市道崩金山線【7】

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(「市道崩金山線【6】」の続き)

アスファルト舗装路とは名ばかりで路面はガタガタ、笹の葉が一面に敷き詰められていてスリップしそうな道だ。乗って進むほど先を急いでいないし、私の前には同じように自転車を押し歩きしている住民の存在があることを思えば、むしろペースダウンして周囲を観察しつつ歩く位でちょうど良かった。


日差しが得られる区間はごく短く、再び竹藪のトンネルへ潜って行く。
気休めばかりに市の設置した路肩標が並んでいた。


その路肩標が3本並ぶ先で本路線は大きく左へカーブし、右への小さな分岐があった。
いや…精確には道というよりも小さな空き地に続いているらしい。その先にまともな道が見えなかったからだ。


右側の分岐路の奥には何やら建築ブロック積みの祠みたいなものが見える。
初回トレース時は逆から進んできたからか、この場所の記憶が殆どなかった。チラ見程度はしたかも知れないけども何しろ初めてだったし、延々と続くうらぶれた竹藪の道は相当インパクトがあった。いつ雨が降り出すとも分からない天候でもあり、さっさと先を急いでいた状況だったと思う。

すぐ頭に浮かんだのは、藤山八十八箇所の一部ではないだろうかという考えだった。ここまで既に前回見落としていた祠や御堂を数件見つけていた。かつては家があり人が住んでいたと言われるなら、まあ納得できそうな場所でもあった。
自転車を停めて念のために偵察してきた。時系列は続いているがやや長くなるので派生記事に移した。
派生記事: 祠の痕跡かも知れないもの
結局、これが何であったかは分からず収穫はなし…不測の事態が発生するオマケ付きであった。

本路線に復帰する。
笹の葉がものすごい。また、先の分岐からは細い水路が道の端に伸びていた。


付近に生える竹の根が路盤の中へ進入している。
舗装面が浮き上がった血管のように盛り上がっている。
改めて舗装し直されることはまずないだろう


笹の枯れ葉が敷き詰められた道の奥に倉庫のような平屋が見えてきた。
さすがにこれはまだ覚えている。


道の右側に納屋らしきもの、左側奥には一軒家がある。
4年前に訪れたときと何も変わっていなかった。


初めて訪れたときは逆からここへ到達した。延々続く竹藪を抜けてきた先にあった一軒家には驚かされたものだった。

この小屋や民家の周辺だけは植生が異なっている。竹がやや進出しているもののそれ以外の幹径が太い樹木が多い。


民家は個人の所有物でありながら市道の分岐点でありランドマーク的存在とも言えるので簡潔に述べると、この家には現に居住者がある。同じ方向に自転車を押し歩きする人を目撃したこと、まったく分岐路のない市道を経てここまで到達したこと、この先は自転車を押し歩きして容易に抜けられる道が皆無であることから判断できるだろう。

市道は緩やかに登りながらこの民家の前をカーブしている。
この辺りだけはアスファルト路面が露出した状態になっている。


石積みの上に樹齢が相当進んでいそうな木が生えていた。
この外側が窪地になっていて、かつて鉱物を採取していたのではと教えられた場所である。
民家に人の存在が明らかなので今回も立ち入らなかった


自転車を押し歩きしつつそろそろと民家の前を通る。
私としてはまったく純粋に市道をトレースしているのだが、後をつけるようにやって来た手前、住民に誰何されるのではと若干心配になった。


舗装の末端部分はちょうど民家の前になっている。ここから先は未舗装路の完全な山道になる。この後のミッションの段取りを考えて、まずは正面に見える電信柱の奥まで自転車を押し歩きした。
写真にはもちろん撮らなかったが、このときチラッと民家の方に視線を遣った。玄関が開いたままになっていたので、私は自分なりに状況を正しく理解することができた。
前編で書いた「初回トレース編で勝手な想像で記述した内容を見直さなければならない」という部分である

さて、ここからは付随的に一つのミッションが要求される。
最近チャレンジしたものの起点から辿れなかったもう一つの道、市道金山線の終点からのトレースである。まさにこの場所が終点になっている。


計画では市道金山線を終点から再トレースし、起点にある激藪を抜けられるかを検証後、再びここへ戻って本路線の逆トレースを継続するようにしていた。
この場所で姿を露呈させうろうろすれば、それだけ不審者として誰何されるリスクに晒される。それで殆ど迷うことなくそのまま金山線の方へ自転車を押し歩きしたわけだ。

振り返ってもあの民家から視認できない場所まで自転車を移動し、そこへ停めた。
時系列では終点側から再トレースしてきたので、そのときの様子を派生記事としてレポートしよう。
派生記事: 市道金山線【3】
歩行踏査を終えて再びここに戻ってきた。民家の玄関はまだ開けっ放しになっていた。

初回トレースでも見覚えのある納屋。その横から狭くて暗い山道が分け入っている。4年前はおっかなびっくりで壮大な山道を自転車の押し歩きで下ってきた。


したがって逆向きトレースの今回は山越えだ。
本当に通れるのだろうか…先ほどの金山線とは違い今度は自転車を連れて行かなければならず必然的に難易度が高まる。既に山道へ散乱した古い竹が見えている。


さすがに不安になったのでここでも自転車を置いて歩いて先を偵察してきた。


枯れた竹が大量に横倒しになっていたり根ごと崩れ落ちている場所があったが、担ぎ歩きすればどうにかなりそうな状況だった。もちろん竹藪に関してだけの話で、最近起点側から進攻しようとして断念することとなったあの藪区間を突破できるかはもちろん分からない。
まあ何とかなるだろう…
金山線の激藪も起点だけだったし…
一度は自転車担ぎ歩きで通った道である。経路は大方頭に入っているからよほど酷い藪でなければ道を失う心配はないだろう。それから金山線の藪も見かけは確かに酷かったものの、実地に突破してみれば藪は日の当たるごく短い区間だけだった。

振り返って撮影。
やっぱりダメだったと再びここへ舞い戻って来る事態にならないことを祈りつつ…
よほど何かの事情がない限りこの市道を再度訪れることはないだろう


進攻開始した。

山道へ入った途端、今までとは桁違いに濃い竹藪になった。竹以外の植物が殆どみられない。


初回トレースで竹藪を抜けるときに最後の難関となった場所。
数本もの竹が根ごとゴッソリ抜け落ちて堀割の中に落ちている。4年前とまったく変わらない状況だった。


自転車を担ぎ歩きした上で突破した。
登り坂ながら担ぎ歩きは初回トレース時よりも随分と楽だった。初代の自転車は堅牢な造りが災いしてそれほど重かったのだ。

堀割の深い部分は、上方を枯れた竹がそのまま乗っている場所が目立った。堀割部分の深さは背丈程度あったので、自分が身を屈めさえすれば問題なく自転車を通すことができた。
もの凄く分厚い笹の葉のじゅうたん状態で土が殆ど見えない。


振り返って撮影。
一定勾配を保つために遠くから堀割を造っていたことが窺える。


終点側から辿れば、当初は一応車も通ることができたのと同じ市道とは信じがたい様相だ。初回トレースがこの方向だったら、竹藪への突撃はかなり躊躇されただろうと感じた。

(「市道崩金山線【8】」へ続く)

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