錦川第一発電所【1】

インデックスに戻る

現地踏査日:2012/7/25
記事公開日:2013/8/31
錦川第一発電所は菅野ダムの下流側500m程度のところにあり、国道434号で菅野ダム堰堤上を渡って北上するとき、対岸に観ることができる。十数年も前のこと車で何度かこの国道を通り、山の中腹から駆け下りる水圧鉄管を車窓から観て行ってみたいと思っていた。

ここを訪れる機会は一昨年の菅野発電所見学会のときにあった。錦川の対岸に発電所が見えるし、対岸に渡る橋も確認していた。
この写真は見学会が終わって帰る途中、車の中から撮影したショットである。


これも車の中からの撮影だ。
建物のすぐ近くまで行けそうなので、もっと近くから水圧鉄管を観察したいと思った。


しかしこのときは後続の訪問地として徳山発電所が控えていた。徳山発電所もまったく初めての見学地で、以前から行きたくて疼いている場所だった。見学するには最終受付時刻の午後4時までに現地へ行かなければならず、寄り道していては間に合わなかったので断念したのだった。

平成25年度の菅野発電所見学会でも終了時は同じくらいの時刻だったが、一昨年・去年と既に2度訪れている徳山発電所の訪問予定がなかったので、当初から錦川第一発電所を踏査する計画を立てていた。

---

時系列では「菅野発電所・平成25年度見学会」の続きとなる。(但し現時点ではまだ記事化されていない

最近踏査を行った中電管理の発電所としては、佐々並川発電所がある。そこは2度目の訪問だったが、時期が悪く藪に阻まれて結局近づけるか否かも分からないまま撤収せざるを得なかった。
菅野発電所は企業局管理の発電所である。中電とは管轄が異なるが、水力発電を行っていること、発電後の水を錦川へ放流している点は同じだ。ましてこれほど近接しているなら、担当者がそれなりの情報を持っているだろう。ここは攻略前に情報を仕入れておくのが得策と思い、見学会の後でそれとなく担当者に尋ねていた。
「ここへ来る途中、中電の発電所が見えたのですが…あそこって近づくことはできますか?」
見学会などやっていないからあくまでも一般人が近づけるかどうかだけの話である。
答は肯定的だった。
「錦川第一発電所ですね。行けますよ。川を渡る橋がありますから、そこを渡って左です。」
「車で行けますか?」
「通れます。すぐ隣りに神社があって地区の道路になっていますので。」
何処まで近づけるかは現地に行ってからの話としても、菅野発電所に向かう途中に見えていた道路を外部からの車で通っても問題ないと分かるだけでも安心だった。細い道を延々辿った先に侵入禁止の柵があるような状態だと、車を転回するのも大変だからだ。
特に木屋川発電所…見学会以外のとき車で訪れてしまうと転回する場所がない

菅野発電所を退出してから錦川第一発電所へ向かうまでの経路は、総括記事に書いた通りである。対岸から見える道でもあり困難はなかった。
そして何と発電所の建屋のある敷地内までまったく問題なく車を乗り入れられることが分かった。


たまたま入口の門扉が開けっ放しになっていた等の状態ではない。元からフェンス門扉がなく自由に接近できる状態だった。関係者以外立入禁止の札はなく、進入路にロープも張られていないので車で堂々と中に入った。

さて、既に敷地内に車を乗り入れ何処から手を付けようかという状況だ。
第一ショットをどれにするか迷ったのだが…まったく適当に撮ったこの一枚になった。


右手にデジカメ、左ポケットには替えのバッテリーと既にスタンバイしている。
敷地の周りにフェンスはあるが、正規の車乗り入れ口があって発電建屋も自由に眺めることができた。

「すぐ隣りに神社があって…」というのはこのことだろう。
小さな川を隔てて発電建屋のすぐ横にあった。


さて、何処から観ようか…
佐々並川発電所などのときと違い、長丁場になりそうな予感がした。発電建屋から何からすべてネットフェンス越しに眺めるだけなら撮影にも時間のかかる余地がない。しかしここは殆ど何処もアクセスフリーなので近づいて撮影できる。

そうは言うもののさすがに昇圧設備群はキチンと有刺鉄線付きフェンスに囲まれていた。
ここにフェンスがなかったらむしろそっちの方が怖い


車を停めるまでの間、発電建屋やその背面に接続される急勾配の水圧鉄管を既に確認していた。しかし…まあ焦ることはない。時間は充分にあるし今すぐ雨が降りそうだなんて天候でもない。この辺り好みというか性癖によって分かれるが、自分としては「一番美味しそうなものは後回し」にする主義だ。旨みに欠けるというわけでもないが、まずは発電建屋の奥に控える昇圧設備を観に行った。

両開きのフェンス門扉に、お約束の「さくの中に入るのはやめましょう」の中電天使(?)のイラスト入り標示板だ。
フェンスの網目が細かく、どうやらこれは中電の共通仕様のようだ。


メンテナンスで定期的に出入りすると思われるこのフェンス門扉のところまでは草が刈られていた。
その先は草まみれなものの電線に沿って踏み跡らしきものが認められる。


藪漕ぎというほどの荒れようではないが、一般人が通るような道でないのも確からしかった。


何か興味深い設備などないかと周囲を見渡しつつ進む。
電柱に貼り付けられたプレートに目が行った。


「第一水路」の2番と表示されている。


家庭用向け電柱にまで踏査範囲を拡げては途方もなく対象が増えすぎるのでそこまでやらないにしても、最近はこうした電柱に貼られたプレートを注意して観察している。電線は数十年単位で経路を変えずに使われることが多く、貼り付けられたプレートに昔の小字などの情報が観察できるからだ。
ここに観られる第一水路とは、錦川第一水力発電所に関する電線路ということではないだろうか。
数字の2は2番電柱ということだろう

踏み跡はそこで途切れて盛大な藪になっていたが、何故か第一水路電線はその中を突っ切って更に奥へ向かっていた。
藪の向こう側は多分民家があるだけだろうと思い、この先は追わなかった。


昇圧設備のある敷地は平坦ではなく山側に向かって軽く傾斜していた。そのため視座が上がっても伸びすぎた草木が眺めを遮っていた。


No.1鉄塔のある近くはかなり昔に整地して周囲を石積みと擁壁で固めたのだろう。
雛壇状に高くなっていた。


擁壁の上に登って視座を稼ぎ敷地内を眺めた。
意外にシンプルな構成だ。ごつい遮断機などはあまり観られない。


一段高い雛壇の敷地からは別方向に電線を伸ばしていた。
このショットを撮るとき、山裾にあるものの存在に気付いた。


索道である。
これには見覚えがあるぞ…


最初に水圧鉄管を辿ることとなった間上発電所である。水圧鉄管に沿って一条の軌道が敷かれていた。
ここからズームで見えているのはそれと同一のものだった。しかも軌道に沿って作業員が歩く用途だろうか…通路と転落防止柵が見えていたのである。

再び発電建屋の方に戻りながらも気になる方向を眺める。
変圧器がある敷地の奥は山の斜面がコンクリート吹き付けで固められ、ジグザグに山の斜面を登っていく作業道らしきものがあった。


間上発電所では作業道に沿って一条軌道が敷設されていたのを観てきたから、あの作業道の先が何処に続いているかはおよそ想像がついた。そして次に考えついたのは…
ここからあの作業道に行けるだろうか…
一条軌道は有刺鉄線付きフェンスの外側に敷設されているように思われた。もしそうなら若干の藪漕ぎさえ耐えられるなら水圧鉄管を辿れるかも知れない。
後で検証しよう。まずは発電建屋を撮っておこう。

来た道を戻る。発電建屋の背後に水圧鉄管が見えかけていた。


ズームで先を窺う。恐ろしく急勾配だ。殆ど垂直落下に近い。
間上発電所の水圧鉄管も急勾配だったがそれを上回る角度だ。


まるで事務室のロッカーみたいな制御ボックスには、送出線の名称が見えていた。
字が小さくて読みづらいが、上右側から水越線、須金線、大向線、下の段が中須線、和奈古線、第一水路線…


再び車を停めた敷地の方へ戻った。
発電建屋と言うか管理所の建物は、機能一辺倒でもない歴史在る構造物のような様相を呈していた。

(「錦川第一発電所【2】」へ続く)

ホームに戻る