宇部市立図書館

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記事作成日:2019/4/27
最終編集日:2022/7/24
情報この記事は琴芝町にある宇部市立図書館について記述しています。
島地区にかつて存在した旧宇部市立図書館については こちら を参照してください。

宇部市立図書館は琴芝町1丁目にある市立図書館である。
写真は図書館閉館日に駐車場より撮影した建物の全景。


位置図を示す。


現行の宇部市立図書館(以下「図書館」と略記)の概要については、宇部市ホームページに掲載されている。ここでは補完的な内容を記述する。
《 建物 》
図書館の開館は平成3年10月であるが、建物は同年3月に建設されたようである。玄関入口横の壁には年月を陰刻した定礎の石盤が嵌め込まれている。


冒頭にもリダイレクトを配置したように、前代の図書館は島地区の高台に存在していた。平成初期の移転であるため旧図書館を知る市民は多い。それよりは知名度が下がるが、現在の図書館が移転してきたこの地はかつて全国的にも類を見ないほどの生産能力を誇っていた宇部紡績工場の跡地である。

宇部紡績工場は、もし相応な形で遺っていたなら近代化産業遺産指定が確実と言えるほど重要な建物であった。戦時の宇部大空襲によって著しく破壊され、戦後は市車輌課が使っていた。現在の図書館が建設されるときに遺構の重要性を鑑み、当時のレンガ壁がそのまま建物に組み込まれている。
【 玄関・ロビー 】
図書館の開館時は多くの来館者が利用している。以下の1階部分の撮影は、係員に許可を頂いた上で行っている。

正面玄関の様子。
雨避けの庇が長く伸びており、このスペースに丸テーブルとベンチが置かれている。


ロビー側より出入口を撮影。
出入口にある柱は正規の貸し出し手続きを経ず持ち出される図書類を検出するセンサーである。


このセンサーは2018年2月に図書の貸し出しが自動化されたときに設置されている。手続きが完了していない図書が含まれているとブザーが鳴り、受付に戻るよう促される。
何冊も借りたとき一部の書籍が正常に処理されておらずブザーが鳴る場合がある

玄関を入って右側に展示室があり、不定期にパネル展示などが行われる。
使用されないときは鉄格子のシャッターで塞がれる。


展示スペースの反対側に2階へ上がる階段がある。その手前玄関ドアに近い側にもテーブルと椅子が置かれ、本を借りた学生たちがよく休憩している。


ただし2020年始めより猛威を振るい始めた covid19 からは新しい生活様式に則り、館内のテーブルと椅子を最小限にとどめて玄関前や中庭に移動されている。
【 1階 】
1階の平面図は図書の案内標示板で大体を知ることができる。


この平面図からも分かるように、図書館の建物全体がいびつな形状をしている。概形では冒頭の地図でも分かる。これは宇部紡績工場の建物が現在の産業道路に対して45度傾いた形に配置されていたことに依る。レンガ壁は1階の館内からも観察できるし、屋外にも図書館の駐車場から隣接する県営琴芝住宅に至るまでレンガ壁が遺されている。

館内の様子。


カウンターの背面の壁には世界地図が描かれている。コンクリートが露出したデザインの壁なので夏場は清涼感はあるが、冬場など冷たい印象を受ける。このデザインは建設当時(平成初期)の流行とも言える。

宇部紡績時代のレンガ壁が組み込まれている部分。
書架の上に概要の説明板がある。


郷土資料室はカウンターの横にある。
ここには重要な資料で禁帯出となっている書籍などが収納されている。


以前は利用するにはカウンターへ申し出て姓を名乗り、利用中であることを示すタグを持っての入場を求められていたが、近年他の書棚と同様自由に出入りできるようになった。

禁帯出の図書などを含めて、コピーサービスが行われている。著作権法上の制限により、書籍なら一度の申請で全ページの半分以下のコピーしか受け付けられない。特にゼンリン®の地図は個人情報の制約によりコピーに制限がある。紙媒体でのコピーは制限がある上に費用もかかるため、スマホやデジカメで逐一欲しいページを”自炊”することも物理的には可能である。この行為に対して特に明確な禁止はされておらず、実行者の自己責任というスタンスとなっている。
【 2階 】
講座室と会議室がある。かつてはイベント開催時以外は一般の利用ができなかったが、会議室は2017年の始めより学生向けの学習室として利用できるようになった。


各学校にも独自の図書館はあるが、放課後は閉館され利用できないため、夏季休暇以外でも学校帰りに市立図書館へ寄って勉強する学生の利用需要がある。一般利用者との住み分けは旧図書館時代から行われていたが、一部で一般と学生の共用部分もあって塞がりがちだったため学習室が設置された。

講座室は一般向けセミナーや図書館が独自に開催するワークショップなどで使われている。


音楽鑑賞向けのホールとしての利用も想定されていて、講座室の前方ステージには大型スピーカーが設置されている。以前は俵田家より寄贈されたベヒシュタインのグランドピアノが置かれていた。
渡邊塾の活動の一環としてピアノ視察の許可を得た折に撮影


新川小学校の音楽室へ放置されていたスタインウェイのピアノとは異なり、このグランドピアノは状態が良く演奏に充分耐える。しかし講座室を広く使うためにピアノはたびたび移動され、その折りに壁へ当てるなどして生じた傷がある。近年では講座室で演奏会が開催されること自体が皆無であり、活用するために伝説のピアノが置かれている渡辺翁記念会館2階ロビーへ搬出された。
《 外構 》
冒頭にも述べたように図書館はかつて存在していた宇部紡績工場の敷地内の一部に建てられている。建物が及ばない外周部分もそのまま図書館たる市有地と他社の社有地の境界となっている部分がある。

例えばメインの自転車置き場は産業道路に近い側に造られており、このコンクリート壁は当時の宇部紡績工場のものを転用している。
この壁の外側は不動産会社の管理する月極駐車場となっている。


図書館裏手側の一部のレンガ壁は加工されることなくそのまま遺されている。
同様のレンガ壁は琴芝県営住宅側にもみられる。


市道真締川東通り線からの進入路が建設されたとき、まだ遺っていた宇部紡績工場のレンガ壁をなるべく保存する方針で施工された。進入路にあたる部分は撤去されたものの、かつてレンガ壁があった場所に新しいレンガを並べることで位置情報を保存している。


レンガは道路や建物をほぼ45度で横切る形に設置されており、駐車スペース向けのペイントもレンガ部分を避けて引かれている。シンボルとして埋設されているため、駐車帯に停めるのにこのレンガを跨いで停めても差し支えない。駐車エリアの一角には図書館の敷地内に遺されたレンガと、宇部を象徴する桃色レンガの復刻品についての説明板があるが、注意して眺める人は殆どない。現在では何故レンガの帯が駐車エリアや通路を斜めに横切っているのかを知らない市民も多くなった。

図書館建屋の南側、市道真締川東通り線枝線の先には復刻された桃色レンガのオブジェが説明板と共に展示されている。


ただし宇部紡績工場のレンガ壁には桃色レンガは使われていない。同様に、かつて隣接して存在していた防長商事のレンガ倉庫も桃色レンガではなく従来タイプであった。
後述するようにこのレンガ倉庫は解体され現在はオーヴィジョンの高層マンションが建っている
《 アクセス 》
冒頭の地図では図書館への出入口は真締川沿いの道(市道真締川東通り2号線)しかないように見える。実際には制限がつくが、通称産業道路と呼ばれる県道琴芝際波線からの入退出も可能である。むしろ最初期は県道からの出入りしかできなかった。

この制限事項について玄関前に看板が出ている。


即ち図書館が開いている曜日や時間帯は、県道からは進入のみの一方通行で帰りは西側通路から退出することになる。

この制限は、当初から図書館の進入路の片側を駐車スペースとして利用しているため双方向の往来を許すと離合が難しくなること、産業道路の交通量が多くなりここから退出すると自歩道上で待機することとなり歩行者や自転車にまで危険が及ぶからである。[1]図書館長による任意設置のため強制力はないものの、この制限は今や図書館来訪者に完全に浸透している。

閉館日は借りていた本を玄関に設置されたボックスへ投函する以外の用事がないので、無断駐車を避けるために以前は奥の駐車場部分と市道の県営琴芝住宅側の出入口より先がバリカーで封鎖されていた。しかし図書の返却目的で西側通路から入ったとき返却ボックス近くまで車を近付けることができない問題があり、現在では閉館日でもバリカーの設置は行われていない。

西側の入退出路は、図書館が開館した当初は存在しなかった。この部分は琴芝県営住宅の整備に伴い追加設置されている。駐車スペースも現在の玄関前通路に縦列する部分と花壇に沿って停める場所だけで、奥の広いスペースはなかった。このため利用者が増えるにつれて県道の出入りで交通が交錯しがちであり不評だった。これに伴い、平成13年度末までに真締川東通り2号線からの進入路と駐車場の整備を行った。[2]この入退出路は市道真締川東通り2号線の枝線として管理されている。
《 検討を要する問題 》
一般に何処の自治体にもある公立図書館は、情報交流の拠点であり地元在住者の教養を高めるなど利用価値の高い施設である。しかし多くの自治体で共通する問題と、宇部市立図書館独自が抱える問題がある。新規に項目を作成して整理してみた。
【 多すぎる休館日 】
利用可能日時については旧来よりもかなり改善が進んでいる。一頃は午後5時に閉館するなど仕事を持っている人が利用できない問題があった。それでも現状はまだ充分とは言えない。毎週月曜日の休館日に加えて月末月初めには図書整理に伴う休館がある。更に単発的な休館日と共に週間単位で休館することがあった。2018年2月には何の理由もなく中旬から月末まで半月ほど閉館し、郷土資料を調べることができず支障を来たした。後にこの長期休館が図書の自動貸出機設置工事とシステム更新によることが説明された。[3]

特に2020年に covid19 が拡大したとき図書館が長期にわたって閉鎖された。その後いくらか持ち直してからは電話予約しておいた図書をドライブスルー形式で借り出せる形まで緩和された。


しかし図書館の入館自体が禁止されていたので当日いきなり訪問しても後日受け取りに来るための予約書を提出することしかできなかった。しかも予約するには借り出したい冊数だけ申込書を作成する必要があり、酷く煩雑だった。


後に感染が収束に向かっていったとき、例えば山口市立図書館はいち早く開館した。しかし宇部市立図書館は感染拡大したりクラスター源となったときの責任問題などを理由に、いつまでも開館しなかった。

このような責任問題をたてに開館しなかったのは、市の直接運営であることの弊害が露呈したと言わざるを得ない。指定管理者制度による運用が望ましいことは、十数年前から提案されている。図書館には司書を置くべきという規定により制約があるのかも知れないが、一般の利用者は適切なアドバイスができる司書を欠くことの不便さよりも、開いていて欲しい時期に延々と閉館している図書館の不便さにウンザリしている筈である。早期の対処が望まれる。
【 離合できない西側入退出路 】
図書館開館時は、退出するとき県道側ではなく西側の真締川沿いに出る退出路を通ることが求められている。この通路には歩車道境界ブロックが据えられているため、入ってくる車と交錯すると離合ができない問題がある。


元は離合可能だった幅をわざわざ歩車道境界ブロックで狭めたのは、徒歩や自転車で来館する利用者の安全確保という表向きの理由があった。しかし実際にはこの通路沿いに駐車する車が後を絶たず、通行しづらいため駐車できないように設置したと聞いている。
ワークショップ時に参加者から聞いた情報であり検証を要する

入退出路は直線なので対向車の有無は早い段階から察知できる。仮に交錯しても中央のやや広い部分でやり過ごすことは可能だが、歩車道境界ブロックのせいで県道側の一方通行の通路よりも幅が狭くなってしまっている。

市立図書館の利用者なら本館から離れたこの区間に車を停めるべき理由がない。図書館の駐車場は充分な広さがあり、ここしか停められない事態はイベント開催時以外およそ考えられない。むしろ県営琴芝住宅を訪れる人の来訪者向け駐車場がなくこの通路に駐車するため、図書館利用者が通行しづらいという状況だったのではないかと思われる。

通路を拡げるのがベストだが、反対側は慶進高のグラウンドで高低差もあるためグラウンド側への拡幅は困難である。そもそも歩車道境界ブロックで物理的に仕切るのは、広い通行空間をわざわざ狭くしている無意味な施策である。人や自転車があれば車は徐行すれば済む問題であり、もし県住来訪者が車を停めて通行困難になるなら駐車禁止にすべきである。県住来訪者の駐車スペースが無いのは県が対処すべき問題であり、市や図書館利用者にシワ寄せされる謂われはない。
【 利用できない冷水機 】
covid19 以降、多くの利用者が共用する器具ということで接触が問題視されたのか、トイレ裏の手洗いにある冷水機が長期にわたって停止されたままになっている。


冬場はともなく夏場は熱中症対策として水分の補給が必要である。この冷水機は冷却された水が供給されるもので、夏場の暑い時期は本当に重宝していた。一般利用者として再開を希望すると要望事項を提出したのだが、この総括記事を編集している現在もなお停止されたままである。ちなみに船木にある学びの森くすのきにある冷水機は従来通り利用可能である。
以前公開していた旧版の総括記事。
総括記事: 宇部市立図書館(旧版)

FBページ側での投稿。本記事では充分な記述がされていない宇部紡績工場についてコメントで書いている。
外部記事: FBページ|2015/5/10の投稿

図書館が琴芝町に移転した直後についての記述。
外部記事: FB|初期の図書館について
出典および編集追記:

1. 産業道路を西から走ってきた場合、樋ノ口橋を渡って図書館へ右折入場することに制限はない。樋ノ口橋を渡ってすぐ右折し市道真締川東通り線を経由して裏から入場することも可能だが、橋の東側十字路に右折レーンがなく同程度に右折しづらいため、結局殆どの車は産業道路に面した入口より入場している。

2.「宇部市の図書館の略年表」より抜粋。(ワークショップにて配布)

3.「FBタイムライン|2月における宇部市立図書館の休館について
《 近年の変化 》
・図書館自体には関係ないが、2016年11月上旬に南寄りの敷地にあった民間会社の運用するレンガ積みの古い倉庫が解体された。


かなり目立つ古い建物だったので取り壊し前の写真を若干確保できている。この撮影は図書館敷地の駐車場側から行ったが、このとき紡績工場時代からあったかも知れない古い袖壁のようなものを見つけている。

・閉館時間が早いという以前からの苦情は対処され、現在はどの曜日でも午後6時より早く閉まることはない。
写真は図書館入口のガラス戸に表示されている開館時間や曜日の一覧。


ただし毎週月曜日の休館日の他に月末に行われる図書整理による閉館など、未だ予期しない閉館日が多い。カウンターでは休館日が分かるように開館日カレンダーを配布している。

・2018年2月に図書の貸し出しを自動で行う機械が導入された。従来は係員が利用者に付与されているカードと図書のバーコードを読み取り入力していたが、この手続きを利用者自身が行うように変更された。カードをセンサーに近付けて読み取らせる手順があまり丁寧に案内されておらず、初めての利用者はまず戸惑う。慣れればまったく問題ないし、多数冊借りる場合も一つずつバーコードを読み取らせる必要がなく、重ねたままセンサーのある台の上へ置くだけで手続きが完了する。ただし冊数が多いとき稀に一部の書籍が正しく処理されていないことがあるようで、正規の手続きを経たのに玄関を退出するときセンサーが鳴動することがある模様。
図書館の常連利用者による報告

・実施時期は未定だが、図書貸し出しの期間内返却を行わなかった場合のペナルティーが撤廃されている。貸し出し期間は2週間で、返却最終日までに電話や口頭などで申請することにより一度だけ2週間延長できる。このルール自体は変わっていないが、以前は最終日を過ぎて返却すると、延滞した日数だけ新規の図書貸し出しが受けられないペナルティーがあった。FBメンバーの指摘により変更に気付いている。

・2019年3月頃より(株)宇部日報社に寄稿している宇部マニアックスのコラムを収録する「サンデーうべ」が玄関を入ってすぐ横にあるラックに一定部数置かれ始めた。


同時期より(株)宇部日報社への問い合わせや要望事項が急に多くなったとの報告を受けた。また、私の手元へダイレクトに寄せられる読者からの情報提供や質問も数件あった。図書館は能動的に情報を採りに行く人々の訪れる場所であり、配布物が持ち帰られることにより新たな読者が増えているのではと推察されている。

・2019年4月下旬に第一回の「UBE読書のまちづくりネットワーク会議」が開催された。情報発信と共有の重要性を認識しているが故に、募集開始直後すぐに参加申し込みを行っている。
ネットワーク会議という表題なものの、参加者が意見交換し提出するワークショップ形式となっている。詳細は以下を参照。
総括記事: UBE読書のまちづくりネットワーク会議
全5回の開催であり、随時参加者の募集を行っている。当サイトでは毎回の会議が終了後時系列記事を公開している。
《 個人的関わり 》
注意以下には長文に及ぶ個人的関わりが記述されています。レイアウト保持のため既定で非表示にしています。お読みいただくには「閲覧する」ボタンを押してください。