塚穴川【8】

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現地踏査日:2009/9/18
記事公開日:2012/9/23
(「塚穴川【7】」の続き)

同じ月の中旬、則貞方面にできた用事に託けて自転車を走らせた。まだ快適と言えるほど気温は低くないが、漕ぐのをストップした途端に汗が噴き出るあの嫌な季節は過ぎ去った。外出ついでに何かネタ採取したいなら、車よりは自転車を選択するハードルは低い。
自分にとって車での移動は業務だが自転車はゼロコストだから遊び感覚…とりわけ平日の昼間っからウロウロできるという気分的プラス効果は大きい

さて、このシリーズもいい加減引っ張ったから今回ですべて決着をつけよう。
再びこの場所である。些か見飽きた感がある。


厳密に言えば前方に見えているあのガード下から市道までは辿っていなかった。まあ、この短い区間に特異なものがあるとも思えず、視認はできているから大した問題ではない。
むしろそれとは別に可能なら再度確認しておきたいものがある。例のガード躯体にペイントされた「常盤川」のように読み取れる橋りょうの正確な名前だ。

ちゃんとした調査目的だから何もおどおどすることはない…と自分に言い聞かせつつ護岸コンクリート上を歩く。
もっとも自転車は市道の脇に留守番させて歩いた。

文字がペイントされているのは下流側から見て右側である。付近は垂直壁および急勾配な石積みで、ガードに直接接近することはできそうにもない。


対岸まで渡れば真下から見上げるので若干近くから撮影できる。せっかく再度ここまで来たからにはリスクを取らねばなるまい。

台風の過ぎ去ったあとで増水が心配されたが、塚穴川の水位はむしろ前回より低かった。しかも河床部分はコンクリートで砂なども堆積していない。
安ってらのスニーカーだが爪先立ちになればどうにか渡れるだろう。


靴の底が破れていないことを全面的に信じ切って、河床に足を浸けて渡った。
さて、問題部分の橋桁だが…太陽が傾きかけていてペイント部分がちょうど枕木の影に入っていた。


影だと読み取れないように思えるが逆に好都合だった。カメラを構えると、光が当たっている部分が白トビして文字が読み取れなかったからだ。
時間が経つと影の位置が移動して再び日が当たりつつあったので急ぐ必要があった。
望遠鏡の要領でズームしつつ表面の文字を視認する。ファインダーから眺めるだけでもそれは望み通りの結果をもたらしつつあった。

再び原典画像である。前回よりは鮮明にズーム撮影できている。
どうだろうか…誰の目にも「常盤川橋りょう」と断定できるだろう。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


前回ズームで撮った写真からは1999年12月という年月が読み取れるから、ここ最近塗り直して橋りょう名を適当に書き換えた…という余地はない。一般に知られているのは塚穴川だが、どうやら常盤川という正式名か別称を持っていることが明らかになった。
まさか塚穴川が俗称で常盤川が正式名だったとしても今更フォルダ名などを書き換えたくない…

このミッションだけ済まして再び自転車の元へ戻った。


狭い市道なので、邪魔にならないよう自転車は上流側に架かるコンクリート床版の上に停めていた。
一見無駄な橋のように思えるが、市道に沿って奥浜水路が通っているのでこの田に渡るために架けられたらしい。


市道の方も同じくらい貧相なコンクリート床版だが、こちらには橋と呼べる要素を持ち合わせていることに気付いた。
僅かながらアスファルト路面の上に親柱が顔を出しているではないか。


写真が多くなるし、先々でこの市道レポートを書いたときリンクしたいので別途派生記事を作成しておいた。
派生記事: 塚穴橋(仮称)
さて、ここから下流側は海の潮の影響を受ける区間になる。
下流に潮留めの樋門があり、海岸を思わせる重厚なコンクリート護岸が始まっている。


立ち位置を入れ替えて撮影している。
市道横断部あたりから樋門までは昔ながらの石積みとなっている。この近辺では塚穴川の流路は変更されなかったようだ。


そう言えば川面に向かって降りていくこのスロープは何だろう…入口に柵はなく、川がここでカーブしているので砂が溜まっている。
昔は地元住民で普通に行われていた溝普請のための作業用通路だろうか。


樋門の上流側に分岐する暗渠があり、入口にスクリーンが架かっていた。
暗渠横の壁面には水深を読み取るスケールが設置されている。


本来の塚穴川はというと…
ここから下流側は市道に沿ってコンクリート護岸になっており、そのまま県道の下まで続いている。
護岸の天端はレベルで市道の方に縦断勾配がついている


塚穴川ゲート操作盤という文字が見える。潮が満ちてきたときゲートを閉じるのだろう。
やはり塚穴川という呼称が一般的のようだ。
ダムと同様ゲート操作は遠隔操作されているのだろうか…


他方、スクリーンを経た暗渠の先は点検用の縞鋼板蓋が掛けられ傍らに建築ブロック積みの小屋があった。


塚穴川排水ポンプ場という表示が見える。平成6年8月竣工となっているので洪水防止に最近設置されたようだ。
恐らく満潮でゲートを閉じているときに豪雨が重なったとき、動力を用いて塚穴川の水を強制排除するのだろう。


この暗渠部分の先が何処へ続いているか正確には分からなかった。
自転車に跨り下流側に向かう。
先方には4車線を有する県道宇部空港線が見えていた。

この市道を歩くことはなかったが、恩田から草江までは近いので県道を通って海を観に行ったことは何度かある。そのとき意識せず何度か塚穴川を渡ったことだろう。磯の香りが漂い始めるのもこの辺りからだった。
もっとも昔は生活排水も流していたのでどの川も河口付近部は大変に汚くヘドロの臭いが漂っていた

塚穴川の護岸が少しずつ低くなり、かなり県道に近づいた場所で川へ降りる入口がある。海の近い護岸部ではよく観られる構造だ。


開いた昇降口から上流側を撮影。
既にこの辺りは海の潮が混じっている。スニーカーで渡れるような水深ではないし、河床部も自然の岩や砂利が転がっている。護岸部は道路面に対してかなり高い。
樋門設置に合わせて護岸を打ち継ぎ足したようだ


この先で塚穴川は県道の下をくぐる。橋の仕様は何処にでもあるコンクリート床版なのだが、下流側に以前から気になっている特異な構造が見られる。その構造は幼少期、海を眺めに来たときから見覚えがあった。しかし正確な構造が分かったのはここから降りて眺めた今回が初めてだった。
写真が多いのでさすがにこれは別途記事を仕立てなければなるまい。
派生記事: 新塚穴橋(仮称)
何処までが塚穴川と呼べるものか定かではないが、取りあえず県道を渡って先を追ってみた。

県道を横断し下流側を眺めている。
昔はここから先は確実に海だったはずで、今も塚穴川の終点と呼ぶべき場所なのだろうか…


もっとも現在では埋め立てによって海岸線はもう少し沖合まで退き、塚穴川の延長が水路状に取り残されている。
もう少し先まで行っておくべきだろうか…

(「塚穴川【9】」へ続く)

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