常盤池・荒手【5】

インデックスに戻る

現地撮影日:2016/6/26
記事公開日:2016/7/1
観察対象は異なるが時系列では「常盤池・余水吐【4】」の続きとなる。
常盤池の水位が上がっている昨今、前日の豪雨で大量の水が流れているという報告を頂いて現地視察へ来ていた。

余水吐のすぐ反対側に排水路である荒手があり舗装された遊歩道が延びている。位置的には常盤ふれあいセンターの裏手だ。


今まで言及していなかったのでここで書いておくと、遊歩道は余水吐を出て軽い登り坂になっている。言うまでもなく荒手は夫婦池の沢地へ向かって下り勾配になっているので、この付近で荒手は相当に現地盤を掘り下げて造られている。この切り通しの一部分に蛇紋岩を削った痕跡が今もみられるのである。

どんな状況で流れているかちょっと遊歩道を外れて近づいてみた。


斜面が急なのでとても流水路までは降りられない。
木々の枝を避けてズームしている。これほどの量が流れるのを観るのは自分としては初めてだ。


岩を削った部分。
岩盤の垂直壁なのでさすがにそこだけは竹も生えていない。


市道を横切ってこの小道へ入る前から水の音が聞こえていた。その音は自転車を押し歩きし先へ進むにつれて次第に大きくなってきた。

遊歩道がかなりの下り勾配になる場所に荒手から夫婦池の沢へ落下する滝がある。
滝への道は殆ど喪われているが、遊歩道からは近い。


少し草むらに入ったところだ。既に水飛沫を上げて流れ落ちる滝の様子が木々の間から見えている。
現地へ行くには少々の藪漕ぎが必要そうだ。


今の時期、藪を漕ぐのはあまり気が進まない。特に遊歩道を外れた藪は木々の防虫対策が行われているとも思えず、葉の裏に不快害虫がくっついているかも知れないからだ。服に触れてそのままアジトまでKMCs[1]をお持ち帰りするなんて言語道断、目にするのも嫌だ。

しかしこういう状況では殆ど間違いなく先にあるものを観たいという願望が勝ってしまう。
周囲をあまり観察せずサッとかいくぐって先へ進んだ。同様に訪れる人があるのか踏み跡ができていた。


踏み跡のできている理由が分かった。
そこには以前訪れたときにはなかった説明板が設置されていたのだ。


その説明板はまさにこれからまみえようとする古い石橋に関するものだった。今や大変に貴重なものであり、何とかしようという常盤校区の有志が設置なさったのだろう。
この石橋についてはいずれ総括記事を作成し概要を記述する

しかし…肝心の石橋は折からの流水で大変に痛々しいことになっていた。
今にも形を喪ってしまいそうだ!


ここまでの荒手に関する時系列記事をお読みになっている方なら理解されるように、この石橋は私が初めて見つけた2012年の頃から既に半壊状態になっていた。当初は荒手の中ほどに2つか3つの橋脚部分を持っていたのだが、常盤ふれあいセンター側の半分が流失し、残り2スパンのうちの一部も上部の石材が落ちた状態になっていた。近年みられない程の水量は、残り半分の石橋に確実なダメージを与えていた。

流水量は前回見たどころの比ではない。何処に岩があって何処に木が生えているかも識別できないくらい、まったく適当に斜面を暴れ狂っていた。


ここからは一歩も踏み出せない。
この水量と速度なら、大人だってやすやすと滝の下まで流されてしまう。


思えばここを訪れたのも去年の4月以来で、前回見たときと比べて何処が流れ落ちたのかも分からない。
しかし現物を眺めただけでも非常に危機的な状況に置かれていることは理解された。


この部分である。 残り半分の石橋部分は積み重なっている何個かの石材で支えられているように見える。
既にダメージを受けた後なのか、重なった石の配置が見るからに不安定だ。


こうして見ている間にも目の前で支えを喪い橋全体が崩落してしまうのではないかと思われた。

周囲の状況と合わせて動画撮影しておいた。
水飛沫の音が大きいので再生時の音量に注意

[再生時間: 38秒]


「形在るものはいずれかならず壊れる」は真実なのだが、実際まさにそうなろうとする姿を自分の目で見たくはない。校区の方も同様だろう。ましてせっかく新たに説明板を設置したのに程なくして現物が跡形もなくなってしまった…というのはあまりに哀しい。

滝の全容を見るために遊歩道の端まで歩いた。
アスファルト舗装路が唐突に行き止まりになっているあの場所である。


さながらダムの緊急放流のようである。
水飛沫が周囲に広く散らばり虹を描いていた。


接近できるギリギリの護岸へ立つまでもなく霧状の水が所構わず飛び散っている。
レンズも濡れるためサッと拭った後は素早く撮影しなければならない。


護岸の上から動画撮影した。
更に音量が大きいので再生時には注意

[再生時間: 24秒]


荒手の水路幅に押し込められていた余剰水は、石橋から先で流路を解放されているため大きく広がっている。
岩を叩く水飛沫で地形全体が隠されるほどの水量である。


さっき近くで観察した崩れ落ちそうな橋脚部分はこの辺りだ。
果たして持ち堪えられるのだろうか。


この記事を作成している現時点までにもう一日ほど雨脚が強くなる日があった。降り続かなければ余水吐からの越流量は少しずつ減少するだろうが、現時点であの石橋がまだ踏ん張ってくれているかは分からない。
次回この方面を訪れたとき調査し報告する

荒手の水はそのまま夫婦池へ放出される。そして夫婦池はさまざまな事情から常に満水位のまま維持されていることが分かっている。今なら当然夫婦池の排水路から塚穴川へ流れ出ているだろう。それもここと同じかそれ以上の状況で。

ここまで来たのなら夫婦池の水位と女夫岩池の滝も観察せねばなるまい。まずは夫婦池の堰堤が見える場所へと向かった。

(「夫婦池・本土手【3】」へ続く)
出典および編集追記:

1. アルファベットのまま発音すれば何のことか推察されるだろう。末尾のスモールsは複数形を意味する^^;
なお、野山時代には不用意にフジの木の下を歩き回ったとき付着したのか肩にくっついたままお持ち帰りしてしまった事例がある。

ホームに戻る