桃山中学校|宇部・桃山の歴史と文化に関する講話

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記事作成日:2023/5/20
最終編集日:2023/7/30
ここでは、2023年5月18日に桃山中学校で実施された宇部・桃山の歴史と文化に関する講話と題した郷土授業について記述する。
写真は先生方による撮影。[1]


聴講対象者は2年生の全生徒で、うべタイム(地域学習)と題して1〜4校時に宗隣寺龍心庭見学と座禅体験、当校体育館にて桃山中校区の歴史・文化に関する講話という内容で実施された。2年生全員を2グループに分け、Aグループが宗隣寺へ行っている間にBグループが体育館で講話を聞き、Aグループが戻ってきて入れ替わった。このうちの講話(40分)を宇部マニアックスが行った。

正規のカリキュラムに則った郷土学習への参画は、2月末に行った郷土学習講演会を含めて2度目だが、今回の講話は宇部マニアックスが単独でシナリオを制作し講話を実施した初めての事例である。2月末の講話とは異なり対象生徒数が少ないため、生徒たちは体育館に直座りで聴講し、地区在住者の聴講はなかった。
《 実施に至るまで 》
2月末の講話では全体のシナリオを局長が作成し、対談形式で進行する中で塾長が渡邊祐策翁を含めた主な解説を行い、隊長たる宇部マニアックスは、桃山の地名由来に話が及んだときに解析結果を発表するにとどまった。

今回は単独での実施だったので、詳細を把握した上で一から概ね40分で収まるシナリオを作成して講話に臨んだ。この流れは以下の通りであった。
【 講話依頼の背景 】
最初に依頼の電話があったのは4月のことで、28分の1テレビのスタジオ収録と長谷川マイベスト10関連の題材採取で山口後河原郵便局でロケに随伴し終了した直後だった。このとき単独指名だったことを理解できておらず、帰宅後局長に桃山中学校からの講話依頼が来ていないか確認する状態だった。

後日改めて電話し、概要を理解した上で直接桃山中学校へ出向いて詳しい話を伺った。2年生を対象に40分の郷土に関する講話を行って欲しいとのことで、2月末に桃山の地名由来について話したものに肉付けしてシナリオを作成しますと答えた。
写真は受け取った地域学習についての概要。


2月末の実施時は学校側がノートPCとプロジェクターなどを用意して頂けたので、今回も同様のスタイルでデータを作成してメモリスティックに保存して持参することにした。
【 シナリオの作成について 】
どんな内容で何を話したいかは完全に任されていたが、課外活動ではなく正規のカリキュラムであることを念頭におく必要がある。求められているコンセプトの講話を提供できなければならない。
地域学習についての依頼書でも「校区の歴史や文化に触れることで生徒たちが歴史や文化に興味を持ちふるさとの良さを再発見できる」ことが期待されていた。


そこで新川地区にある重要な郷土資産の紹介を元に、2月末実施した桃山の地名についての由来を話し、最後に今後必要な取り組みで結ぶスタイルを考えた。これはまさに新川地区島の旧市立図書館利活用問題と、松巌園に向かう渡邊祐策による石畳道の保存問題に目を向けてもらうことを意図していた。

シナリオの作成は、山口市湯田自動車学校で実施したときからプレゼンソフトを使わず必要な写真やキャプチャ画像を順番に表示させるスタイルで定着している。プロジェクターで表示させたとき文字が小さくて読めないのはダメなプレゼンの代表格なので、特に訴えたいフレーズなどは大きな文字で作成し、地図などの客観資料で該当部分を示すために全体像と核心部分を拡大した画像を用意した。

28分の1テレビで宇部マニアックス・マイベスト10を収録するとき、かなり駆け足で話したものの時間が足りなかった。このことより40分の講話で時間が余って困る事態はまず生じないと思った。一通りのシナリオデータが出揃った後、流れを把握するためにノートにシナリオを手書きしている。


逸脱したり重要なことを話しそびれる事態を防ぐために、講話ではノートに即して話す積もりだった。しかし後述するようにこの目的ではノートが殆ど役に立たなかった。
《 当日の状況 》
時間に余裕をもって午前8時半に桃山中学校へ到着した。シナリオデータの入ったメモリスティック1本で充分だったが、次に表示する画像が確認できた方がやりやすいので自前のノートPCも持参した。最初に校長室へ通され、しばし歓談し時間が近づいて担当の先生に体育館へ案内された。

体育館のステージ上には既に機器がセットされていて、ノートPCにメモリスティックを挿して画像ビューワを起動した。
その後投影画像が明瞭に見える角度にプロジェクターの位置合わせをするだけだった。


自前のノートPCも起動し、逐次表示させる画像の順番が分かるようにサムネイル表示させている。


準備が整った後で、最初に講話を聴くグループの生徒たちが体育館に入場した。
担当教諭が整列させ着座させた。写真は講話開始前の撮影。


5月度のサンデーうべのコラムで講話の実施状況の写真を載せたいと思っていたので、始まる前に私のカメラを先生方に渡してコラム掲載に問題ないアングルでの撮影をお願いした。
したがって講話の実施中に私が撮った写真はない
【 講話の流れについて 】
40分間の講話の流れと時間配分は、以下を予定していた。
自己紹介3分
第1幕多分知ってる新川地区のお宝15分
第2幕桃山という地名の由来は?10分
第3幕あなたの知らない(かも知れない?)桃山中学校周辺4分
第4幕今後必要とされる取り組み6分
質疑応答2分
講話に使用した写真、キャプチャ画像、テキストデータなどは以下の通りである。
全部を載せきれないので大まかなファイル構成のみ提示する。


最初と最後だけ生徒も私も起立したが、講話の間は着座してマイクを持って話した。後述するように全体的に40分枠を越えて話してしまったため、最後の質疑応答はされていない。もっとも当初から時間オーバーすることが予想されていたので、もし予想外に早く話し終わってしまったときの予備の時間として充当していた。

講話実施中に先生方が撮影して下さった画像から2枚載せる。



生徒へ行ったアクションとしては、例えば渡邊祐策翁について知っているか挙手を求めている。私自身の講話中のアクションは、スクリーンの画面確認とノートPCのキー操作程度で、殆ど生徒の方を向いたまま話した。次の画像を確認するためにステージの上に置いていた私のノートPCや、事前に流れを手書きしたノートはまったく視線を落とさなかった。[2]
【 A・Bグループでの若干の差違について 】
前述のように、2年生をA・Bグループに分けてAグループが宗隣寺へ行っている間にBグループが聴講し、終了後Bグループが宗隣寺へ向かう間にAグループが戻ってきたのに合わせて講話を始めるスタイルだった。このため双方のグループが移動している間約1時間の余裕があった。この間に最初の講話を実施しているとき生じた不具合や機器追加など以下の修正を行った。
・表示させる画像順序の乱れと表示の不具合(縦に表示される)の修正。
・スクリーンの細部に視線誘導させるためのレーザポインタの追加。
Bグループの講話は、生徒が集合し準備が整ったので予定より5分程度早く始めた。終了は予定時刻より2分オーバーした。

Aグループが宗隣寺から戻る前より雨が降り始めたため、講話の開始時間が予定より後ろへずれ込んだ。講話の終了は予定時刻より7分オーバーしたので、両方とも概ね45分程度を使って話している。
【 講話の終了後について 】
2月末の郷土授業のときと同様に、代表生徒が前に出てお礼の言葉を述べた。話す内容をメモした紙を見ながら話していたが、それでも中学2年生なら緊張するのは当然だろう。その後担当教諭からもお礼の言葉があり、講話終了後の午後の学習タイムでレポートを作成することになっていて後日感想を提出させますということだった。

この日はすぐ次に午後2時から古書調査の立ち会い予定が入っていたため、片付けをしてすぐに一旦帰宅した。すべての用事を済ませた後、講話の様子を撮影した画像をPCに取り込み、作成中だった今月号のサンデーうべのコラムの画像に追加した。一部を講話内容に即したものに編集し19日に(株)宇部日報社へ提出している。コラムは翌週にアクセプトされて Vol.84「桃山という地名の由来」として配信された。
《 講演後の状況 》
最初に先生方からアドバイスされていたように、生徒たちは講話の中の重要と思った部分をファイルに書き留めていた。しかし桃山の地名の由来についての部分は中学2年生には難し過ぎたかも知れない。情報量があまりにも多くて何処を書き留めれば良いか分からなかった生徒が恐らく多かった。

同日の午後は自由学習で、座禅体験と講話の感想レポートを提出する時間に充てられている。生徒の感想をまとめたレビューは、画像化処理されたものがメールで送られてきた。
【 生徒の感想レポート 】
以下に感想レポートを載せる。送付されたデータは6人分で、組・出席番号・名前は非表示化処理している。なお、それぞれのレポートは当該感想を書いた生徒に帰属する著作物である。


説明の中にある「何処にでもある自治体の一つにならないように」というのは、私なりの勝手呼称で表現すればコンビニ自治体のことを指している。個人商店がなくなり、小売の大手企業に次々と置き換わることで少なくとも生活圏においては既にコンビニ化している。利便性を追求しつつも何処かで歯止めを掛けなければ、宇部の街らしき要素が最終的に無くなってしまうのではという懸念を共有して欲しい。

他5人の生徒のレビューは以下の通り。
タイトル:今後必要になってくること
説明:桃山・新川・小羽山地区には、沢山のお宝と言えるものがあります。ですが、最近では古いものを壊したり新しいものに造りかえたりする傾向があると思います。つまり、いずれお宝と言えるものも壊されたり造りかえられたりする可能性があります。なので、こういうお宝を守るため、沢山のお宝に関する知識を取り入れ、後世に受け継いでいきたいと思います。その他にも、全国同じような地域にするのではなく、桃山だけの良さを活かした地域にしたり、渡邊祐策さんがしていたように、未来のために一生懸命頑張ったり、しっかり後世につないでお宝などを残し続けたり(守り続けたり)して、よりよい地域にしていきたいと思いました。


新川地区には殊の外登録有形文化財が多い。それは国によって史跡としての価値の高さが認められたものであるため、簡単に改変されたり消えたりする心配はまずない。しかしいくらそこに在り続けてもどういう背景があり、どういう意味で重要なのかが理解されていなければ誰かに伝えることは不可能だろう。同じ新川地区で育つ身にとっては、尋ねられたとき自信をもって答えられることは自慢するに足りることである。
タイトル:何でも壊せば良いのか?
説明:今日聞いた話の中で歴史的な建物が新川地区にはたくさんあることを知りました。山本さんがおっしゃられた「今あるものを最大限に活用すればよいのではないか」という言葉を聞いて自分も深く考えなければいけないと感じました。新しいものばかり重要視するのではなく、大切に受け継がれてきたものを後世に伝えることも、今求められていることだと感じました。


「今あるものを最大限に活用する」という概念は、史跡に限らずおよそあらゆる対象に通用する。自分に何ができるか、何が得意か、どのように歩んでいきたいかを考えるのに「今在る自分を最大限活かす」のが早道だ。他の人の言葉ではしばしば「置かれた場所で咲け」とも表現される。宇部が一見何もないように思える寒村ながら、著しい不利な立場や立地から発展することができたのは福原時代からずっと受け継がれてきた同種の概念からである。
タイトル:まちをつくった渡邊祐策さん
説明:渡邊祐策さんは、今を生きている私達のことまでを見て、この町をつくってくれた素晴らしい人だということが分かりました。炭鉱事業で得た収入を祐策さんは、鉄道、道路、上水路などの社会基盤整備に使いました。普通の人だったら、自分が頑張って得た収入を自分のためにつかうはずなのに、この場所で得たものはこの場所に返すべきと祐策さんは考えました。祐策さんを含め、沢山の人達が今を作ってくれました。私もこの町の素晴らしさを後世に語り継ぎ、より輝かしい町にしたいと思いました。


現代では、起業して非常に大きな収益をあげたとき、それを顕著な形で社会還元する方策が見えづらくなってきている。継続的に寄付されている方は確かに存在する。他方で渡邊祐策の時代でも炭鉱で収益をあげながらある程度自分の屋敷などにお金を注ぎ込んだ人も存在する。ただ、祐策の時代は恐らく現代よりはるかに「狭い世界」で生きていたから、庶民も祐策の背中を見て後に続いたことは確かである。
タイトル:今後必要とされる取り組み
説明:昔からあるものをそう簡単にこわしてもいいのか。そう言われたとき、なにが正解かわからなかった。昔のものは残しておきたいけど、不便だったら意味がない。そう思っていたら、山本さんは、残すのなら、きちんとした形にして、使えるようにすればいいと言っていた。山本さんは宇部市、新川地区をすごく大切にしていたから、その思いをみんなで継ぎたいと思った。


廃止か存続かの議論は、対立が起きやすい困難な課題である。古いものは何でも残し続ければいつまでも想い出に浸れる半面、建物などでは不便や危険を伴う。取り壊して新しくしたいけど古い状態で残すという一見相反する課題を解決する手立ての一つが、映像化記録である。幸い、デジタルデータでの保存は昔に比べて遙かに容易かつ低コストで実現可能である。無くなってしまうことが判明し嘆き悲しむよりは、映像化記録を残して欲しい。そのデータがあれば、昔がどうだったかを呼び起こすスイッチとして機能するからである。

タイトル:必要とされる取り組み
説明:世の中に新しいもの、便利なものが増えて古い物がどんどん無くなってきて、昔の物に関心がない人も多い中、そのまま古い物が、歴史のあるものがなくなってなくなって新しいものが増えるだけがハッピーなのか。そうではなく、今あるものを最大限いかそうという考え方がとてもすごい、良い考え方だと思った。自分達の住んでいる所でさえ何も知らないというようなことがないよう、もっと地域について関心をもとうと思った。


講演で「古い物を何でも壊して新しくすることでヒトはハッピーになれるのだろうか?」と述べている。これは中学生向けに平易な言葉で伝えたかったことと、小羽山小を代表するキャラクタであるおばピー(小羽山+ハッピーの略)を意図して表現している。「自分が住んでいる地区についてよく知らないのに地区の外どころか市外県外の誰かが自分よりも詳しく知っているなんて悔しくて到底容認できない」ことにつながる。適切な客観資料を参照できるなら自分が生まれる前のことはもちろん、当該地区に住む長老よりも更に詳しいことを知っている自分に変わることは可能なのである。
先行してホームページのトップに掲載した郷土学習の報告。
お知らせの履歴: 再び桃山中学校の郷土学習に参画しました。
出典および編集追記:

1. 講話が始まる前に私のカメラを渡して撮影して頂いている。なお、私自身が撮影した桃山中学校の生徒が写り込んでいる画像についてっは、コラム掲載レベルで問題がないことを校長先生に確認頂いている。

2.「FBページ|2023/5/18のタイムライン

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