市道常盤公園岡ノ辻線【2】

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現地踏査日:2013/1/23
記事公開日:2014/5/28
(「市道常盤公園岡ノ辻線【1】」の続き)
この先はどうなっているのか?
道路を造ろうとした痕跡とかがあるのでは…


現在地は地図で示すこの場所である。


本編で既にみたようにこの場所で道路がぷっつり切れ、ガードレール横塞ぎ状態になっている。その後ろは深い藪になっていて初回踏査時は詳しく調べる気にならなかった。
もしかすると測量杭が設置されていて道路を造ろうとした証拠が遺っているかも知れない。そこで藪の勢いがおさまる年明けに再訪して潜入してみることにした。

長丁場になるかも知れないので、自転車は単管バリケードの内側へ停めて施錠している。そしてガードレールへ接近する前からカメラを持った私の様子を警戒しつつ窺っている何物かがあった。

廃道ネコである。


どういう訳か藪化した廃道には大抵ネコが棲みついている。北小羽山4号線の終点付近でも野良猫に出会った。人間様に邪魔されない場所というのは分かるとして、こんな所では餌にありつくのも難しいのでは…

一歩一歩とにじり寄りつつズーム撮影している。
彼も当初からこちらの動向を窺っているようであった。首輪が見えないから純粋にノラちゃんだ。


この種の猫の性質としてお約束なのは、一定距離内に入るとアラートが作動してサッと逃げてしまう。そしてある距離ほど走ったらそこで立ち止まり、必ずこちらを振り返る。野良猫らしい性質であり、普通の飼い猫と違って可愛げのなさを象徴する習性だ。

敢えてカメラを構えたままガードレールの傍まで接近してやった。
「フフフ…逃げられると思うな。」
「ついて来るニャー♪」


それは「後について来い」ってことか?

いや…そっちは藪がきついから野ウサギはこちらから入ろう…


さて、捕物帖やってる場合でもないので踏査にかかろうか。
ノラちゃんの居たのとは反対側のガードレールの切れ目から進攻する。

おっと…
枯れ草の山の中に宇部市のコンクリート境界杭が隠れていた。思わず靴の爪先をぶつけてつまづきかけた。


まずはガードレールの背面あたりを調べる。
木の幹に赤いテープが巻き付けられ、その近くに測量杭を見つけた。


T.2とマジックで書かれた杭。
これは今調べようとしている道路測量に関連するものだろうか…


杭に打ち込まれた釘やマジックからそれほど古いものではないらしい。参照用としてコンサルが落としたものかも知れないので、この道路向けとは断定できないだろう。

ガードレールの背面はかなり急な下り斜面になっていて、雑多なゴミが投げ込まれていた。
枯れ草も結構目立つ。廃道化していると書いたものの、それなりに草刈りを行って集めたものを押し込んでいるのかも知れない。


ざっと周囲を見渡したが他に杭など痕跡らしきものは見つからなかった。そこでもう少し先まで歩いてみることに。

ガードレールのある道路面から垂直高で5mくらい下ってきている。
光量不足でピントが甘く分かりづらいかも知れないが、かなり目立つ窪地である。


これは昔の炭生(タブ)跡ではないかと思う。常盤池周辺は江戸期あたりから既に石炭を採掘していて、円筒形の竪穴が結構遺っている。それほど明瞭ではなくとも窪地状になっているのは概ね掘削した跡とされる。一定の深ささえ掘れば至る所で石炭が得られたからだ。同様の窪地は周辺にも沢山観察された。

斜面を下ってほぼ平坦になる。
周囲は一面枯れ木や枯れ草の海状態で近年誰も入ったことがなさそうな場所だ。測量杭どころかゴミさえ落ちていない。


やがて前方に一段高い広場のようなところが見えてきた。


敷地側からゴミやら倒木やらが投げ込まれていて地面が見えず足場が悪い。
倒木を伝ってあがるしかなかった。


平坦な場所にでてきた。敷地の一角には堆肥のようなものが積まれている。
ここは一体…?


常盤池の周遊園路を歩く人々の姿が遠くに見えた。そのことで現在いる広場が何処なのか理解できた。


数年前に訪れたこの場所の裏側だ…
東條の入り江を渡る周遊園路の中ほどである。


この敷地は周遊園路とはフェンスで仕切られていて中に入ることはできない。

枯れ草が山積みにされていた。
肥料として使うらしい。堆肥用草等集積場という立て札が設置されていた。


このことから恐らく公園緑地課が資材置き場として使っているのだろう。多分私が居てはならない場所なので、姿を見られないためにもそれ以上周遊園路の方には近づかなかった。

道路課のものではと思われる資材も…擬木の柵やインターロッキングの部材が置かれていた。
あの歩道に敷設されていたインターロッキングに似ている。


敷地の端は埋め立てられずに遺った常盤池の入り江がみえている。
これは自動車学校の近くのあの場所だろうと理解できた。


護岸部分はコンクリートだ。ここは敷地の奥にあるので周遊園路からは到達できない場所である。


それほど深くはないと思うが水が淀んでいて底が見えない。散歩する人が近づく可能性など有り得ないので柵は設置されていなかった。
何ともおどろおどろしい。


対岸は水生植物が押し寄せて入り江を浅く埋めている。
自動車学校は休みらしく人の気配はなかった。


結局、最初の測量杭以外にはこの市道が先まで造られそうな理由になるものは見つからなかった。
こうして来た道をそのまま戻った。


やはりここから先の道は当初から計画されなかった可能性が大きい。単管バリケードで塞がれた場所からこのガードレールまでは、今後も活用されることなく少しずつ自然へ還っていく運命だろう。
せっかく造ったのだから何とかして活用させようとするなら、例えばガードレールを撤去して公園緑地課が資材置き場として使っている場所まで出入り可能なスロープを造る程度だろう。

もっとも現在ある公園緑地課の管理事務所から資材置き場までは車も通れる幅の周遊園路があるので、このためだけにスロープをつけるのも無理やり感がある。多分「既に造ってしまったものは仕方がない」ということでこのまま捨て置かれるというのが一番有りそうなシナリオだろう。
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2016年に入って久し振りにこの場所を訪れて現地が大幅に変わっていることに気づいた。また、常盤公園関連のドキュメントを閲覧する過程でここから上記記事で述べた堆肥ヤードへ降りる道が計画されていることを知った。一連の変化について後続記事として記述した。

(「市道常盤公園岡ノ辻線【3】」へ続く)

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