常盤通りの問題点と改良案

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記事作成日:2017/8/16
ここでは、国道190号の常盤通りに関する問題点とそれに対する改良の素案についてまとめている。現在の常盤通りについては総括記事における現在の常盤通りを参照されたい。以下の問題点は常盤通りの本体構造だけではなく付随するものも含まれている。
《 問題点 》
常盤通りの最も標準的な片側車線における横断構造は、道路センター側から順に車道、植樹帯、側道、歩道(自転車通行可)となっている。それぞれの部分ごとに問題点を考察している。車道部については新川橋は個別の問題を抱えているので別途項目を作成して検討している。
【 車道部 】
新川橋を除いて追い越し車線・走行車線バス専用レーンの3車線で構成される。松山通りとは異なり中央分離帯は存在しない。この構造上に起因する問題点が目立つ。

中央分離帯がなくセンターラインにはポストコーンも設置されていない。このため松山通りと比較して追い越し車線を走る車同士の正面衝突リスクが高い。また、ハイビーム走行する車があったとき眩惑されやすい。


また、中央分離帯がないため右折車両が対向車をやり過ごせる余剰地がない。交差点で一台でも右折車両があれば追い越し車線の滞留を招き流れを悪くしている。右折車両による足止めを嫌気して追い越し車線を疾走し、前方の車が交差点手前で右折ウインカーを出すのを見るや否や走行車線へ割り込んで戻るといった危険な運転が常態化している。[a1]ドライバーのモラルに依るところが大きいが、現在の道路構造が走行車線を実直に運転するドライバーまでも危険に晒している。

一番外側の車線はバス・タクシー専用レーン(午前7時〜午後6時)に指定されているが、有効に運用できているとは言い難い。一般車両がこのレーンを通行できるのは、指定時間外および交差点で左折したり側道へ入る目的に限られる。しかしバスやタクシーの通行頻度が低下した昨今では、走行車線と追い越し車線が滞留気味なのに専用レーンを通ることができず交通の無駄を生じている。
交通量の多くなった現在ではレーンシフトが困難になっているため、目的の交差点の数個手前から専用レーンへ入って左折する車が目立っている。先述のような追い越し車線の使い出の悪さもあって、常盤通りでは車が安定走行できる車線は実質一つしかないとも言える。
【 新川橋 】
新川橋は昭和22年の竣工で、50メーター道路を整備した最初期のまま補修を重ねつつ運用している。現在抱えている問題の多くが橋の老朽化と車線幅に帰結される。特に橋の幅が4車線相当しかないため常盤通りの6車線に対応しきれておらず交通のボトルネックとなっている。


詳細や改修手法については新川橋の該当項目を参照。
派生記事: 新川橋|現在の橋の抱える問題について
老朽化の問題については2017年の春先以降に橋桁などの調査が行われ、当面の補修が終了している。
【 側道 】
常盤通りには車道から植樹帯で仕切られた外側に四輪が2台横並び可能な幅の側道が設けられている。これも50メーター道路を整備した最初期からある道路構造で、店舗へ立ち寄る車などを緩速走行させるための造りと考えられている。しかし現状は緩速通行帯としてではなく早い者勝ちで使える駐車帯同然に運用されている実態があり、本来通行に供されるべき道路空間の適切な利用法とは言い難い。


その他の問題点も含めて詳細は以下の派生記事を参照。
派生記事: 常盤通りの側道|問題点
他方、側道を駐車スペース代わりに使うことは、昔から駐車場不足問題に悩まされてきた市街部において次善的な解決法を与えているのも事実である。
【 歩道 】
歩道は元来、歩行者向けの通路であり一般には自転車は車道を走るべきとされている。しかし常盤通りの車道は四輪の交通量が極めて多いこと、側道は四輪の駐車スペースと出入り車両の通路と化していることから殆どの自転車は歩道を通行している。この辺りの詳細な考察は以下を参照。
派生記事: 常盤通りの自転車通行について|問題点
常盤通りの歩道は幅が相応に広く、自転車も通行可能な自歩道という扱いを受けている。すべての自歩道には歩行者と自転車が混在して往来する問題があるが、常盤通りの自歩道に関してはその構造やくつろぎスペースのレイアウトから歩行者・自転車に共通する固有の危険性が存在する。

歩道上の障害物のように見える設置物は、自転車の自歩道内を疾走する行為を抑制する効果があるかも知れない。しかしその目的であれば別の手段が必要であり、例えば木製ベンチの角が歩道の往来空間まで突き出ている現状はすべての往来者に対して危険である。[a2]


この他にも歩道内や車道交差部との段差や設置物の位置などに関して問題がある。詳細は以下の派生記事を参照。
派生記事: 常盤通りの歩道|問題点
安全面よりは重要度は下がるが、景観上の問題もある。統一性に欠け分かりづらい彫刻の歩道上設置、老木化して部分的に歯抜けとなったプラタナス(スズカケノキ)、統一性の感じられない彫刻の配置は街の顔を維持する上でいずれ対処が必要である。
出典および編集追記:

a1. 同様の現象は国道190号においては東割〜流川間において特に顕著である。

a2. 本件については「宇部市|インターネット市民モニター」の平成29年度第2回「障害のある人への理解について」において常盤通りの歩道を例示し改善が必要な場所として指摘している。詳細は「(PDFファイル)」のQ14の16ページを参照。
《 車道部の改良案 》
車道・新川橋・側道(植樹帯を含む)は一般車両に係る部分であり、改修工事には膨大なコストを要する上に車線を切り替えつつ施工せざるを得ず往来に与える影響も大きい。他方、側道は車道扱いながらそれほど頻繁な通行はないので、歩道を含めても相対的に軽微な交通規制で施工可能である。このことより実際の改修工事の手順については、車道部と歩道部を分けて検討している。なお、車道部のうち新川橋の改修については前出の「新川橋|現在の橋の抱える問題について」を参照。
【 松山通りとの対比 】
常盤通りの車道往来上の問題の殆どは中央分離帯を欠く構造に帰結される。同種の問題は常盤通りに限らず沿線に車の出入りがある中央分離帯を欠く4車線以上のすべての道路が抱えている。この問題を考察するには、東側で接続される松山通りと対比すると分かりやすい。

松山通りには中央分離帯があり、交差点では中央分離帯を削ることで右折車両の小さな退避スペースが生じている。このため右折車両があっても後続の追い越し車線を直進する車をスムーズにやり過ごすことができている。
写真は松山通りのある交差点部分


また、車道と側道を仕切る植樹帯がないため左折車は歩道の状況を視認しやすい。歩道も常盤通りと同程度を確保していながら、背丈の高い樹を植えず車道寄りに花壇を設置しているだけなので有効利用幅が広く見た目もすっきりした感じを与えている。この松山通りの道路構造は初期のものに手を加えた結果であるが、往来の安全上・景観面共に勝っている。

現在の常盤通りを松山通りの道路構造に統一することを提言する。即ち中央分離帯を新規に設置し、現在の6車線は確保したまま上下線全体を歩道側へシフトさせる。車道と側道を仕切る植樹帯を廃止すれば、その他の部分(側道と歩道)に影響を与えることなく幅の確保が可能である。

中央分離帯の設置は、正面衝突リスクを下げることと右折車の退避場所を確保することに本質がある。道路センターに緩衝幅を確保すれば足りるので中央分離帯の植樹は必須ではない。しかし対向車の眩惑低減と街の景観面からもあまり手のかからない樹木を植えるのが妥当だろう。松山通りにあるフェニックスと同じである必要はないが、何を植えるのかは市民の意向に沿ったものにするのが望ましい。

植樹帯を廃止すると車道と側道が一続きとなる。現状の松山通りを見ると走行車線外側の路側幅が狭い。原付のような二輪走行の安全を保つために側道相当幅の一部を路側に充てる方が良いかも知れない。
もしその改修が奏功したなら松山通りの走行車線も同様に路側幅を拡げる変更が必要だろう

バス・タクシー専用レーンの問題は物理的な改修工事を要しない。専用レーンから旧来の優先レーンへ戻すだけである。現状、バスが停留所を離れて本線へ戻ろうとウインカーを上げている状況では後続車は先を譲る習慣が定着しているので、レーン指定自体あまり意味が無い(専用・優先レーン指定があってもなくても譲る車は譲るしそうしない車はしない)とも言える。他方、専用レーンを解除し均等な3車線状態にすると、走行車線の遅い車を抜くのに左側レーンを使う運転を誘発するかも知れない。
【 改良案に対する問題点 】
物理的には上下線の植樹帯を廃止して上下線をシフトさせ、中央分離帯を造るだけであるが、着手にあたっては以下の様な困難や問題が考えられる。
(1) 膨大なコストを必要とし資金投下に見合った改良効果が得られるか不透明。
(2) 国土交通省をはじめとした多方面への機関との協議が必要。
(3) 工事の間は常盤通りに面した店舗の営業に影響が生じる。
(4) 工事が完工する頃には再び道路交通事情が変化している可能性がある。
特に常盤通りを含む国道190号は国土交通省の所管であり、現時点でどのような道路改良計画を策定しているかにも依る。[b1]変化の様相としては戦後50メーター道路を新規に造ったのと同程度のインパクトがあり、かかる費用は間違いなくそれを上回る。後述する歩道部の改良とは比べものにならない大工事になるので、交通実態の調査や影響評価を行っておく必要がある。

目先の交通事情を予測することは容易でも、中長期的には困難である。体感的には現在の車社会が大きく変遷するとは考え難いが、市の推進するコンパクトシティの流れがそれを変える遠因になるかも知れない。市街部回帰志向が強まればその過程で交通量は増大するが、市街部の人口密度が高くなれば公共輸送機関の見直しがはかられ、利便性とコストの兼ね合いから自家用車より公共機関が選好されることも起こり得る。
《 歩道部の改良案 》
【 安全面の改良 】
常盤通りの歩道は充分に幅が広い。しかしその幅の広さに任せて寛ぎスペースと往来空間を無秩序に配置しているためせっかく幅の広い歩道をわざわざ狭く使っている。具体的な改善案については以下を参照。
派生記事: 常盤通りの歩道について|改善案
往来の安全確保は最優先課題であり、歩道上へ雑多に配置されているものを整理し、歩行者と自転車の交錯を下げるために歩道または側道部分に自転車通行帯を設置することを提案する。ここに言う雑多なものとは、歩道の中央寄りに配置されている寛ぎスペースとしてのベンチや植樹である。それらは必要あって配置されているにせよ、寛ぎスペースが歩道の往来空間に進出しているため、歩行者はそれを避けて歩く。更にその歩行者を縫うように自転車が通り過ぎる危険な状態になっている。

歩道部は車道部の改良に比べて往来に与える影響やコストは相対的に小さい。ただし前述の車道改修案を前提に施工するなら、側道と付随する植樹帯を撤去し自転車通行帯などに充てる段階から走行車線のシフト分を見込んで確保しておく必要がある。この場合、施工の優先順位としては側道の植樹帯撤去、中央分離帯設置を伴う車線シフトであり、歩道部のみの改良であれば独立して施工可能である。
【 景観面の改良 】
安全面の確保より優先順位は下がるが、歩道は歩行者が往来するためのものであり街の顔として観察されやすい部分である。
歩道へ直接植え付けるタイプの街路樹は、木の葉や落果などの清掃が大変なことと成育に伴い根が伸びることで歩道の不陸を生じる原因になるため、市街部においてはこの問題が解決されるまで新規には行わない。代替の緑確保として維持管理に手のかからない花壇ポットや吊り下げ式のものに変更する。現在も歩道と側道の間に植わっているプラタナスの大樹は自然減へ向かうことになるが、完全になくなってしまうのは一抹の寂しさを感じる市民が有るかも知れない。

彫刻の設置については、常盤通りのみならず市内全体を対象に考慮した対処が必要である。従来は市が彫刻を買い上げて恣意的に公園や歩道などに設置していたが、有り体に言って馴染みづらく周囲の景観に調和しない作品がある。その設置位置も歩道の中央寄りなど往来の危険を招くものが目立つ。


テーマ性なく無秩序に彫刻を配置するなら景観の統一感はなくなり、市民からの不評を買うのも当然である。街の景観は市民の共有財産であり、今後は常盤通りに限らず彫刻の設置前に広く意見を求めることが必要である。既に設置されている彫刻も全体的な見直しが必要で、景観にそぐわないなどの理由で評価の低い彫刻は移設すべきである。彫刻に関して市民の理解が得られないという愛好家や行政の声があるが、これは従来のやり方が適切とは言えなかったからに過ぎない。彫刻そのものが市の主要な観光源であることにまったく疑いは無いので、芸術面と街の景観調和の双方に考慮した手法を模索することが必要である。
以上の記述は彫刻に関する総括記事を作成した折りに移動する

市街部の彫刻は常盤通りに固められているのではなく、景観を配慮して真締川沿いや浜バイパス(山大病院通り)にも設置されている。観光資源としての彫刻を考えたとき、それらを徒歩で観て回るのは甚だ時間を要する。前述のように常盤通りを中心として自転車が安全に通行できる空間を整備すれば、市外県外からの来訪者がレンタサイクルを利用して効率的に彫刻を観て回ることができるのみならず、そのまま市民の一般通行の利便性にも貢献する。
出典および編集追記:

b1. この記事を制作する現時点では(市担当者を通しての情報であるが)改修計画は策定されていない模様。
《 施工時期 》
一連の改良工事は、宇部市制100周年を目標とした再整備が実現できれば理想的である。一つの時代の節目であり、この重要な節目で市街地のもっとも重要な道路を最適化しておくことで、今後もう暫く続くと予想される車社会、街中へ気軽に出歩ける歩行者向けのスペース、そして今後も横ばいか増加が予想される自転車通行にも対応可能となる。

老朽化した宇部市役所の庁舎は、ほぼ同じ区画への新規建て替えが確定している。新庁舎での援用開始となる頃には経済状態が変化していることは十分考えられるものの、意思決定し庶務を遂行する場所としての市役所が常盤通りに面して確定している以上は、連携した道路整備を行っておく方が良い。

常盤通りの構造上の問題は既に指摘されている事項かも知れないが、少なくとも現時点では改良案についての言及もされたことがない。まずは本件を俎上に載せて多くの市民の意見を反映させることが重要である。

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