宇部丸山ダム・取水口【3】

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現地踏査日:2012/10/8
記事公開日:2012/11/11
(「宇部丸山ダム・取水口【2】」の続き)

時系列としては丸山ダム管理道を周回し終えた後のことになる。

10月上旬、私は久し振りにハイブリッド方式で丸山ダムを訪れ、駐車場で自転車を降ろして管理道周回を実行した。
再び駐車場に戻ってきたのが午後3時半過ぎで写真撮影可能な時間を暫く残していたので、初回は通り過ぎた取水塔を再度訪れてみることにした。前回踏査時より更に水位が下がっていることが分かっていたからだ。

自転車を留め置いた場所、入り江に降りた地点は前回と全く同じなので省略する。
これが10月上旬時点での映像だ。


前回よりどれほど水位が下がっているかは、この入り江を降りて右側に見えるダム堰堤が良い基準になる。


前回は余水吐部分を支える橋脚部のちょうど下端に水位があった。今はそれより更に1m以上は低くなっている。本当にまとまった雨に恵まれず、小野湖と共に貯水率は低下の一途を辿っていた。

そして取水塔の映像だ。
桟橋の橋脚下部が完全に陸上へ現れている。前回は浸かっていて接近できなかった。


前回、この付近の汀が急に深くなっているようで恐怖を覚えたと報告した。
実際その通りで、現在水が岸辺を洗っている付近から傾斜がきつくなっていた。


ボートの係留されている橋脚は足元まで干上がっている。
その下をくぐって反対側まで歩いて行けそうだ。


前回踏査時と変わりようもない取水塔を訪れ、追加記事を作成したのは桟橋の反対側に移動することができたからだ。
そこには異なるアングルからの取水塔の眺めと、若干の新しい発見があった。

充分に水位が下がっているせいで、砂礫混じりの斜面を歩くのにそれほど困難はなかった。


この周辺も完全に伐採を終えてから湛水したわけではないらしく、根の残ったままの枯れ木が観察された。
しかし絶対数は先に訪れた廃塔付近の入り江よりはずっと少ない。


この場所から振り返ることで取水塔の反対側からの近接映像を得ることができた。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


すぐ目に着くのは、西側の外壁に貼り付く奇妙なパイプだ。存在自体は以前から分かっていたが、これほど近くで眺めるのは初めてである。

このパイプが何のためのものであるかは大体想像がつく。恐らく取水塔から無圧隧道に流れ込むダム湖の水の圧力調整用だろう。通常の空調向けなら「灰色の豆腐」本体に換気扇や排気ダクトを設置する。このパイプは豆腐(?)からではなく建屋を支える太い円筒柱から突き出ている。


しかしどうしてこんな奇妙な形状に設置されているのかは分からない。先端が下向きなのは雨水侵入防止のためだろうが、それなら単純に円筒柱部分から水平に伸ばして下を向けるだろう。何故かパイプは煙突の如く一旦上向きに立ち上がり、そこから下向きに曲げてある。何の理由があるのだろうか…
今なお見当もつかない

遠目にもパイプは酷く錆び付いているのが分かる。あんな場所に設置されていれば交換不可能だ。今なら後々のメンテナンスを考えた資材や構造にするだろうが…昭和50年代当時はそこまで考えなかったのだろうか。

何処までも辿ればきりがないのだが、興味深いものが見えているので先に向かった。


灰色をしたフリスビーのお化けのような円盤がダム湖入り江の中央に浮かんでいる。その横には制御装置らしいものも付属していた。
数十分前に訪れた廃塔が見えている


どうやらこれが水質浄化装置らしい。ダム堰堤近くの看板にも同じものが記載されていた。
この近くでは不定期に突然湖水がワッと沸き上がって水の音を立てていた。


この岬から取水塔を含めて周囲をパノラマ動画撮影した。

[再生時間: 22秒]


撮影途中で急にカメラを動かすスピードが速くなっているが、水質浄化装置が動作して水面に変化が現れた様子を撮影しようとしたからである。

暫く待機し、水質浄化装置がダム湖の水を噴き上げる瞬間を動画撮影した。

[再生時間: 10秒]


この動力として太陽光発電パネルの電源が補助的に使われている。

少しずつ周囲が暗くなり始めていた。遠方をズーム撮影してもピントが甘くなって鮮明な映像にならない。そこで水質浄化装置の見えるこの岬部分で引き返した。

岬を少し戻ったところに、来るときは気付かなかったものが汀付近で水没しているのを見つけた。
読者はこの写真からただちに見つけることができただろうか…


これである。
陸上から観察する限りでは幅1m、高さ50cm、長さ2m程度の直方体をしたコンクリート塊で、端に金具が埋め込まれている。コンクリートの外観からして割と新しいもののようだ。


こんなものがダム湖へ無造作に捨て置かれているとは思えない。それも古い資材ならまだしも、角を面取りされているコンクリート部材なら時代はかなり新しい。ダム工事に関して置き去りにされたか、湛水後何かの事情でうっかり部材を落下させてしまい回収しきれなかったのだろうか…
もう少し水位が低ければ正体を見極められたかも知れないが、これ以上は接近できなかった。

現地ではこのコンクリート塊を捨て置かれたものと考えていたが、この記事を書いている現在では意味あってここに置かれているものと考え直している。即ちこれは取水塔および太陽発電パネル付近に見える網場を固定するためのアンカーではないだろうか。よく見ると部材の脇にロープらしきものが見える。取り付けられた金具もロープを通すためのものと考えられるからだ。
しかしアンカーを水面下に配置すれば網場を交換するとき困難なのは常盤池の水没鉄筋と同じ

取水塔の桟橋の下まで戻った。まだこの橋脚付近を撮影していなかった。


水位が極度に低下し、昇降用の梯子の一番下まで空中に現れている。これに伴いボートに乗り移るための艀もダム湖側に後退していた。


梯子を真下から撮影している。
これは桟橋手前の立入禁止フェンス門扉の内側に接続されており、今なら梯子を昇るだけで取水塔の前まで到達できてしまうことになる。


もっともそんな冒険心というか無謀なことはしない。上がったところで取水塔の中が観られるわけではないし、それでなくてもこの場所はとても目立つ。若い衆がヤンチャして登っているならまだしも、いい歳こいた私がこんなとこで目立ちたくない…^^;

雨ざらしの薄汚れたボートの側面には掠れたペイント文字が見受けられた。
「丸山」の文字が見える…もしかして「丸山丸」だとか…^^;


桟橋の真下から撮影。
太陽発電パネルからの給電線と網場が見えている。


灰色の豆腐を支える異様に太い円筒柱。
内部にゲート昇降用の設備が格納されているのだろうか…


そろそろ戻ろう。日が傾き明るさが不足するせいで、近くを写しても鮮明な映像が得づらくなってきた。
この位でいいだろう…


奇妙な模様を描いている粘土の表面。
部分的に色の異なる粘土で構成されている。ところどころ微細な穴が空いているのも常盤池の陸繋島で見たものと同様だ。


前回と同じコンクリート護岸を強引に登り管理道に出てきた。
そこから丸山神社の方へ歩き、自転車を留め置いた場所まで戻ってきた。


この日の踏査をすべて終え、自転車に乗って駐車場まで引き返した。

ダム湖や溜め池は水位が最上位なら眺めとして楽しめるし、最低水位なら普段は目に着かない部分を観察できる。極大・極小を追う原理からいけば、更に水位が下がるなら改めて訪れることもあるだろう。
記事を書いている現時点の丸山ダムの貯水率は50%とされている。しかし昨晩は継続的に結構な雨が降ったし、週明けからも雨が多い予報となっている。低水位限定の瞬モノ踏査もそろそろお仕舞いになるかも知れない。

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