2. 初期には側道部分がもう少し広く歩道が狭かったかも知れない。縦列ではなく斜め駐車していたような記憶があるが、他の場所との勘違いの可能性もある。
《 提案 》
情報以下の記述には個人的見解が含まれます。

常盤通りの全体幅員とされる50mは有効活用されるべきリソースである。車道部から分離する植樹帯部分と側道を一旦撤去し、この空間を別の用途に再構成することを提案する。その場合、可能な限り多くの人々のメリットとなり、かつ従来よりも安全な通行空間を保証する改良であることが求められる。

本線と側道を仕切る植樹帯を撤去すると、常盤通りの緑は歩道に植えられたプラタナスのみになってしまう。そこで上下線にあるこの植樹帯を統合し、松山通りにみられるようなフェニックスの中央分離帯を構成することを提案している。本件については側道の再構成からは外れるので以下の派生記事に記述している。
派生記事: 常盤通りの問題点と改良案|車道部の改良案
現在ある本線の上下線3車線を変えないとするならば、側道相当部分の幅が利用可能となる。この一部に自転車通行帯を設置する案を提案する。これについては自転車通行の以下の記事を参照。
派生記事: 常盤通りの自転車通行について|改善案
この改変を行ったとしてもなお側道から自転車通行帯を差し引いた幅員分が余る。上記のような理由により自転車通行帯の設置は強く求められるものだが、残りの部分をどのように活用するかは市民ワークショップなどで意見を求めるのが望ましい。例えばコミュニティースペースへの転用は一つの案となり得るが、そう頻繁に利用されるあてがない用途に常盤通りの幅員を充てるのは勿体ない。せっかく造っても利用実態が低ければ、結局は市民の要望に沿って従来のような駐車スペースに転用されるだろう。

上記の問題点を解消した上で、むしろ積極的に駐車スペースとして再整備する方法もある。ただし植樹帯を取り除いても細長い領域なので結局は既存の駐車スペースとあまり変わらないものになるだろう。市街部周辺の駐車料金水準を勘案した上で有償化すれば市街整備への財源に充当できるが、同様の取り組みは県道宇部港線で当初コインパーキングだったものの後年廃止されていることから、初期費用が嵩む割に利用者が見込めない事態があり得る。

完全な駐車スペースにするのではなく、沿線の店舗や事業所へ出入りする車両向けの緩速走行通路にする方法もある。常盤通りからの出入りが困難であることを見越して多くの店舗やデパートが別の道路に接した駐車場を持っているが、宇部郵便局や井筒屋など利用者だけでなく商品の搬入路としても常盤通りに面した出入口をもつ事業所も多い。これらの変更は側道のみならず歩道へも波及する可能性があり、再構成案は側道と植樹帯の再利用のみならず常盤通り全体として考える必要がある。
【 提案の問題点 】
この提案には対処が必要な以下の問題を含んでいる。
(1) 側道の植樹帯に設置された照明器具や標識を再設置する場所の問題。
(2) 側道に停められなくなった車の駐車スペースの別途確保。
(3) 側道に面した事業所への出入りの安全確保。
側道の植樹帯を撤去すると、車道部と一続きになる。現状では常盤町一丁目バス停付近が類似する構造となっている。車道からのアクセスが容易になる半面、この位置にある照明灯や案内板を移設する必要が生じる。一連の設置物は、中央分離帯を設置する車道改良案を実行するならそこへ移設可能である。この改良を行わず植樹帯のみを撤去するとなると、標識群だけ取り残すか歩道寄りへ移設することになるが、そのいずれも困難である。
標識の設置された部分だけ植樹帯を島状に取り残す場合は、車道からの衝突対策を講じなければならない。歩道側に支柱を移設するとこの問題は解決するが、中央分離帯を欠くなら車道から視認できるように大変に長いL型のオーバーハングやゲート式の標識に変更しなければならず、コスト面と標識自体の強度面で現実的ではない。

側道の出入口が交差点に面した場所に限られるのは往来の不便があるが、植樹帯を除去すると車道とは任意の場所で出入り可能になる。これは車道から退出する場合はまだしも、車道へ進出するとき本線を走る車にとって脅威になるかも知れない。

側道の駐車スペースが現況でどのような利用のされ方をしているか分からない。散発的に訪れる来客が不定期に停めてさほど長時間に至らず退出するなら、代替の駐車場を別途確保しなくても支障はない。元々早い者勝ちで利用している駐車スペースなら、多くの来訪者は当てにしておらず別の駐車場所を頭に入れているものである。

側道がなくなることで、沿線の事業所の駐車場へ出入りする車は常盤通りから直接往来することになる。この際に転用された側道(コミュニティースペースであれ自転車専用通路であれ)と歩道の双方を横切る必要があり、側道というワンクッションがなくなることで出入りが困難になることも予想される。

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