市道浜中山線

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現地踏査日:2012/4/17
記事編集日:2014/5/27
市道浜中山(はま・なかやま)線は、浜と中山を連絡する市道である…

…と書いてしまえば全く身も蓋もない解説だ。そもそも説明になっていないどころか誤りですらある。

しかし説明不足には目を瞑って、取りあえずYahoo!地図でこの市道の起点をポイントするとこの場所になる。


上の地図でポイントされた地点は、この写真の真正面になる。
あくまでも起点が真正面に見える位置というだけであって、現在立っている道自体はこれから話題にする市道ではない。


撮影地点は市道下条浜通り線という別の道である。その市道は小串北向地蔵のある中途半端な分岐点から西へ進み、現在撮影している場所を通って浜バイパス(市道北琴芝鍋倉町線)が終点となっている。

振り返って撮影。
信号から向こうは市道浜通り線で、左右に横切る高規格な道が浜バイパスである。


浜バイパスは一期工事でこの交差点まで整備された。即ち藤山交差点から来た車は、平成時代初期までこの場所で浜通りに右折するか下条浜通り線へ左折する以外なかった…

…と、話し始めれば今から向かう市道から脱線してしまうので程ほどにしようと思うが…

脱線序でにもう一つ。
正面に見える大きな民家の裏手に興味深い送電鉄塔が見えている。
3年前に撮影した写真…現在も殆ど変わっていない


これは宇部興産(株)の窒素工場向け送電鉄塔で、厚東川ダム下に設置された厚東川発電所で造られた電力を独自に送っている。鉄塔の形態を見ると民家の中へ引き込まれているように見えるが、実際はここから地中化されているだけと思われる。[1]

さて、いい加減引っ張ったので本題に入ろうと思うのだが、実は本題に入るも何も、

辿りようがない…(>_<);
だって、道ないし…

こっちは市道下条浜通り線だから違う。


じゃあ、反対側の細い道は…
この先は(細々とした枝道部分も含めて市道浜線でやっぱり別の路線である。
末尾の写真2枚と併せて後日撮影してきた


あらかじめ仕入れた情報によれば、市道浜中山線はこの写真で左側にあるミラーのところにある細い路地を山の方へ進むようになっている。


そんなこと言われても、マトモな道なんてない…
本当言うと左に見えているミラーから奥へ向かう小道をちょっと探ってみたかった…しかし冒頭の写真でも分かるように塩梅悪く地元の方が入口付近に立っていらしてその後奥に入って行かれたので進攻しようがなかった

もっとも私はこの記事を書く以前から答を持っていた。即ち冒頭の説明に反して、この市道は浜と中山を連絡していないのである。そのことは市の道路河川管理課で閲覧した地図で確認済みだった。起点とされるこの場所から北へ向けて全く気まぐれにピンク色の破線が引かれていただけだった。いわゆる未成線とか計画線と呼ばれる認定市道なのである。

しかしだからと言ってこの市道が全く実態のない路線という訳ではない。歴とした終点を持ち、供用されている区間がある。いや、市内あちこちを走っているドライバーならきっと通ったことがあるに違いない位に分かりやすい区間だ。
終点の中山まで行ってみよう。


ここは何処か分かるだろうか?
中山のあたりを一度でも通ったことのある人なら見覚えがある交差点だろう。


整備された道は県道琴芝際波線で、かつて中山浄水場があった近くの交差点である。この県道に突き当たっている道が市道浜中山線で、県道との接続点が終点になっている。

では、途中は一体どうなっているのだろうか?
実は、なかなか奇妙なことになっているのだ。

この市道が初めて道路らしい実態を現す場所である。先の県道交差点からは200mくらい入った場所で、見覚えがある方も多いだろう。


この場所を地図でポイントしてみた。


県道から入ったとき、この道は地図でポイントされた場所でカキッと右に折れ、急に道幅が狭くなっている。そして殆どの車は右へ曲がっていく。


道としては幅員が異なるだけで繋がっている。しかしこれは市道上条金山線という違う路線で、地図でポイントされた場所が終点となっている。


県道から来て右折せず沢を真っ直ぐ伸びていく道も一応はある。先の方で細くなっているらしく、ミラーの柱に「この先700m通行止」という表示板が見えている。


この道も違う路線で、宇部変電所付近から山を越えてここに到達する市道崩金山線である。
車が通れないどころか人が歩いて通り抜けることすら困難な荒れ道

したがってこの場所は異なる2つの市道の終点となっているのに、市道浜中山線はいずれの市道とも重用していないという奇妙なことになっている。
実は、起点は先に訪れたあの場所にあって、

浜町1からこの場所までが未成区間
であり、市道浜中山線が実態を持つのはここから県道交差点までの200mだけなのである。
浜町からここまではかなり離れているし、間に峠越えを一つ挟んでいる。殆ど全線が未成あるいは計画段階とも言える状態なのだ。

そして供用されているこの区間も確かに幅は広い道だが、傍目にも完成された道ではなく中途半端で未整備な部分が目立つ。


例えばこの車道を分離するガードレール。
支柱が埋め込まれたタイプではなく、サイコロ状のコンクリートの重しがくっついた可動式のものになっている。道路線形が最終決定されていない場所によく見られるタイプだ。


道路自体も奇妙である。
現に車が往来しているより倍以上の幅が確保されていながら単管バリケードで仕切られていたり、横断歩道を真似たような線が直角にペイントされていたり、路肩が砂利敷のまま放置されていたり…


単管バリケードは間違いなく市の仮設物だ。


幅広ながら未整備状態の道が続き、県道の手前で別の道が流入する。市道藤曲中山線で、柚利野峠に起点がある。


県道手前にある最後のカーブ。
ここでも内側が現在の車道以上の幅が確保されながら放置されている。


県道を目前にして、なぜか市道は狭くなっている。
別の日に撮影された写真である


県道との交差点。ここが市道の終点である。かつて正面の空き地に中山浄水場関連の設備があった。
現在は広瀬浄水場に機能分散している


終点より振り返って撮影。何故か県道との取り付け部分は切土も行われず幅狭なままで、交差点を過ぎたところから幅が広がっている。
県道敷になるので協議なしに市が独自に着手できなかったのでは…


このように、供用されている区間を見る限りでは一般の市道にしては高規格を目指していたように思われる。しかし着手されたのは県道から僅か200mばかりで、その殆どが中途である。
そう頻繁に通る道ではないので詳細は不明だが、私が知る限りでは少なくとも5年以上前から今の状態だった。

市道の経路をYahoo!地図に上書きしている。
既に供用されている区間を除いて、未成区間は殆ど適当に描いている。[2]


市道路河川管理課の保有する地図では、起点の浜町一丁目から幅広の道が始まるA地点までの区間は破線で描かれていた。ルートは恐らく適当だろうが、蟻ヶ迫池の北側にある名前のない小さな溜め池を横切り、標高74.4m地点にある電波塔の西側を通過し、浄水場およびその進入路を避けて山裾を通る経路になっていた。
浄水場の北側には宇部変電所付近から山を越えて金山へ至る古い道(市道崩金山線)があるが、市道浜中山線はこの道とは全く一致せず独立経路となっていた。

終点付近に比較的幅の広い道が中途半端に造られている事実と地図中の経路から想像すれば、かつて浜と中山を上記の通りに結ぶそれなりの市道を造る計画があったのはほぼ確実ではなかろうか。市道崩金山線のような獣も迷うような古道や荒れ道の部類とは思えない。経路が全く地勢に反しているし、何よりも点線表記されていたからだ。

もっとも私はこの市道の計画を聞いたことはないし、純粋に道路河川管理課の地図を眺めて見つけたに過ぎない。ただ、浜と中山を連絡する県道レベルな規格の道を造るとするなら全く地元住民の意向などを考慮せず純粋に交通連絡網という次元で考えるなら悪い選択ではなかっただろう。現状で市街部と西宇部方面を結ぶ道はいくつかあるものの、幅員が狭かったり遠回りになったりでどれも第一選択とはなり得ない道ばかりだからだ。特に市道浜通り線は西本町から真っ直ぐ伸びているので、国道190号との連絡性も良い。もし市道浜中山線が供用されている規格の道として全通していたなら、県道琴芝際波線を通る車両の3〜4割程度はこの市道側に回るのではないかと思う。

路線の管理番号が800番台後半なので、昭和後期あたりに認定市道とされたのだろう。当時は未だバブル期であり、市や県も瀬戸原や岡の辻に企業団地を整備し、盛んに地元密着型の企業誘致を行っていた時代だった。
実際認定市道ながら企業の進入路のみ整備して他を未成区間のまま放置している事例もある

この市道が計画線のままになっている理由は様々に推測される。バブル後の財政引き締めにより本当に必要な路線のみの着手に限定されたか、用地買収の段階で頓挫したか…
不明なことだらけであるが、ただ一つ言えそうなことは、この先交通事情や宅地開発が如何に進もうとも一般車両の安心して通れる程度の高規格な道が全通することはまずあり得ないだろうという憶測である。市道計画全体の見直しがあった折りには、もしかすると認定市道という座も引きずり降ろされるのではないだろうか。

しかし坂がなく近くて広い安全な道があれば、確かにありがたい。市街地から宇部駅方面へ向かうとき、自転車使いの身としても「なるべく近く、なるべく高低差を避けて」通りたいと思う。
未成線の経路図を見れば、ここに道を造るなら起点から中山浄水場付近まではトンネルになるだろう。堀割だと切土量が半端なく多くなるし、縦断勾配がきつくなり過ぎて設計速度も低くなってしまう。

あるいは将来的に「浜中山道路」として有料化され、浜町1から延長が2km近い「浜中山トンネル」が掘られ、浄水場の敷地内を「金山高架橋」で渡ってあのカーブの部分に接続…なんて道になることがあるだろうかと勝手に想像を膨らませるのであった。

【路線データ】

名称市道浜中山線
路線番号898
起点市道下条浜通り線・左折点
終点県道342号・中山取水場前交差点
延長約200m(通行可能区間)
通行制限特になし。
備考未成線

延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください
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【追記】(2014/4/19)

起点から先に伸びている細い路地が気になって、浜町を訪れる用事のあった今日のこと偵察してきた。

この場所が市道浜中山線の物理的な起点である。


自転車を停め置いて先へ進んでみた。
車も入れないような細い里道が続き、そのうちの右側は山側へ伸びていた。


その先は民家へ続いているようなのでそれ以上追求しなかった。
現地には用地杭などはまったく見られなかったので、どうも市道浜中山線は机上の計画段階で潰えてしまったような感じがする。

もっとも、市道路河川管理課の保有する地図に点線で記載されていることから、この近辺の住民には道路計画の話があっただろうと推察される。

出典および編集追記:

1. この最終引き込み鉄塔は2013年夏頃に運用が停止され現在は基礎部分を遺してすべて撤去されている。詳細は「宇部興産窒素線|No.90鉄塔」を参照のこと。

2. 2013年度末をもって地理院地図の上載せ機能がサイトごと廃止されたので上載せ情報を書き込んだマップで代用している。

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