常盤池・山炭生の鼻

溜め池インデックスに戻る

記事作成日:2021/4/1
最終編集日:2021/4/2
山炭生(やまたぶ)の鼻とは、常盤池の北東にある岬の古くからの名前である。
写真は岬からの常盤池の眺め。左端に見えているのは近年設置された東屋。


岬の先端をポイントした航空映像を示す。


一般に、地名などに現れる「はな」は、海や湖などに突き出た地の端を意味する。漢字は後世に「端」「花」など適宜同じあるいは似た読みのものが当てられるのが通例である。常盤池には古くから名前を与えられた岬が3つあり、山炭生の鼻はもっとも西側にある岬である。
他にも岬となっている場所がいくつかあるが明確な名前は与えられていない

当初この総括記事は岬という地形に重点を置いて記述していた。周遊園路が岬付近を通り、現在ではジョギングや散歩コースとしての利用と景観面の重要性から、公園要素としての記述も盛り込んだ。更に記述内容が増えた場合には、公園関連の記述を分割する。
《 岬という地形に関して 》
岬に立って池の中心を眺めた写真。
彫刻広場や常盤神社などがかなり遠くに見える。


岬の先端部分の真下を撮影。
水位が上昇したとき寄せられる波で少しずつ侵食されている。これは他の岬も同様である。


あまり推奨はされないが、水位が低いときは岬の下まで降りることができる。 岬より東側、東條の入り江を向いて撮影。東條の入り江近くまで自然地形である。


岬より西側、土取の入り江を向いて撮影。
周遊園路と接する部分でコンクリート護岸がみられる以外は、自然のなだらかな斜面である。


常盤溜井之略図でも山炭生の鼻より池の中央に向かって浅瀬のような描写がされている。このため常盤池が築堤される以前は、山炭生の鼻を含む南に向かって下っていくなだらかな尾根だったと考えられる。ただし充分に水位が低下した時期がなく、この尾根部分に木の根などの遺物はまだ観測されていない。

海に面した岬は、永年の荒波を受けても取り残されて形成されるだけに堅い岩場であることが多い。他方、常盤池を始めとする人工の溜め池やダム湖にみられる岬は、水に晒されなかった時期の方が遙かに長いので、表土を軽く削り取られたままの地勢であることが多い。常盤池の場合でも水に洗われるようになって精々数百年のレベルであり、自然河川などの汀とは異なった景観がみられる。

山炭生の鼻周辺の地質は花崗岩由来の石が風化した砂質土または粘性土で、露岩はまったく見られない。堆積した土砂のうち柔らかな部分が打ち寄せる波で削り取られスポンジ状になった地面が観察される。


他の人工溜め池の地質には見られない特性として、石炭が産出していたことに由来して現在でも波で削られた部分に泥炭が露出する場所がみられる。
写真の黒く見えている部分…近接画像は こちら


後述するように現在では周遊園路が整備され訪れる人が多くなった。しかし常盤池の東側が観光整備され始めた昭和中期までは石炭の採取以外特に注目される場所ではなかった。
《 周遊園路の景観地として 》
常盤池を周回する周遊園路は平成初期に現在の姿が完成した。この総括記事を制作する現時点で、山炭生の鼻という場所の案内は何もされていない。しかし春先限定ではあるが、サクラ並木と菜の花畑が美しいスポットとして知られている。

周遊園路は山炭生の鼻を回り込んでいて、その両側にサクラが植えられている。
適度にカーブした園路と調和してサクラの開花時期には絶好の撮影スポットとなっている。


このカーブの内側と少し離れた内陸部に菜の花畑があり、時期が合えば青い空にサクラの淡い紅色、菜の花の目に刺さるような鮮やかな黄色のコントラストを愉しむことができる。


平成後期には周遊園路が最も岬に近接する場所に休憩用の東屋が造られた。ほぼ同時期に県による「ビュースポットやまぐち」の No.4 として周遊園路の説明板が設置されている。
《 アクセス 》
山炭生の鼻は南遠山の鼻と同様すぐ近くを遊歩道が通じており、徒歩であれば常盤池の周遊園路を経由して容易に到達できる。ただし湖水ホールのある東駐車場とスポーツ広場のある無料の北駐車場の中間点にあるため、徒歩だと相当歩かなければならない。周遊園路は一般車両はもちろんこの記事を作成する現時点では自転車に乗っての通行も認められていない。

自転車で訪れる場合は、岡ノ辻方面から自動車学校へ向かう地元管理の道を利用する経路がある。自動車学校より先は、周遊園路とは独立して岬近辺に向かう未舗装路が通っている。公園内ではあるもののここを自転車で通行することは問題ないだろう。
【 Google ストリートビュー 】
常盤公園の周遊園路は主要なルートについて採取されている。
映像は山炭生の鼻を正面に見た映像。2011年の採取でありまだ東屋が建っていない。

この総括記事を作成する以前の古い総括記事。東屋ができる前の岬の写真と、常盤池の築堤後に作成された常盤溜井之略図からの引用が掲載されている。
旧総括記事: 常盤池・山炭生の鼻【旧版】
画像の殆どが OneDrive にある外部参照で構成されており、サービス提供が終了すると画像が閲覧できなくなるリスク(外部依存の問題)を考慮して作り替えた。画像が閲覧できなくなったら旧版は削除する。
出典および編集追記:

1.
《 地名としての山炭生について 》
岬の名に現れている山炭生(やまたぶ)とは、この岬を含めた周辺の小字名である。
キャプチャ画像は、地理院地図に重ね描きされた山炭生の概略的な位置図。


山炭生の鼻は山炭生全体からすれば南の端にあたり、上の地図からは外れているが北側に字北山炭生が存在する。現在では岬を含めてこの3つの小字に分化している。

炭生(タブ)とは最初期に石炭を人力掘削していたときの竪穴およびその場所を示す古語的方言であり、炭生という漢字表記そのものは後年の当て字と思われる。タブという語が何に起因するかはまだ調べていない。タブそのものは常盤池の他の場所(例えばにしめの鼻や楢原など)にもみられるが、地名としては常盤地区に限定されるものではなく西桃山にも大炭生という小字が知られている。

中山炭生は現在でも常盤池の汀でもっとも接近困難な場所の一つである。周遊園路は山炭生の鼻から北側は常盤池の汀を離れて内陸部を通っている。このため景観的な魅力に薄く、散歩やジョギングコースでは退屈な区間である。周遊園路がこの経路で建設されたのは、既存の炭生跡に影響を与えないルートを選定したためと考えられる。既に道は存在しないが、中山炭生の汀近くに極めて古い雨水排水路が見つかっている。
《 個人的関わり 》
初めてこの周辺を訪れたのは、常盤池を一周する周遊園路が整備された平成期に入ってからだった。岬に名称があり、周辺の汀を踏査したり写真撮影をしたのは更に後になってからである。

歩いて山炭生の鼻へ来たのは、周遊園路を歩くイベントのときに限定される。撮影などスポット的に山炭生の鼻のみを視察したいときは東條から入る道を自転車に乗って菜の花畑近くに停めて歩いている。
【 散歩イベント 】
2021年4月1日に宇部スポーツコミッション(USC)による「スポーツうべたん」において、宇部マニさんぽと題して湖水ホールから山炭生の鼻までを往復する散歩イベントが開催された。運営企画をUSCが行い、宇部マニアックスによって現地までの間にある物件の解説などナビゲートが行われた。サクラと菜の花開花の時期が合い天候にも恵まれるベストコンディションで開催され好評を博した。同種の企画が春と秋に一度ずつ行われる。次回の春に同じコースを歩くかどうかは未定である。

ホームに戻る