市道藤曲門前線【1】

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現地踏査日:2013/11/12
記事公開日:2013/11/18
市道リスト一覧では、本路線の市道藤曲門前線についてこのように書いていた。
正確に辿るのが極めて困難な市道。
一般に市道の正確なトレースを試みるときの困難性は、現地の状況によるものが大きい。経路は分かっているものの藪が酷いとか道が荒れていて進攻しづらいという物理的困難だ。
ところが本路線ではそれ以前の段階からの困難を抱えていた。現地へ赴く以前に、地図上でどういう経路を取っているのか分析する段階からして大変難しい。

市道の経路は、道路河川管理課の地図を閲覧することで確認している。道路河川管理課ではゼンリン©の宇部東部・西部地図にピンク色の蛍光ペンで市道の経路を書き込んでいる。ご存じのように、ゼンリンの地図は一定区画にメッシュを切って表示されている。東西南北の移動は端に表示されているページ数を参考に行うので、広範囲を参照する場合は路線に付与された番号を頼りにページ繰りして追跡することになる。

地図上での本路線の経路は、明らかに「迷走」している。藤曲門前線という路線名の通り、藤曲から字門前に到達している。それは確かなのだが、何故か最短距離を移動していない。最初のうちは四輪も問題なく通れる道でありながら次第に山の中へ向かい、いつの間にか未舗装路となる。そして一旦は馴染みの場所へ近づいていながら再度山の中へ迷い込む。そこからが特に困難な区間だ。
地図で見る限りあぜ道、山道、尾根の縦走…と山の中を彷徨い進む。その区間ではピンク色の実線も細く、獣道の上を辿っているようだ。そして山を下りてきて再び舗装路になり、最終的には県道琴芝際波線の中山観音付近に出てくるのである。

本路線の経路をできる限り正確にメモするためには、数度の閲覧を要した。どこそこで左に曲がって…などの分岐路がいくつもあるものの、その近辺に目標物がない。細かな山道までかなり精確に表記しているYahoo!地図ですら道の表示がなく、ゼンリンでも細い実線で山道らしき表示になっているだけだ。本路線はその上をピンク色でなぞっていたのだった。[1]
実地で辿る以前に、地図上でも正確に辿れているか自信が持てない。一体全体どうしてそのような路線指定になったのかは考えどころとして、準備を整えた上で臨まないと道を失って山の中を彷徨ってしまうだろうと思った。

地図上のトレースから難航した位だから、たった一度の試行で無事終点ゴールイン…と成る筈もない。そのため起点から暫くの間続く「容易な区間」は、本格的トレースを開始するよりずっと前に試行していた。藪漕ぎが可能になり始める11月に入り、このたび初めて「困難な区間」への最初の調査を行い、本路線の素顔が少しずつ見え始めた。聞き取りによる情報から確かに門前へ向かう重要な古道の一つということも判明し、記事化するに至った。
ただし結論から先に言って、この記事を書き始める現時点でもなお完全なトレースは出来ていない。本路線が何処を通っているか分からない区間を1km以上も残したままである。
このため起点から現時点でトレースを遂行できている区間についてお伝えする。起点から順を追ってお伝えできるか分からず、進展がなければ判明している終点側からを先行して記事化するかも知れない。残された困難な区間にどう取り組むか次の作戦は一応考えてある。その部分は連載の途中で保留状態になる可能性があることを予告しておこう。

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本路線の起点に来ている。
藤曲の中でも割とこの場所は知られているのではないだろうか。
景色が殆ど変わらないので写真は天気の良かった日の映像を一部利用している


この場所の地図である。現在、ポイントしている場所にいる。


ポイントしている場所は市道藤曲2号線の途中である。高校時代の3年間、この狭い道の一部を自転車で通ったので相応に馴染みのある道だ。
市道藤曲門前線はこのポイント地点から北東に向かう路線で、当時の自宅とも学校にも無縁の方向だから、高校生時代は一度も通ったことがなかった。この先にある栄ヶ迫溜め池を訪れた数年前に通ったのが初めてである。

さて、今回の第一編ではその栄ヶ迫溜め池付近までの区間を収録することになるだろう。栄ヶ迫溜め池は地図の北側に見える3連続の池で、三段池として知られる。本路線は、中堤と下堤の間の堰堤上を通っている。
ここまで書けば初っ端の第一編は迷う要素がないと楽観するかも知れない。しかしこの時点でさえ本路線のトレースは決して自明なものではない。原理的に正しい路線をトレースできる確率は25%である。そして常識的な道なりに辿ろうとすれば、その確率は更に低くなるだろう。

道幅は1.4車線幅程度。普通車でも徐行を前提にすれ違い可能である。交通量はゼロではないが、撮影タイミングに困るほどではなかった。


やがて右側にごつい門型鉄塔のようなものが見え始める。藤曲変電所で、宇部変電所から更に降圧して家庭向け電力を供給している。


まだ詳細な写真を撮っていないので、記事向けリンクテキストのみ配置しておこう。記事が仕上がり次第リンクをアクティブにする。
派生記事: 藤山変電所
変電所の前で左へ直角に折れる道がある。市道上条線で、方向が完全に違うからさすがにこれを本路線と見誤ることはないだろう。

最初のミストレース・トラップ候補は、緩やかな左カーブを過ぎた先にあった。



この分岐点である。
右、左、どっち?


今までの道の流れで行けば、当然ながら右が本線のように思われる。左側の分岐路は如何にも狭く、そもそも認定市道であるかどうかも疑わしい。地元管理の道か、あるいは民家の庭で行き止まりになるような道に思える。
このようなとき常にすることだが、有効な判定方法がある。

この狭い分岐路に入る車が利用するカーブミラーだ。支柱に宇部市のステッカーが貼られている。
このことから右への狭い分岐路が少なくとも認定市道ということが言えるのだ。地元管理の道であれば「地元管理」などという文言のステッカーになっている。
ミラーの立つ場所の道ではなくミラーを利用する道と覚えておけば良い


ただ、市道と言っても別の路線かも知れない。しかし今回は大方の予想を裏切るいつもの通りで、本路線は左への分岐が正解だ。
如何にも本線のように見える右の分岐は市道上条2号線で、ここが起点となっている。常識的に考えれば、道なりに右へ進んでしまうだろう。
実際最初のトレースではこの分岐に気付くことすら出来ずに右側を進んで写真を撮っていた
派生記事: 市道上条2号線
…ということで、ここは左の狭い方の道を選択。
道幅は1.2車線相当になり、普通車は広い場所を見つけながらの離合になる。また、若干の登り坂になっている。


狭い路線の途中に枝道がいくつも出てくる。
しかしそのいずれもが市道ではない。本線の登り勾配は一定で進んでいるからそう迷うこともなかった。


右側に並ぶ住宅群を抜けると、視界が広がり畑が目立つようになる。
本路線は更に丘を登り、右側から来る道と交わる形になる。


およそ想像できるように、この右側からやって来る道は先に「本路線ではない」と判断した右への分岐の道と繋がっている。のみならず幅が広いのでこの先へ向かおうとする車は迷わず本路線を避けて先の分岐で右を迂回する道を通行している。だからと言って右からの道は先ほどの市道上条2号線ではなく、市道藤曲上条線という別路線になるのだからややこしい。

藤曲地区の一つの特色として狭く入り組んだ道が多く、その多くが認定市道となっている。認定時期も異なるからか整理番号が離れていたり接続箇所が奇妙な切り分けになっていたりで、路線ごとの分類や正確なトレースが難しい原因になっている。市道上条金山線のような幹線を形成している道路は別として、狭いながら山を越えて遠くまで至る藤曲発の市道は今辿っている本路線しかない。

したがってここは本路線のトレース目的なら直進である。
右から来た市道藤曲上条線の交通量を引き継いで再び道路幅は広さを取り戻す。


さて、ここにまた次の課題がある。

大きな墓石らしきものがある十字路から左へ曲がる道がある。
こっちへ進んでは栄ヶ迫溜め池に向かわないから本路線ではない。
恐らく認定市道ではなく地元管理の道…複雑過ぎてこの近辺はまだ分類が不十分だ


次に迷う候補は、左側の直線的で広い道と、右側のそれよりは少し狭く曲がりつつ登る道である。車なら幅の広い直進を選びたいところだが、本路線を精確にトレースするならば、
右、左、どっち?


まあ、先ほどの狭い方を選択した本路線の素性からすれば見つけやすいと思われるが…
右側の分岐が本路線である。


本路線の方が直進よりやや幅が狭い。しかし先の分岐もそうだったように、狭くて古い道の方が正しい本路線トレースになることが多いということが言えそうだ。
それほど古くからの道という見方もできる

市道は緩やかに登り坂を進み、右側に夥しい墓石が見え始める。


カーブミラーを過ぎると急に道幅が狭くなり最初の分岐でみたような離合もできない幅になる。
道が狭くなっているところに墓地の説明板が設置されている。


この辺りは了善河内という一風変わった地名の墓地だ。
こちらに派生記事を書いておいた。
派生記事: 了善河内墓地
この区間は軽四でも離合できない狭さだ。そのためか車はここを通らず専ら広い地区道の方を通っている。


緩やかな坂を真っ直ぐ登った先が小さな峠のようになっていて、その先に地区道との合流点がある。


この地区道区間も合わせて写真を撮っておいた。
派生記事: 緑ヶ丘付近の地区道
この合流点で市道は再び道幅を取り戻す。
藪に遮られて見えないが既にこの正面は栄ヶ迫溜め池の下堤になる。


通行車両が少ないせいか、随分と昔に舗装した路面が傷んだままになっている。
その先にはまたしても分岐路が…


さて、どっち?
…と尋ねるべきところだが、既に本編では栄ヶ迫溜め池に向かうと書いてしまったので、当然下の道だ。


右側の登っていく道は市道了善河内線で、別の場所に同じく登っていく道がある。最高地点でUターンしてここへ戻ってくる墓参道路線だ。
道中は窒素線以外特に観るべきものはない…走破しているが記事化はしないかもしてしまったw

さあ、栄ヶ迫溜め池が見えてきた。
ここまででも既に迷う場所がいくつかあった。この先はいよいよ本路線の”本領発揮”である。終点が門前だから地図でおよその行き先の見当はつくだろう。
しかし地図で読み取れるのは二次元で一部の情報だ。実際現地を訪れれば三次元の変化を体感できると共に、地図では見えない様々な変貌ぶりを味わえることになるのだった。

(「市道藤曲門前線【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 市道路河川管理課では、路線の記載されたゼンリン©地図のコピーやデジカメ撮影を認めていない。したがって経路を精確に記録するには地図を閲覧しつつ手帳などに手書きする以外ない。

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