UBE読書のまちづくりネットワーク会議

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記事作成日:2019/5/1
最終編集日:2020/2/21
ここでは、2018年の4〜9月にわたって宇部市立図書館で開催されたUBE読書のまちづくりネットワーク会議について記述する。
写真は第1回開催時に入口ロビーに置かれた掲示物。


2021年には宇部市制施行100周年という重要な節目を迎え、この年は現在の場所に市立図書館が開設されて30周年目ともなる。この重要な節目に向けて読書のまちづくりを構築するための意見・提言を広く求めるものである。したがって会合タイトルはネットワーク会議となっているが、内容的にはワークショップの一形態である。詳細は[1]を参照されたい。
《 参加の意義 》
最近の図書館利用頻度は少ないものの、学びの森くすのきと共に郷土資料を管理していて公開方法について改善を要する点が多数あり要望を述べておきたいこと、情報発信に係る業務が多くなっていることで情報の核となる市立図書館がどう変化するかについて把握しておきたかったことによる。
《 開催形態 》
会議は全6回で、すべて市立図書館2階の講座室で開催された。初回のみ午後2時からの開催で、第2回目からは毎月最終週土曜日の午前10〜12時となっている。参加人数に制限はなく途中からの参加も可能。申し込みなしで傍聴することも可能だが、提言を述べることはできない。

参加登録者には開催の前週に案内と必要な資料が郵送された。都合で参加できない場合は(会場の準備の都合があるため)連絡するスタイルであった。4回目の開催では新しい図書館の平面図(素案)が印刷されていて会合に持参するよう書かれていた。

登録者は直接会場に赴き、名簿チェックを通して名札を受け取った。参加人数が変動するためグループは固定ではなく毎回任意のグループへ入ることができた。各グループには記録役とナビゲート役を務める市職員や関係者が2名配置されたが、後半では人員不足からか参加者のみのグループもあった。

毎回、最初にテーマに沿ったスライド提示や担当者による説明がなされた。後半はスライドで得た情報とテーマに合わせた意見・提言を各グループの構成員が付箋に書き出し、それを白紙に貼り付けて最後にグループごとにまとめ役が発表した。正午終了予定になっているものの概ねすべての回において時間が超過している。

夏場の暑い時期を挟んでの開催だったので、熱中症対策で講座室の入口付近にはお茶や清涼飲料水と紙コップが置かれ、参加者は自由に飲むことができた。
第1回
みんなで考えよう!「読書のまちづくり」と題して4月27日午後2時より開催された。
写真は会場の様子。


現在の市立図書館の歴史や読書への取り組みに関する客観データが提示された上で、45名の参加者が6つのグループに分かれてワークショップ形式で意見を出し合い発表した。

なお、この初回開催のみ午後2時からのスタートで、第2回目以降は午前10時からとなっている。
《 第2回 》
みんなで広げよう!「読書のまちづくり@」と題して5月25日午前10より開催された。
写真は会場の様子。


読み聞かせを行っている団体、市内の書店における売上げ動向など3つの事例が紹介され、これを受けて図書館をはじめ地域や学校、市全体でどんな取り組みが可能か7つのグループが前回と同様に意見を出し合い発表した。
《 第3回 》
6月29日午前10時より開催された。この回では市外に目を向けて山口市と山陽小野田市の取り組みが紹介された。


山陽小野田市では図書館利用者が大きく伸びている。これは厚狭の町立図書館リニューアルにも影響されているが、小野田市立図書館自体が行っているイベントなど各種行事が極めて多い。本を貸し借りに行く場だけではなく、既に情報の物理的な結節点としての役割を果たしている。開催イベントの多寡だけで評価できるものでもないが、個人的には宇部市立図書館の大きな出遅れ感は否めなかった。

事例紹介に1時間半近く要したため後半のWSではグループで話し合う時間が殆どなく、結局事例紹介を受けてのレスポンスに留まるものとなった。この回はWSというよりは事例紹介のための会合と言うべき内容であり、議論の進展がないと感じた参加者が以後の回の参加を見送ったりスタンスを変更する遠因となった。
《 第4回 》
「みんなが行きたくなる図書館を創ろう!(図書館再生計画)」と題して7月27日午前10時より開催された。


開催案内が郵送されたことは以前と同じだが、今回はリニューアルが予定されている図書館内部のレイアウトをどのようにするかを考えるために、事前に図書館内部の平面図が同封されWSに持参するよう案内されていた。しかし持参した参加者は一部であり、しかも前回と同様に事例発表の時間が延びた上に後続のワークショップとの連携を欠いていたため、事例発表を受けた目先の意見提出が多かった。図書館のリニューアルが検討されていることは明らかにされたが、現在の建物の何処まで手を加えるのか、そのための予算がどの程度計上されているかについて何も示されなかった。

次回の開催に向けて、会合終了時に「UBE読書のまちづくりビジョンに対する提案書」が配布され次回開催時までに意見を受け付けることとなった。要望事項を書いて提出することを考えていたが、お盆休みを挟んで個人的に酷く体調を崩すアクシデントがあり結局提出を見送った。
ここで記事化しているので恩田スポーツパーク構想のときのようにリンクのみ知らせようとも考えた
《 第5回 》
「みんなで広げる読者のまちづくり」をテーマに8月24日午前10時より開催された。


出席者により作られたグループ数は6で前回より一つ少ない。正確に調べてはいないが参加者数が少しずつ減少している感じがする。

前々回で県内の公立図書館の事例紹介がなされていながら、今回は再び県外の新しい世代に対応する図書館の事例紹介がなされた。私たちの街の図書館をどうリニューアルするかが議題の一つでもあるのに、人口規模も図書館の立地やアクセスもまるで異なる視察結果紹介の有用性が感じられず、個人的にはむしろ議論が逆戻りした気がした。

関連する情報として、8月8日に開催された第5回ふるさと元気懇談会の「みんなで創る読書のまち」での議論の成果が参加者向けの資料として配付された。


市のホームページによると、「ふるさと元気懇談会は市長が市民の皆さんと直接語る場」と案内されている。[2]しかしこの懇談会について広報やネットで案内されておらず、また誰でも参加できる訳でもなく実際の参加者は非常に限定された団体のみであった。読書のまちづくり会議は今回で既に5回目であり、参加者も多いこちらが主でふるさと元気懇談会は従である。懇談会の議論内容に異論はないにしても、一部の選ばれし団体の中での”安全な議論”に終始し、主たるこのWSには参加どころか顔見せもしない市長の態度に「読書のまちづくり」への本気度が垣間見える気がした。
上記の記述は個人的見解ではあるものの明白な批判と受け取って頂いて構わない…こういうことではいけない

WSのテーマとして「読書のまちづくりを進めるための具体的な方策」が提示された。


第6グループからは子どもたちが新たな発見や好奇心、驚きを提供してくれる本との出会いを助ける司書の役割の重要性を説く意見提示があった。その上で子どもたちの読書離れをくい止めるべく市として新たな業務を司書に課すなら、相応な予算をつけて対応して欲しいという要望が出された。これに対して小学校教諭や学校図書館の司書を務める参加者の多い別グループから拍手が沸き起こる場面があった。

最後に「UBE読書のまちづくりビジョン」を周知するために、11月17日に渡邊翁記念会館でフォーラムが開催されることが案内された。このフォーラムは前半に地元在住者を主体としたパネルディスカッション、後半に記念講演が予定されている。参加費は無料でありパネルディスカッションも期待が持てると思われたのだが、後半で予定されている記念講演で(誤解を招くような紹介のされ方だったのかも知れないが)招聘される講師は書籍至上主義でインターネットのドキュメントの信頼性を否定するスタンスを取っておられることが分かって痛く失望した。
《 第6回 》
「UBE読書のまちづくりビジョン(素案)」をテーマに9月28日午前10時より開催される予定。この回が最終となる。個人的にはこの会議のコンセプトが自分の考える読書の方向性と異なることが明白なので、参加するかどうか分からない。しかし図書館リニューアルを含めて今後の読書が紙媒体の世界へ押し込められるようなら当然ながら軌道修正が必要なので、素案に盛り込んで頂きたい項目だけ別途提出することも考えている。
《 総括的所感 》
読書のまちづくりと称してのWSの重要性は理解できるとしても、遺憾ながら議論内容や構成など問題が多い会合であったと言わざるを得ない。そもそも第一回目の会合で提示された方向性から既に問題があった。

第一回目では現代人の読書離れが提示され、それを裏付ける書籍の売上げ低迷や図書の貸し出し数や読者人口などの客観データが示された。


これは純粋に紙媒体で提供される書籍に限定されたデータであり、売れれば良いとばかりに扇動的な書き方に終始し内容の薄い週刊誌も含まれる。半面、インターネット上のドキュメントはもちろん書籍以外の簡素な小冊子やパンフレットは含まれない。即ち紙媒体の書籍を読む読書という行為こそが重要であり、読書人口を増やすべきことを前提とした議論となっていた。後述するように幼児や学童が本に接する機会を考慮することは現代でも重要であるものの、一般には紙媒体の書籍の読者人口を増やす努力に何の有用性も感じない。その必要性はないとすら言って良い。
ただしこのことは紙媒体の書籍の価値を否定するものでは当然ない

また、会議のテーマに的が絞れていない感じがあった。会合は「UBE読書のまちづくりネットワーク会議」とされていたが、紙媒体の読者人口を増やすことに目的があるのか、今の市立図書館の30周年を機としたリニューアル内容を問うのか、図書館のみならず7月にオープンした常スマのブックコーナーのような次世代の図書閲覧環境の整備を考えるのか…その辺りの軸が提示されなかった。殊に市立図書館のリニューアルに関しては、第4回会合に先だって平面図が参加者に送付されたものの会合ではまったく使用されず、第5回には議題にすら上らなかった。市役所新庁舎建設WSでは、2期棟をどう構成するか読者の要望を取り入れある程度設計に反映させている。

運営に関しては、会議を6回構成とした意義がまるで感じられない。複数回で構成したということは、回の異なるごとに多方面からの情報が提供され、それを元に参加者が議論をブラッシュアップしていく展開が想定される。しかし実際には前回の事例紹介や議論の結果が次回の開催に反映されなかった。端的に言って、広く意見を求めるための会合が個別に6回開催されているのと同じ状況であった。この開催スタイルなら高々2回で充分である。それも「読書(厳密には情報共有)のまちづくり」のソフト面、宇部市立図書館のリニューアル計画といったハード面に分割すれば議論も的を絞りやすいものとなっていた。

議題が並列的に構成される会議の場合、途中から参加しても容易に議論に加わることができる半面、市制施行100周年市民委員会のように議論を積み重ねて優先度の高いものに煮詰め、最終的な提言を完成させる種の会合に慣れた人にとっては些か物足りなかった。継続して出席しても議論の進展がないと感じた参加者が以後の会議から離脱する要因になった。

個人的には3回目あたりから会合は6回開催される個別協議の場と考え直し、以降はどんな意見が出されたかの情報収集で参加しているも同然となっていた。この変遷は第1回で時系列記事を書いたものの、それでほぼ完結しているため以降の時系列記事は不必要と考え作成していないことで如実に現れている。
【 読書について 】
ネット上の情報共有が進んだ時代でも、情報量としては今なお紙媒体の書籍が圧倒的である。そこへ行って本を手に取り開くだけでよいのである。ネットだと検索一発とは言え、検索キーワードを入力して適合性が高い情報を自力で探さなければならない。それも未だネット上に展開されない情報の方が殆どである。そもそも検索以前にスマホやPCのスイッチを入れなければ何も始まらない。意外にも不便であると実感している人は多く、考えられている以上にデジタル化が進まない所以であろう。

それでも極端に古い紙媒体の情報 - 古書や古地図 - は扱うのが困難であり、参照されるたびに物理的な損傷を受ける。それらを含めてネット上へ能動的に展開させていく動きも顕著である。いわゆるデジタルアーカイブの一形態であり、専門化でなければ軽々しくは扱えない貴重な資料も24時間いつでも誰でも閲覧可能な世界が構築されている。相当に時間はかかるが、今後ゆっくりとデジタル化された資料の比率が紙媒体の書籍の情報に肉薄していくだろう。

したがって紙媒体の書籍に対する「読書」を拡げてネット上のドキュメントの探し方、読みこなし方、如何に信頼を置くか、更にはどう発信するかについて合意が得られた部分から基礎知識を共有し始めても良い頃合いである。この辺りについてはWSからかけ離れるので別項目に書いた。
将来的には適合するカテゴリへ再度移動する予定
派生項目: 読書
外枠を拡げた広義の「読書」に対する良い言葉を思い付かない。日本語で近似可能な概念がないなら新しい横文字を導入するのも仕方ないだろうが、充分な説明もなくそれを行うと高齢者ならずとも反発を産むだけなので難しいところである。
最近導入されたSDG'sのように
《 その後の変化 》
・一連のワークショップを元に「UBE読書のまちづくりビジョン(案)」が提示された。これを元に2020年2月20日〜3月11日の期間でパブリックコメント募集中である。[3]
出典および編集追記:

1.「UBE読書のまちづくりネットワーク会議|宇部市

2.「ふるさと元気懇談会|宇部市」の第5回「みんなみんなで創る読書のまち」に依る。会議録がPDFファイルで公開されている。

3.「UBE読書のまちづくりビジョン(案)に対する意見募集|宇部市
素案はPDFファイルで提示されている。この p.48に掲載されている写真の2枚共に目立つ格好で写っている。

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