常盤町1丁目スマイルマーケット(常スマ)

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記事作成日:2019/7/22
最終編集日:2021/8/15
常盤町1丁目スマイルマーケットとは、旧宇部井筒屋(以下特に断らない限り「旧井筒屋」と略記)の建物の1階に展開される小売と交流を軸としたにぎわい創出の複合型スペースである。
写真は7月20日のオープンにあたって飾られた花輪。


宇部市と宇部商工会議所が発起人となって設立された株式会社にぎわい宇部が運営業務を受託している。常盤町1丁目スマイルマーケットが正式名称だが、長いため愛称TOKiSMA(トキスマ)が与えられている。チラシなどでは所在地の常盤(ときわ)町を反映した「常スマ!」の表記もみられる。[1]以下、この総括記事では常スマの表記を用いる。

2019年7月20日の午前10時にオープンしセレモニーが行われた。旧井筒屋の建物1階部分を改装し、パンや弁当などを販売するマルシェ、年代を問わず誰でも休憩できるレストスペース、宇部市立図書館連携のブックコーナー、幼児が安心して遊べるキッズスペースも設けられている。営業日時は旧井筒屋に合わせて水曜日定休となっている。詳細は[2]を参照。

2021年6月末をもって、常スマは諸般の事情により閉鎖された。(→常スマの閉鎖について)最終編集日の現時点では閉鎖されたままだが、閉鎖後に宇部井筒屋の建物そのものを解体撤去することが決定されている。
《 店舗の様子 》
初日に現地へ撮影に行ってきた。時刻は午後なのでオープニングセレモニーが終了して一段落している。なお、不特定の来訪者が被写界に入っている。方針に基づきなるべく被写体が特定できないように撮影している。

店舗入口前の常盤通り歩道の様子。
日よけカバーにあったIZUTSUYAの文字とデザインは消されている。


正面玄関付近。
オープニングイベントとして実施されたガラポン抽選会の案内板が見える。


正面玄関を入ると目に入る壁描きアート。


小売関連。手前に生鮮品、奥にパンコーナーが見える。


個人的に関心をもち、今後の一つの流れになるかも知れないと思った休憩スペースがここだ。
まちなかブックコーナーである。


備えられている書籍は宇部市立図書館の蔵書を示すタグが貼り付けられていた。
貸し出しは行われていないようだが、気に入った本を手に取り自由に読むことができる。


不特定多数に向けての読書環境の整備は市内でも事例はあるが、置かれてる書籍類は内容がよく練られていて、手にとって読んでみようと思わせるさまざまなジャンルで構成されている。これは現在市立図書館で開催されているUBE読書のまちづくりネットワーク会議を受けての実践例と思われる。

館内は無料 wi-fi が利用可能である。
コンセントが設置され特に何の貼り紙もされていないので、スマホなどの充電も無償でできる。


言うまでもなく蒸し暑い屋外とは異なり館内は空調が効いている。従来の店舗によく見られたような「何かを買ったついでに店内のベンチで一休み」ではなく、最初から寛ぐことだけを目的に利用することが可能である。

来店者は無償で快適な休憩空間を利用できるが、店舗側はそのままでは場所代や空調代の持ち出しになってしまうため民間施設では殆ど積極的には行われてこなかった。公的機関が関与しているから可能なシステムとも言えるが、まずは人の流れを呼び込むことはとても重要である。それから次の戦略を考えて来店者が欲しがりそうな商品やサービスを提供していけば良い。こういったある程度の期間を前提とした取り組みは、従来行政において殆ど行われて来なかったので期待が持てる。

キッズスペースはかなり広い面積が確保されている。そんなにあれこれと遊具が置かれているわけではないが、弾力性のあるマットが敷かれていて子どもがある程度走り回っても大丈夫である。


オープン当日は1階のみの公開であったが、翌日には2階を使ってミニ四駆の実演や販売イベントが開催されている。[2]また、フレッシュマルシェエリアではイベント開催や小店舗の出店は、相談により初期費用なしで出店可能と謳われている。
【 旧井筒屋店舗に関連する部分 】
常スマからやや離れるが、旧井筒屋店舗時代のものがどれほど残っているかは個人的な興味もあった。壁や柱に色チョークでデザインが描画されるなど元の井筒屋になかったものが目立つ半面、天井や床などはそのまま使用している。お手洗いも井筒屋時代のものと思われる。

かつての地下食料品売り場へ降りるエスカレータがあった場所は、ベニヤ板で塞がれていた。
現在のところ地階を利用する計画はなさそうである。


エスカレータの乗り口であった場所は、シャッターが降ろされている。


2階へ通じる階段は簡素な柵が設置されている。イベントがあるときは開放され自由に出入りできる。


今のところ常スマとしての利用は1階と2階に限定されるようである。
【 にぎわい宇部 】
常スマのオープンに伴い、以前銀天街アーケード内にあったにぎわい宇部の事務所も常スマ内に移転した。にぎわい宇部の札などは下がっていないため分かりづらいかも知れないが、常スマ1階のマルシェがあるエリアの奥である。レンタサイクルを利用したい場合は事務所へ申し出る。

銀天街アーケードの旧事務所の扉には移転先の案内が書かれた紙が貼られている。


ただし移転後も暫くは旧事務所に明かりが点き、まちなか避暑地として利用されていた。
《 開店に至るまでの経緯 》
建物の母体となっている山口井筒屋宇部支店は去年の大晦日に閉店している。その数ヶ月前に閉店する旨が公表されており、市民に衝撃を与えたと共にその後の処遇について様々な意見が出ていた。

旧井筒屋が撤退するとき建物を解体撤去し更地にする話が示唆された。そのことから建物のある場所は井筒屋としての社有地ではないことが推察されたが、今や常盤通りに面した最大の小売店舗の建物となっていたが故に、それが跡形もなく取り壊されることとなる想像はメインの通りからランドマークを喪うに等しい懸念があった。

年明け後に宇部商工会議所が単独で建物と土地を取得するという案が浮上し、これからの街造りは地元主体でやっていかなければならないという理念が示され、多くの市民にも取得に期待をもって迎え入れられた。

情報この項目は情報不足のため編集追記待ち状態です。

常スマの営業開始に伴い、中央町3丁目(銀天街アーケード内)にあったにぎわい宇部は事務所を常スマに移転している。
《 解決すべき問題 》
この総括記事を作成しているのはオープン数日後のことである。常スマは現状で多くの市民に喜びを持って迎え入れられている。井筒屋閉店後、錆び付いたシャッターが降りたままだった状況は常盤通りを歩いていて侘しいものがあり、紆余曲折はあったものの新たな賑わいを呼び起こすスタートに漕ぎ着けた意義は大きい。

しかし目先および先々にわたって考慮しなければならないいくつかの問題がある。以下の問題は私が情報を持ち合わせていないだけで、既に今後の変更が予定されているものが含まれるかも知れない。
【 店舗アクセスについて 】
常盤通りを歩いたりバスで訪れる場合は問題ないが、マイカーで常スマを訪れたときのアクセスが非常に悪い状況となっている。井筒屋時代からある立体駐車場へ入るのは以前と同じだが、常スマが1階にありながら途中階にはいっさい駐車できない。すべてロープが張られ駐車禁止となっている。


したがって立体駐車場をグルグルと自走して屋上階まで運転しなければならない。立体駐車場からの階段は利用可能なようだが、店舗内やエレベータに向かう部分はすべて閉鎖されている。

屋上へ車を停めたとき井筒屋時代は階段を経てすぐ下の階へ移動できていたが、屋上直下の階は公開されていないため入口が閉鎖されている。
常スマへの出入口として業務用エレベーターが案内されている。


出入口は業務用に使われていたもので扉は営業時間中も開放されていない。自分で扉を開けて入ることになるが、扉はかなり重く高齢者にはきついかも知れない。
この扉は後に常スマ営業時間中には開放されるようになった


業務用の扉を開けると中には階段と業務用エレベーターがあるが、階段は利用できない。エレベータを使って一気に地上階まで降りる。途中の階には停まれないようエレベータの操作パネルが覆われている。地上階へ到達後、業務用の商品搬入口を介して一旦常盤通りの歩道まで出てから入館することとなる。

井筒屋時代には見ることのできなかった業務用スペースが案内通路になっている点は個人的に興味深いものがあるのだが、このように車で訪れた場合は立体駐車場の屋上まで自走し駐車した後、エレベータを使って再び地上まで降りて店舗まで常盤通りを歩いて行くという大変に不便な状態になっている。また、エレベータを降りて常盤通りに出るまでの経路も経年変化でうす汚れた業務用通路を歩くこととなり来店までのイメージに問題がある。


常スマは過渡期的な社会実験スペースと位置づけられている。将来的には現在の宇部井筒屋の建物は取り壊されるか全面的な改修がなされることとなっており、それまでの賑わい創出のための繋ぎである。このため随所に不備があるのは仕方ないことであり、限られた資源を何とか活かす努力は払われていることが評価される。背景を調べると、むしろ諸々の不便の原因になっているのは一般庶民には融通がなく法的規制を杓子定規に適用した結果のように映る。

立体駐車場の2階から順次駐車させれば店舗まで歩く距離は短縮されるのである。1階のみの営業なので来訪者数も限られており、立体駐車場の上層階まで埋まる可能性は殆どない。それをしないのは、屋内設備の消防関連設備に不備があり使用禁止命令が出ているためと言われる。立体駐車場の屋上のみは屋外と解釈されるため使用可能と説明されている。[3] しかし立体駐車場の途中階は上部構造で風雨を凌げるだけでほぼ完全に開放された空間である。また、消防関連の設備不備と言っても実際に必要なのは立体駐車場と階段のみであり、立体駐車場独自に付属する階段を使えば中途階の店舗内に入場させることなく昇降可能である。更に言えば、現状はその使用禁止となっている立体駐車場の中途階を車で通過して屋上へ到達しているわけで、納得いく説明がなされているとは到底言い難い。

見方を変えれば、マイカーによる来店を抑制しできるだけ公共機関を使ってもらうための意図的な誘導措置とも考えられる。実際かなりの高齢者は井筒屋時代と同様に常盤通りを歩いたりバスで降りて来店している。しかし車での来店が不便な状況になっていることに関して何の説明もされていない。今後上層階が利用可能になるならまだしも、1〜2階のみに用事があるのに屋上への駐車以外できない状況なら、よほど特別なイベントが開催されるとき以外はマイカーでの来店者は減少せざるを得ない。狭い立体駐車場のスロープをグルグル回りながら屋上まで到達するのは面倒であり、かつ帰路を共用しているため危険でもある。少なくとも個人的には一度この屋上駐車を体験してからは、もう二度と車で行こうとは思わなくなったレベルである。

余談だが、当面この立体駐車場問題を回避するには県の保健所に車を停めて歩いて行くのが一番近い。保健所の敷地は(合同庁舎の駐車場と共に)土日祝日は一般開放されているので車を停めて別の場所に行くことができる。[*]保健所から常スマは宇部郵便局の前を通り過ぎて次のブロックであり、歩いて数分である。土日祝日で滞在時間が短いなら7月より利用可能となった市役所の立体駐車場に停めることも可能である。土日祝日は2時間までなら駐車料金が無料である。
【 建物の改修問題について 】
宇部井筒屋が閉店し撤収する折りには、建物を(立体駐車場も含めて)すべて取り壊し更地にするという話も耳にしていた。しかし現状で常スマは現役時代の建物そのままを引き受けて1階部分を使用している。耐震基準に照らし合わせて問題のある状態で供用するとは考え難いので、将来的な補強とバリアフリー化が求められているものと推察される。

本来ならすべて取り壊し更地にして撤収するところを現状渡しにしたことから、建物の解体撤去に必要な費用に準じた額を差し引いて譲渡を受けたと考えられる。一旦取り壊すにしても耐震補強するにしても、将来的にある程度の費用がかかることとなる。現在の立地と建物の価値に見合うものを創造し利用していかなければ(商工会議所でも一部の声として上がっていたように)将来的な負の資産を継承してしまったに過ぎない結果となる恐れがある。この辺りに関して市民に充分な説明がなされているとは思えない。

ただ、常スマはあくまでも過渡期的な位置づけであり、将来的には旧井筒屋の建物すべてを取り壊して再建するか、既存の建物を使うならすべての階が利用可能となるように改修を加えることは聞いている。どちらが妥当かの判断は極めて難しい。現在のマイカー中心な移動手段が今後も永きに渡って継続すると仮定するなら、少なくとも現在ある立体駐車場は全面改修すべきである。物理的に現在でも使えるというだけで、利便性や安全面が考慮されていない。今から立体駐車場を再建するなら、市役所の立体駐車場のようにコストも建設期間も抑えたものが可能な筈である。市街部で広いスペースを占有している琴芝児童公園に駐車場を造り、上層部に公園を造るといった意見が再燃することも考えられる。他方、近年推進しているコンパクトシティーの流れで市街部の人口密度が上昇するなら、マイカーでの移動に手間暇がかかり過ぎてバスなどの公共機関へ需要シフトする可能性もある。

前述のように、消防法の兼ね合いより利用に大きな制約を受けている部分がある。これについては定められた手順に則って粛々と手続きを実行したに過ぎないにせよ、事実として去年から実に多くの不適格とされた飲食店や店舗が閉鎖を余儀なくされた。これは火災の危険がある店舗を排除し安全な店を提供する助けになりはしたが、その裏でむざむざ賑わいを潰すことになった可能性はないのか検証が必要である。
《 記事公開後の変化 》
常スマはオープンした後も順次店舗を含めた周辺の整備を行っている。以下はオープン当日にはみられなかったものである。

レンタサイクルサービスを開始している。業務用通路の隅に数台の自転車が配備され、マルシェの奥にあるにぎわい宇部窓口で申請すれば無償で利用できる。(このサービスは停止されました…詳細は後述


また、同じレンタサイクルのスペースに常スマレンタル傘と称してビニール傘の無償貸し出しサービスを始めている。利用申し込みは特に必要なく、自主的に元の場所へ返却することだけ求められている点で近年駅などに配備される傘貸し出しサービスに準じている。

・入口の日よけカバーにあったIZUTSUYAの文字とロゴが抹消され、入口ドアと同じ常スマのデザインと文字がその下にペイントされた。


また、後には入口の扉に賑わい創出の社会実験中であることを示す案内が出されている。

・8月27日から宇部市と山口大学によるシェアサイクルの社会実験が開始され、この過程で常スマ横(琴芝通り側)に電動アシスト自転車が配備された。利用時間は1時間100円で24時間いつでも利用可能。


ただし利用するにはスマホで専用アプリをダウンロードし、決済用に個人情報とクレジットカードの入力が必要。[5]時期的ににぎわい宇部が既に提供していたレンタサイクル(無料)と重なるのは偶然かも知れないが、上記のように決済方法に難があり、実証実験とは言え始める前から結果が見えているのではという意見もある。

9月下旬に2度目のレンタサイクルを利用しようとにぎわい宇部を訪れたとき、前項のシェアサイクルのみの提供となり無料で使えるレンタサイクルがサービス中止になっていることが判明した。
シェアサイクルが導入された時点で既ににぎわい宇部でのレンタサイクルは実施済みだったので、初回にレンタサイクルを利用したとき無料のサービスをなくさないように要望していた。この時点ではシェアサイクルは独自の取り組みであり、レンタサイクルは継続するという回答を得ていた。
なお、シェアサイクル自体が11月27日までの期間を限定した実証実験であるため、期間終了後にレンタサイクルが復活する可能性はある。[6]
【 常スマの閉鎖について 】
2021年6月末をもって常スマは営業を終了した。6月入りして気温が上昇する頃に冷却装置周りの不具合が発生し、その修理費用が嵩むことが直接の原因とされている。展示中で人気を博していたエヴァンゲリオン展もそのまま終了した。にぎわい宇部の事務所や各種店舗、休憩スペースもすべて利用できなくなったが、幼児が遊ぶキッズスペースはレッドキャベツが丸喜常盤通り店に改修され営業開始した後で、2階に移転している。

2年ほどの営業で閉鎖されたことになるわけだが、常スマは発足当初から社会実験的な試行運営であり、そのことは入口の扉にも謳われていた。レンタサイクルは廃止後復旧していないが、常スマ前を拠点とする小型バスは引き続き運行されている。

常スマの閉鎖後、大元となる宇部井筒屋の建物の再建が断念され解体撤去されることが決定された。常スマ時代は消防法の制約により3階から上の利用が禁止されており1〜2階のみを限定的に利用していた。以前は上層階を切り崩して改修する減階手法が予定されていた。解体撤去の時期や跡地を何に利用するのかは今のところ情報がない。
常スマのオープンに合わせて現地取材したときのFBページでの投稿。
外部ページ: FBページ|2019/7/21の投稿
出典および編集追記:

* その後県保健所が閉鎖され取り壊されたため駐車場として利用できなくなった。

1. 出入口ドアに貼られたステッカーや柱に貼られたチラシなど。片仮名表記の「トキスマ」にはトキめき&スマイルに掛けているのかも知れない。

2.「常盤町1丁目スマイルマーケット OPEN!|宇部市
なお、初日も2階を使って花の育て方スクールと関連グッズの販売が予定されていたが主催者の都合により中止となっている。

3.「FBタイムライン|旧宇部井筒屋の業務用搬入口」の読者コメントによる。

4.「常盤町1丁目スマイルマーケット(TOKiSMA)内覧会の開催について|宇部市

5.「宇部市が『シェアサイクル』の実証実験を開始、4カ所にポート|宇部日報

6.「FBタイムライン|常スマ「にぎわい宇部」のレンタサイクルは終了しました
《 個人的関わり 》
注意以下には長文に及ぶ個人的関わりが記述されています。レイアウト保持のため既定で非表示にしています。お読みいただくには「閲覧する」ボタンを押してください。

これ以外に現在のところ常スマおよびその関係者との個人的関わりはない。常盤通りに面して自転車アクセスの良い場所でもあり、今後は定期的に訪れて変化を観察する予定である。

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