佐波川ダム・平成26年度見学会【1】

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現地踏査日:2014/7/23
記事公開日:2014/8/5
今年も「森と湖に親しむ旬間」を迎えたものの、県西部殆どのダムを見学し尽くしているのと市内ネタに特化して記事書きする方向性故に、ダム見学会への熱が些か薄らいできていた。以前なら県内の見学可能ダム制覇を第一目標に掲げ、残された県東部の遠いダムへ遠征していたところだ。
今年度のスケジュール表を見るだけでは今ひとつ計画を立てづらくても、過去に訪れたダムの写真を見るのはテンションを変える特効薬だ。旬間に入り、そう言えば見学会に行ったきりで記事化していないものが相当溜まっており、旬間の期間だけでも少し地元ネタを離れて記事を書こうか…と佐波川ダム・フォルダに保存済みの写真を見て感じたのだった。
もう一度、行ってみたい。
ダム監査廊の特異性、左岸側の素堀りっぽいトンネル、崖にそそり立つ六角柱の取水塔…それらは平成23年度見学会レポートとして(限定公開記事を含めて)既に執筆し終えている。
この7月中旬、旬間の始まる直前になって永年使い慣れていたデジタルカメラが遂に動かなくなるアクシデントに見舞われた。上位互換のカメラを購入したので、以前を上回る写真を撮りたいと思った。新しいカメラがどの程度忠実な映像を保持してくれるか…佐波川ダム見学会はその最初の実験場となった。

初回訪問時は防府市まで出て佐波川沿いに県道184号・国道489号を経由して佐波川ダムに向かった。しかし今回は山口宇部道路を介して仁保へ出て県道123号の野谷峠越えルートを選んだ。総括記事でも書いている通り、今回のルートの方がずっと近いし時間も短縮されることが分かった。

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時系列ではすぐ近くにある佐波川発電所で水圧鉄管を撮影し、佐波川関水で追加の写真を数枚撮った後のこととなる。そこから佐波川沿いに遡行した先にあるダム管理事務所近くの駐車場に車を停めた。そして前回同様、すぐに見学会へ参加するのではなく先に写しておきたい場所を一通り巡ることにした。
時刻は正午過ぎ。深山らしくミンミンゼミが鳴いている。しかし日差しはきつくかなり暑い。

まずは望むアングルが得られるまでダム管理事務所から離れるように今来た道を下った。
周囲の雑木が伸びすぎて堰堤全体が完全には現れない。しかしこのアングルなら対象となるものは一通り入っている。


初回訪問時にもすぐに見つけたポツンと離れたところにある謎の扉。
まずは新しいデジカメのズーム機能のお手並み拝借だ。


対岸から撮影しても光学ズームだけで扉のノブ部分まで分かる。
あまり鮮明には写らないのは扉自体が日陰にあって光量不足なためでこれは仕方がないだろう。


ダム堰堤から異様に離れたところにある。この場所は管理区域内なので見学会のとき以外は部外者は扉の内側の世界を知ることはもちろん、扉の前へ行くことすらできない。詳細はネタバレになってしまうから省略するとして、ここではダム監査廊から続いているとだけ言っておこう。

同じく前回もズーム撮影したゲート部分と工事用トンネルみたいに見える入口。


ゲートは西日を浴びているので光量が足りていてこの程度の距離なら軽いズームで充分明瞭に撮影できる。
ラジアルゲートを固定するコンクリート部分は後から打ち継ぎ足したのでは…


取水塔と四角い断面のトンネル、そして網目模様の垂直壁だ。
あのトンネルは管理区域ではなく誰でも自由に接近できる場所なのだった。


ダム堰堤部分だけが入るように撮影。


さて、堰堤の方に向かう。
停まっているのは見学者の車ではなくダム管理事務所に詰めている職員の車のようだ。
この後でトンネル付近を撮影しているとき職員が車で走り去るのを見た


初回見学時の写真撮影状況を覚えているわけでもないが、できるだけ重ならないように撮影しようと思った。
この四角いコンクリート平屋は非常用電源室である。
電源断時には石油由来の燃料で動かすために一定量を貯蔵しているので火気厳禁の札が貼られている


電気室の横にトイレがあって数台車を停めるスペースが設置されている。
トイレの壁に大原湖のハイキングコース地図が貼られていた。


トイレの反対側の崖には工事殉職者の慰霊碑が設置されている。


殉職者は5名でいずれも年齢は極めて若い。プライベートなものなので銘板のズーム撮影は避けて…
左側の銘板を撮影。名称が佐波川堰堤となっていてダムの諸元が記載されていた。


ダム管理事務所を前にして堰堤への道は直角に折れる。
事務所の建屋自体は狭い場所に建っているので格納庫のような駐車スペースしかない。


事務所前から堰堤を撮影。
ここに初回訪問時には気付かなかったものを見つけた。


堰堤の袖壁部分に銘板が3枚埋め込まれている。


初回訪問時に気付かなかったのは、この場所に職員の車が停まっていてカメラを向けていなかったからだった。ブロンズプレートはそれぞれ佐波川堰堤昭和三十年九月完成大林組施工という文字が入っていた。
写真が多くなり過ぎるので埋め込み方式ではなくリンク方式で掲載した

堰堤前面の形状には部分的なカーブを含んでいる。
現在では重力式擁壁のような平面的な構造をもつのが普通で、このタイプの堰堤は昭和後期以降殆どみられなくなった。[1]
施工時の工程簡素化のためと思われる


ダム管理事務所の扉は開放されていたが近くに職員の姿はなく呼び止められることはなかった。
見学会に入るのはもう少し先だ…前回同様、まずは管理区域外のいつでも立ち入れる部分を撮影しておきたい。特に取水塔や素堀りトンネルは前回以上のデータを採取したかった。
このため見学会記事と言っても最初の数巻は殆ど見学会とは無縁だ…^^;

ダム裏側。
水位は初回訪問時と同じくらいだろうか。


ゲート室は撮影していたが側面にあるこのプレートは撮っていなかったと思う。
佐波川ダム管理橋という橋名をもらっている。2003年だからかなり新しい。


さて、ダム見学会からはどんどん離れていくが…この先にあるものは丁寧に撮影しておきたい。
何度見ても素晴らしい。もの凄く野性味のある眺めだ。


特に取水塔の近くは元からの山肌をわざわざ垂直に削り、一面にコンクリート枠を造って勝手呼称「サッポロポテトバーベQ味模様的垂直壁(何)」を施工している。急な斜面からポロポロと落石が続いて取水口付近が埋められるのを避けるためだろうか。

トンネル上の土被りは目測で20m以上。金網で覆われていて見づらいが、側面部分は自然の樹木も取り付くことを拒絶されている。およそ土砂が見当たらず全部が一枚岩ではないだろうかと思えるほど嶮岨だ。


さて、じっくりと堪能しようかな…

ダム見学会に先立って一足早く監査廊よりもずっと大きいサイズの涼しい空間へ踏み込んでいった。

(「佐波川ダム・平成26年度見学会【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 初期の重力式ダムでは前面がスキージャンプ台のような流線形を持ち、叩きコンクリート部分に水を滑らせる減勢構造(厚東川ダムなど)が主流だった。その後断面が三角形状となるように前面を直線的に造り、副ダムを設置して常時一定量の水を留置し、落下する水の勢いを溜まり水で受けさせる方式が主流となっている。

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