常盤通りの歩道

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記事作成日:2017/8/17
ここでは、国道190号の常盤通りの歩道についてまとめて記述している。常盤通りの全体像については現在の常盤通りを参照されたい。
《 概要 》
常盤通りの歩道は幅が約5mで、隣接する側道とほぼ同じ幅である。
写真は宇部郵便局付近の歩道。


現在ある常盤通りは戦後の復興事業として新たな道造りが行われた当時のもので、歩道も既に備わっていた。民地側との官民境界は新旧交えた建物と共に直線上であり、セットバックされた形跡は恐らくない。ただし側道を狭めて歩道を拡げるなどの変形はされているかも知れない。

現在の歩道の素焼きタイルは平成初期の更新である。最初期の歩道はどのような仕様だったのか写真に乏しく状況はよく分からない。早くから店舗が軒を連ねていて泥のついた靴で出入りすると困るので、当初からコンクリート板が敷き詰められていたと思われる。コンクリート板は現在あるのと同じサイズで、艶消し加工などを行っていない正方形の板だった。街路樹が近くにある場所などでは板が持ち上がっていたり、間から草が生えていることもあった。当時のコンクリート板が残っている場所は一つも知られていない。歩道に関して言えば、整備された初期のものが残っているのはプラタナスくらいのものと思われる。

現状の幅の広さから、歩道は自転車の通行も暗黙的に認められている。ほぼ中央に視覚障害者向けの点字ブロックが設置されている。側道に近い側は既存のプラタナスをはじめ灌木による花壇、フラワーポット、ベンチなどが据えられている。

歩道の一部は、通常のものから学童の描いた絵をモチーフにしたものに取り替えられている。


常盤通りの歩道全体で約100枚が埋め込まれており、あおぞら美術館と称されている。国道190号を維持管理する国土交通省の宇部国道維持出張所とのタイアップにより実現されており、平成19年10月からは恩田小学校6年生の学童の作品が展示されている。

常盤通りの電線はすべて地中化され電柱や電線は存在しない。関連する計装版も歩道の端に設置されている。


歩道に設置されている外灯は夕刻時以降に自動点灯する。外灯の支柱にはフラグを取り付けるための枝が設けられており、イベント開催時に利用される。


フラグは上記のようなまちなかアートフェスタの他、ビエンナーレの告知や常盤池の世界灌漑施設遺産指定を祝すときなどに設置されている。また、2015年からは街角を楽しく歩く工夫として、郷土の題材を盛り込んだ一言やちょっと笑える小ネタを一般公募し、選定されたものをフラグに印刷して掲示するといったイベントも行われている。

歩道に隣接して車の出入りする取り付けがあり、そこでは側道側に切り下げ施工がされている。
写真はえびす街入口の状況。


この他に事業所の駐車場や店舗の商品搬入口で同様の構造となっている。車が乗り入れるためこの部分の歩道は車道仕様となっている。乗り入れ通路両側に車止めが設置されているのは、無用に歩道へ乗り入れ駐車するのを防ぐと共に、耐荷重性が歩道仕様の区間へ車が入り込まない役目も果たしている。他方、この車止めが災いして歩道を往来する通行者や自転車に接触の危険をもたらしている。(後述する)
《 問題点 》
常盤通りの歩道は幅が相応に広いため、自転車も通行可能な自歩道という扱いを受けている。自歩道には歩行者と自転車が混在して往来する問題があるが、常盤通りの歩道に関しては固有の危険性も存在する。
【 安全上の問題 】
幅の広い歩道設計に任せて雑然と多くのものが配置されている。歩道の中央寄りに場所を取る不定形のベンチを配置するのは歩行者自転車共にぶつかって怪我をする元である。
現にこのとき車椅子で通行している方が歩道上のベンチを回避する状況になっていた


前述の理由により自転車は歩道を通らざるを得ないため、これらの設置物や歩行者を避けてスラローム走行する事例が非常に多い。特にデパート付近では高齢者の歩行が多いながら縫うように走行する自転車が目立つ。

交差点付近に微細な段差が多い。車道部を横切る歩道の縁には雨水の浸入を防ぐ切り下げ縁石施工があり、高齢者つまづきの要因となる。自転車走行においてはこの縁石を横切る際に衝撃がかかり、往来の快適性を損なうばかりでなくリム打ちに伴うパンクの原因となっている。
写真は市役所前交差点だがこの場所はまだマシな方で明白な段差状態の場所が他にいくつもある


歩道の中央に植えられていた植樹が撤去された後、土砂の充填を行わないまま放置されているため危険な段差が生じている部分もある。
詳細画像はこちら


歩道に面した事業所などへ出入りする搬入車両や一般車両の交錯箇所が多い。しばしば大型車両の後部が歩道部分へはみ出す形で停車し荷物の取り下ろしを行っていて歩道部に死角を作っている。宇部郵便局へ入る一般車両が歩道部を塞ぐ形で駐車場待ちしていることもある。また、歩道部を頻繁に車両が横断するために歩道のインターロッキングが緩んだり割れたりしている場所がある。

車両乗り入れ部の両側には歩道へ車を乗り入れないように車止めが設置されているが、歩行者と自転車共に往来の邪魔になっている。一部は堅い御影石のポストがそのまま使われており、自転車走行中に接触すると大怪我の元となる。


場所によっては柔軟性のあるポストコーンに取り替えられているが、せっかくの素焼きブロックを削孔した上で取り付けてあり、美観を損ねている。
【 景観上の問題 】
彫刻についても上記のベンチ類と同様な設置場所の問題がある他、街の景観との呼応ができているとは言い難い。市民に親しみづらい彫刻、明るい気持ちになれないイメージを与える彫刻が散見される。
写真は個人的な一つの例示であり名指しで特定の彫刻を指摘している意図はない


彫刻は作者による様々な概念を具象化した成果であり、一つの作品であることは認める。しかしながらビエンナーレなど彫刻を常設展示する場所ならともかく、常盤通りは彫刻を愛する人以外の一般市民も往来する空間である。そこへ展示するならば、違和感や不快感をもたれるような表現系であってはならないと考える。
彫刻に関して市民の理解が得られないという愛好家や行政の声があるが、これは彫刻の街を標榜すること自体に問題があるのではなく、設置に関して市民の意向を聞かず行政によるお仕着せであったというやり方が悪さに他ならない。彫刻そのものが宇部市の主要な観光源であることに疑いは無いので、景観との調和に配慮した設置手法が求められる。
【 その他の問題 】
歩道沿いに設置された史跡の説明板が経年変化で文字の読めなくなったものが多数放置されている。

初期に植えられたプラタナス(スズカケノキ)が老木化している。現状は弱った個体から順次処分されているようで、歯抜け状態になっている。これは歩道と車道の位置を決めた直後に植えたものと思われる。同種の植樹は参宮通りや市役所横の市道栄町線にもみられる。一連の樹木は、神原育苗(現在の神原保育園)で育てられたものを順次植え付けたものである。平成6年には「新・日本街路樹百景」に認定されるほど整った街路だったのだが、樹齢が進んだり弱ってきた個体も目立ち、近年の景観は悪化している。[a1]大き過ぎる樹木は景観を阻害するが、真夏の暑い時期は歩行者が横断する際の信号待ちで適切な日陰を与えてくれる効果もある。
出典および編集追記:

a1.「宇部市|緑化事業計画|街路樹の整備
《 改善案 》
以下の変更を行うことを提案する。
(1) 歩道中央部に近い場所へ設置された構造物は側道寄りへ据え直す。
(2) 側道寄りへ自転車通行帯を追加設置する(歩道に設置する場合)
(3) 歩道へ直接植え付けられている形態の植樹について再考する。
(1) は歩道の往来上の安全を確保するためのものである。植え付けられた樹木は別の場所へ移設する。出っ張っているベンチも側道寄りへ移設するが、老朽化していて更新する場合は場所を取らない直線形かそれに準ずる形状のものとする。
歩道中央部に設置された外灯は歩道全体を照らす効果と景観面を考慮してそのままとする。同等の照明効果が得られるなら地下埋設電線の機器が設置されている歩道の端へ移動し歩道上空へ差し掛ける形式に変更する。
店舗の駐車場出入口に沿って設置されている車止めも往来上危険なため基本的には(御影石タイプもポストコーンも同じく)撤去する。自歩道へ車を乗り入れて往来の妨害をしてはならないことは自明であり、やむを得ず車止めを設置する場合は歩行者が当たっても大きくしなる危険性の低いものに変更する。

歩道の側道寄りに自転車通行帯を設置して交通誘導する。この詳細については自転車通行の問題点と改善案のところで述べている。
派生記事: 常盤通りの自転車通行について|改善案
ただし側道寄りは既に花壇ポットや配電盤などが設置されているため一定幅の通行帯を確保すると歩道はその分狭くなる。この変更に支障がある場合は側道部分に確保することになるだろう。

常盤通りに限らず歩道へ直接植え付けるタイプの植樹帯は今後は見直すべき時期に来ているかも知れないと考えている。生育することによって周辺のインターロッキングブロックに不陸を生じさせたり根の部分がアスファルト舗装を持ち上げるなどの問題を起こすこと、低い位置に葉を茂らせる種の樹木は歩道と車道相互の視認性を損なうこと、一度植え付けると後の変更が容易ではないことによる。[b1]地方部の道路であればともかく、常盤通りのように既に周囲がアスファルトとコンクリートで固められ自然の土が殆どない環境にあっては、フラワーポットや吊り下げタイプの花壇のような管理が容易な形態に変更した方が良いかも知れない。
他方、充分に高く伸びたプラタナスは高い位置に葉をつけるため歩道と車道の視認性について問題を起こさないし、真夏の日差しがきつい時期には歩行者に心地よい緑の日陰を提供する。何よりも大きく育ったプラタナスはそれ自体が街路樹としての財産である。

現状では、歩道の端に育っているプラタナスは枯れた個体については順次除去されているようで絶対数は減少に向かっている。


昭和期から街の景観を支えてきた象徴であり完全に喪われるのは心苦しいものがある。消滅する前にときわ公園のようなエリアへ移植する方法もあるが、あまりにも大きく育ち過ぎた現状では非常に困難である。周囲の歩道に不陸を生じさせるなどの不具合が起きていない限りは、安易に除却せず今あるがままで活用すべきである。もっとも街路樹の消滅については、かつて市街部では一般的に見られたヤナギの樹のような例があり、一般市民からすればそれほど郷愁をもって観察されていないかも知れない。

前述のように常盤通りの側道と歩道は車道部の施工に比べて往来に与える影響やコストは相対的に小さい。歩道部のみを先行して改修することは可能であるが、車道に中央分離帯を設置する改修案を前提とするなら、側道と付随する植樹帯を撤去し自転車通行帯などに充てる段階から走行車線のシフト分を見込んで確保しておく必要がある。この場合、施工の優先順位としては側道の植樹帯撤去、中央分離帯設置を伴う車線シフトであり、歩道部はその後からでも施工可能である。
【 その他の提案や意見 】
個人的にはすべてに同調するものではないが、以下のような意見も提示されている。
(1) 雨天時でも濡れずに歩けるよう歩道部に差し掛けを造る。
(2) 横断需要の多い場所に地下道か陸橋を設ける。
歩道の差し掛けとは上部を覆う屋根部分(アーケード)を造るもので、既設のものとしては中央バス停付近に存在する。また、部分的には主要なバス停の側道横断部分に設置されている。
アーケードは雨だけでなく夏場の強い直射日光を遮る効果もあり、歩道縁に植えられているプラタナスの巨木が与える木陰の代替になるかも知れない。他方、アーケードを造ると何もないよりも確実に暗くなる。青空を眺めることができなくなる点で異論もあるだろう。屋根を半透明にしてある程度の日射を取り込むタイプなら、定期的にメンテナンスしないと埃を被ったとき薄暗くなる。

幅の広い常盤通りを横断するのには時間がかかり、高齢者にはかなりの負担になっている。特に常盤町一丁目交差点は右折車両のための時間が割かれているために歩行者の待ち時間が長い。平面交差から上方の陸橋、下方の地下道にすれば車両との交錯が解消され常時横断可能になるが、共に横断者には労力が強いられる。陸橋は景観上の問題があり、地下道は街角に死角を作るセキュリティー上の問題がある。

現況のタイル張り歩道は堅牢に造られていて人と自転車のみが通行する区間は現状で構わないが、商品の搬入路など車道からの乗り入れがある部分は(いくら車道に準じた敷設厚になっているとは言え)タイルが傷んだり動いたりで不陸を生じている。このような箇所は乗り入れを解消できない限りはタイル張りではなく強度があって補修の容易な他の素材を検討した方が良いかも知れない。

歩道に設置された一連の彫刻は、一度市民による再評価が必要である。全体の中で特に評価の劣る彫刻は、常盤通りから移設することを求める。そして常盤通りに限らず今後は一般市民の往来する歩道のような公共スペースへ彫刻を設置する際には、同様の事前評価を元に行うことが望まれる。これは街の景観は地方自治体の顔であると共に市民の共有財産であり、なるべく多くの意見が反映されるべきという自然な着想によるものである。
以上の記述は彫刻に関する総括記事を作成した折りに移動する

市街部の彫刻は常盤通りに固められているのではなく、景観を配慮して真締川沿いや浜バイパス(山大病院通り)にも設置されている。観光資源としての彫刻を考えたとき、それらを徒歩で観て回るのは甚だ時間を要する。常盤通りを中心として自転車が安全に通行できる空間を整備すれば、市外県外からの来訪者がレンタサイクルを利用して効率的に彫刻を観て回ることができるのみならず、そのまま市民の一般通行の利便性にも貢献する。
出典および編集追記:

b1. この問題は県道琴芝際波線において特に酷い。歩道へイチョウを植えたものの雄木と雌木を選別せず植えてしまったために毎年秋口にはギンナンが落果して道路を汚している。見た目が汚いだけではなく油分の多いギンナンは踏みつぶされることでスリップの原因になる。また、根を伸ばすことで歩道のインターロッキングに著しい不陸が生じている。冬場には大量の落葉で沿線住民の清掃負担になっている。
ただし景観面では青々とした葉を拡げる街路樹は見栄えするものがあり、夏場の暑い時期には歩行者に直射日光を避ける適度な日陰を提供する効果がある。諸々の問題点を解決できる植樹帯の形態が求められている。

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