蛇瀬池・出水口

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現地踏査日:2012/1/11
      2012/7/3
記事公開日:2013/3/14
灌漑用の溜め池には必ず用水を調節しながら取り出す樋門がある。樋管は本土手の中を通って所定の用水路や川に放流される。
規模の大きな溜め池では堰堤も呼応して幅が広くなるので、出水口が樋門から離れている場合がある。蛇瀬池も古くからある人造の溜め池で堰堤も高いので、出水口は樋門小屋よりもかなり離れている。

出水口の位置を地理院地図で示す。


地図の表記上、蛇瀬池から流出する川のように描かれているが、実際は出水口と余水吐の間は樋門を全開にしても対応しきれないほどの大雨のときしか水が流れないのは、先に荒手を観察して確認した通りである。現在では通常、一年を通じて蛇瀬池から流下する蛇瀬川の水は樋門を経由している。
常盤池における下小場系のものと同様、出水口はかなり分かりにくい場所にある。恐らくは市道の蛇瀬橋が造られた時期に改変されている。

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時系列としては「蛇瀬川・荒手」の続きとなる。

石橋をくぐって余水吐まで戻り、再び本土手まで戻ってきた。
ここから蛇瀬橋の下をくぐるように降りていく小道がある。


降りる道はかなりの急勾配で市道小羽山中央線の蛇瀬橋の下をくぐって回り込んでいる。
部分的にアスファルト舗装されているが車が通ることはあり得ない。


この急な坂を下って蛇瀬橋の北小羽山側接続部の下に蛇瀬池の用水取り出し口がある。
布積されたブロック擁壁のあるすぐ真下である。


蛇瀬橋の真下あたりから撮影している。
7〜8mはあろうかという練積ブロックに接している。


近づいてみた。
危険が伴う設備らしく僅か2mばかりの四方を有刺鉄線付きのネットフェンスで囲んである。


この構造物の存在は、蛇瀬川に沿って下から歩いてきたときには気付いていた。そう大した広さもないのに有刺鉄線付きのフェンスで囲まれているあたり、普通のものではない感じを受けたからだ。

ネットフェンスの網目にカメラのレンズを押し込んで撮影している。
半分水没したヒューム管が見えていてコンクリート桝に水を吐き出している。水の流れも穏やかだった。


ヒューム管は練積ブロックの真下を経て樋門小屋の方を向いていたので、ここが出水口であることは確実だろう。
3枚前の写真からも分かる通り、この場所は本土手と10m程度の高低差がついている。樋門小屋からここまでを接続する暗渠は、本土手のかなり下を通っている。ざっくりと本土手を掘り割って管を据えたのだろうか…
小口径推進で施工されたのかも…

いずれにしろ今はその上にブロック擁壁を築いているから、暗渠が詰まったら補修が大変だろう。

ネットフェンスが厳重なのは、この桝を経て一旦再び暗渠に潜るからだ。ちょうどこの農道の下を通っている。


三面張りコンクリート水路に床版が架けられ、そのすぐ下に放流口があった。


桝を出た水はここで勢いを弱められ、蛇瀬川として再び流れ始める。
すぐ上を横切っている塩ビ管の正体は分からない


ここが蛇瀬川の下流開始部分ということになる。
水路幅は意外に狭い。蛇瀬池流入部の上流とほぼ同じ規格だ。


コンクリート床版から上流側を眺める。
同様の緩衝池があって溜まり水になっていた。


上流側の水路は両岸が藪まみれでとても接近できるような状態ではない。水路の壁も非常に高く内部には降りられないし、緩衝池があるから先へは進めないだろう。

ズームで先方を窺う。
両側に朽ちたネットフェンスがあり、末端部で切れて大岩が転がり込んでいた。そこには見覚えあるものも…


荒手の末端部まで来たものの高低差が大きくてどうしても降りることが出来ず、岩の端から見おろしたボールだ。


完全に同一場所と断定できるので無理して内部へ降りる必要はあるまい…と言うか、この内部へ降りたことのある人は殆ど居ないだろう。

さて、踏査を行ったのは余水吐や荒手を丹念に撮影したのと同じ冬場だった。このため出水口の水量は少なめだが、時期によっては別の表情を見せることがある。

以下は雨続きで蛇瀬池の水位が上昇し、排出量が増えたときの映像である。本土手に居ても排出される水の音が聞こえていたので、出水口まで降りてきた次第だった。[2012/7/3]


夏場だったので出水口付近のフェンスは藪で侵食されていた。


排出量が追いつかず、暗渠部分は桝の中で完全に水没していた。
暗渠には樋門から取り込まれた空気も混じっているせいか、排気の勢いで水しぶきがあがって周囲の鋳鉄蓋を濡らしていた。


文字で書いても現地の状況は理解できないかも知れない。
音の要素を採取するなら静止画像では分からないので動画撮影しておいた。これならよく分かるだろう。

[再生時間: 21秒]


これほどの勢いなら蛇瀬川の排水口はもの凄いことになっているのでは…
その音はコンクリート桝のこの場所からも聞こえていた。

コンクリート床版から撮影。


不謹慎だがバスタブにでも乗っていれば一気に「川下り」できてしまいそうな程の勢いだ。


水量が増えるとこれほど勢いを増すようになる。


怒濤の如く排出される余剰水の音を採取するために動画撮影を行った。

[再生時間: 22秒]


上流側の様子。
余水吐からの水路は通常水が流れることはないのだが、さすがに荒手周辺に降りしきる雨水を集めて水路の底を濡らす程度に流れていた。


前回見つけた空気の抜けたボールはまだ同じ場所にあった。ここを余剰水が流下するような事態はよほど大雨が続かなければ有り得ない。それでも過去に余水吐から大水が流れ落ちたことは幾度かあった筈で、あの水路幅なら天端一杯か溢れるほどの水位で流れたのではないだろうか。

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