市道参宮通り線

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現地踏査日:2012/4/22
記事公開日:2012/6/21
”お宮に参る”ことを指す「参宮」という言葉は一般的な熟語のようだ。私のパソコンでは「さんぐう」でちゃんと変換できた。それが何処か特定のお宮であることを必要とする言葉ではない。
しかし宇部市にあっては「参宮」は特別なキーワードを伴って独自の意味に使われる。「参宮線」および「参宮通り」がそうで、この語に於いて”はせ参じるべき宮”は一つである。

参宮通りは宇部で南北を結ぶ通りとしては最も知名度が高く歴史ある道である。いずれ随所でその名が挙がってくることになるので今は多くを語らないが、それは海と一つのある宮を連絡しており、整備され始めた黎明期にあっては南北道路の一部であった。時代は下り、南北道路の経路を継承する形で宇部秋芳三隅線という県道が成立し、平成期に入って同経路は国道490号に昇格された。

国道490号の起点は国道190号上の松山一丁目交差点[1]に置かれる。しかし道路形態としては十字路で、国道490号とは反対の海側へ向かう道がある。市道参宮通り線はこの区間を受け持っている。

広域地図で松山一丁目交差点を示している。国道はいずれも重要度が高く太いオレンジ色の線で記載されるが、この縮尺では市道参宮通り線の経路は殆ど見えない。


交差点付近を拡大し、国土地理院の地図で経路を確認しよう。


松山一丁目交差点は正確な直交十字路ではなく、いずれの路線もやや捻れている。市道参宮通り線に限って言えば国道490号の正確な延長上とはなっていない。断定的なことは言えないが、常盤通りおよび松山通り付近が昔はゆるやかな丘陵になっていた地勢的理由によるものではないかと思う。

市道参宮通り線は海から内陸部ではなく松山一丁目交差点を起点に海に向かうように路線指定されている。”特段の定めがなければ、起点は主要な道におき、北から南に向かうように設定する”という県道の経路設定の原則を踏襲したのだろう。

松山一交差点は市内で交通量最多地点とは言えないが、異なる国道の接点であり主要な交差点であることに変わりはない。
交通量最多は国道190号の藤山交差点とされている
起点となっている主要な交差点に敬意を表し、今回は特別に視座を数十メートル上げ、これから向かう市道参宮通り線の起点を見下ろしてみた。
手前の樹木が茂り過ぎて眺めが遮られている…今の時期って藪以外は写真向きでないよね^^;拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


撮影場所はこの場所に建つ青少年会館で、4階の窓から撮影している。
5階以上は一般来訪者は上がることができない模様
海の方に向かって伸びる中央分離帯付きの4車線路が市道参宮通り線だ。

青少年会館を降りて正面玄関を出た交差点から撮影している。
市道参宮通り線の起点は交差点の向こう…あんな遠い場所にある。超短い市道ならこの交差点内に収まってしまいそうだ。


国道190号を横断する。
松山一丁目交差点より南東側は松山通りとなる。これより北西側は常盤通りとなり、参宮通りが両者を隔てている。
国道関連の写真だが後の説明のため掲載している


それでは市道スタートだが、何しろ参宮通り線は幅がある。上り下りのどちら側を進攻するかで景観が異なるのは致し方ない。取りあえず起点から終点に向かって自転車走行の原則にしたがって左側を進むことにした。

松山通り側の横断歩道を渡ると角地が児童公園になっている。


この公園の歴史はかなり古い。個人的想い出は多くはないのだが派生記事を作成しておいた。
派生記事: 宮大路南児童公園
宮大路南児童公園を過ぎた先で2本の道が近接して横切る。手前の道は公園に沿っているし、奥の方は対面通行可能な幅を持っている。
手前の道も認定市道と思われるがまだ路線名を調べていない


既に存在しないので写真は省略せざるを得ないのだが、現在携帯電話の営業店となっている角地には、かつて「富朝」という古い雑貨屋があった。
雑貨屋という呼び名は当たらないかも知れない。昔あった八百屋・魚屋・肉やなどの複合店のような形態だった。
派生記事: 富朝
再び反対車線側に目を向けると、新天町のアーケード街が見える。


アーケード街は市道新天町線の一部であり、アーケードになっていない前後の区間を含む。下の写真はアーケード街をレポートしたとき撮影した写真である。
信号はなく、ねじれた形で参宮通り線を横切っている。


新天町線を横切ったすぐ先の左側に日切地蔵尊がある。


日切地蔵尊の知名度はどれほどかは想像がつかない。はるか昔、私がまだ松山に住んでいた頃、母親に連れられて訪れたことがあると思う。そうでなければ私もその存在すら頭にない筈なのだ。
その先にある私固有の”深い話”は派生記事に書いておいた。
派生記事: 日切地蔵尊
左端の歩道から眺めただけでは参宮通り線らしさが現れないので中央分離帯から撮影した。
見ての通り、中央分離帯はかなり広い。道路の一車線分以上の幅を持つ。その道路自身も上下線3車線相当分を持つ。


下り線には公安による駐車禁止標示が出ているのだが、両脇にはズラリと車が駐車されており実質上下線2車線ずつになっている。

こういうカラクリになっている。
基本は駐車禁止区間なのだが、充分に道路幅が広いので一部を駐車可能スペースとして供用している。 午前10時〜零時の間なら普通車は無料で駐車できる。このような区画が上下線に設けられている。


全線にわたって隙間無く区画が設置されているわけではないので、駐車可能な台数は限られる。しかし市道沿いには長時間滞在する場所が少ないので、常盤通りの側道ほど駐車スペースの競争率は高くない。少し歩くことを厭わなければ大抵は何処かに空きスペースを見つけることができる。

逆光を避けて帰りに反対側車線から撮影している。
横切るのは市道錦橋通り線で、新天町線の一本海側に位置する長い通りである。


同じく逆光を避けて反対側から撮影している。
ここも道路の横切り方が変則的で、2本の道が参宮通り線上で一つになり反対側に1本の道として通じている。 2本ある道のうちの一つが市道東本町線というところしか分かっていない。


時間帯にも依るのか、幸い市道を行き交う車は少ない。自転車を歩道に待機させ中央分離帯まで歩み出て撮影している。
道幅があるので結構いい運動になるsweat

この先で横切る道路との兼ね合い上、中央分離帯寄りは右折専用レーンになる。


左折するならもちろん左側のレーンに寄っているのだが、中央分離帯寄りの車線は右折専用になっている。直進するなら前もって左側のレーンに移動していなければならない。ここは結構間違いやすい場所だ。
右折オンリーの矢印ペイントが見え始めるのは交差点一つ手前の横断歩道を過ぎてからなので、事情を知っていなければ慌てて右側車線へ寄ることになる。この先で半分以上の車が左折するので大抵の車は左レーンを走っており、右レーンからの移動がしづらいことがあるのでよく覚えておく必要がある。

ここで現在の参宮通り線と同じ位の幅の道に出会う。
横切るのは市道東海岸通り線で、参宮通り線より遙かに交通量が多い重要な路線だ。
写真を撮り忘れていて別の日の写真を掲載している


この交差点では概ね6割方の車が左折、3割程度が右折し、市道の終点に向かって直進するのは1割程度しかない。東海岸通り線はそれほど交通量があり重要視されている路線のせいか、信号の青時間も参宮通り線より多く割り当てられている。
市道としては直進だが、参宮通りの名に相応しい構造の道はここまでだ。この先は幅広の中央分離帯がなくなり、道路幅自体もかなり切り詰められている。

上下線3車線プラス中央分離帯付きの道から、東海岸通り線を横切った先は普通の対面交通になる。道路の全体幅としては半分以下の急減だ。このため、交差点の接続形態が奇妙なことになっている。

東海岸通り線の反対側から撮影。
終点側から何も考えず直進すると…何と反対車線へ入り込んでしまう。


このため終点側から東海岸通り線を横切って「直進する」なら、信号が青になったら大きくハンドルを左へ切って蛇行しなければならない。交差点を直進するのに真っ直ぐ進んではならない場所だ。

中央分離帯付きの区間が東海岸通り線と接続する部分を撮影している。
こんなにも広いのだ。


深く考えず直進して反対車線へ入り込んでしまった…というドライバーはそうそう居ないだろう。普通の状況なら向こうからも車が走って来るからだ。
しかし皆無ではない。実際、逆走の失敗をやらかしたドライバーを少なくとも一名、知っている。
派生記事: 参宮通り線の逆走
東海岸通り線を横切ると、そこから先は中央分離帯のない普通の対面交通になる。


この区間も含めて「参宮通り」と呼ぶものかは議論の余地があるだろうが、市道参宮通り線としては含まれることになっている。”延長線上にある道はなるべく同一の路線に含める”原則のように思える。

左側に港町の市営住宅(地図では「漁民アパート」と書かれている)、正面に卸売市場をみて終点となる。


中央分離帯のある区間よりも交通量は幾分少ない。しかし滅多に通らないという程でもなく、営業車や正面の卸売市場への荷物搬入する大型車両が結構通っている。

終点より振り返って撮影。
背後に卸売市場があり、西側からやってくる道のために妙に広くなっている。


角にある3階建ては市の一部の機能を移転した港町庁舎である。少しだけ写真を追加した。
派生記事: 宇部市港町庁舎
終点はT字路になっていて、真締川の方から接続されるのは市道東沖線、反対側から来るのは地元管理の道のようだ。
いずれにしても今度こそここで終点である。

丘陵部になっている常盤通り・松山通りはまだしも、国道より海側の部分は後年埋め立てることで造られたのだろう。この先更に埋め立てによって陸地が広がっていくことはあっても、参宮通りが海に向かって更に延伸される可能性はない。松山一丁目交差点からの象徴的な広い中央分離帯を伴った道の存在理由と共に、これからも姿形を大きく変えることはなく同じ名前で語られ続けるだろう。
【路線データ】

名称市道参宮通り線
路線番号37
起点国道190号・松山一丁目交差点
終点市道東沖線・港町アパート1号棟前
延長約600m
通行制限なし
備考10:00-0:00は車道側帯部の指定区画に駐車可能。

延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください
出典および編集追記:

1. 交差点の信号機に取り付けられた標示板は「松山一丁目」となっている。しかし実際にこの名称が使われることは殆どなく「松山町一丁目交差点」と呼ばれることの方が多い。宇部市民はかつての角地にあった建物から専ら「エムラの通り」などと表現している。

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