旧宇部市立図書館

公共施設インデックスに戻る

記事作成日:2022/2/11
最終編集日:2022/10/24
旧宇部市立図書館は島1丁目の高台にある建物である。
写真は敷地内からの撮影。


位置図を示す。


上の地図を拡大表示すると宇部市教育委員会と表示されるかも知れない。後述するように市立図書館が移転した後、暫く1階を市教育委員会の事務所、2階を学校安心支援室(ふれあい教室)として使われていた。しかしこの総括記事の最終編集日現在において建物は閉鎖され全く使われていない。2階にあった学校安心支援室も学校安心支援係と名称を変えて港町庁舎へ移転している。[1]

同じ敷地内の奥には旧郷土資料館があるが、こちらは常駐者が居なくなった後も暫く1階の市教育委員会担当者から鍵を借りて自主見学する形となり、船木の学びの森くすのきに郷土資料を移転した後は閉鎖された。

昭和期から平成初期にかけて唯一の市立図書館であったため、多くの宇部市民にとって大変に馴染み深い建物である。一定年齢から上の市民であれば、本に慣れ親しんだ方でなくても位置を即答できる人は多い。この図書館は市制施行60周年記念事業として、平成3年10月に琴芝町に存在していた宇部紡績工場跡地へ新しい図書館が建設されるまで使われ続けた。

以下、一般名詞および琴芝町にある現行の宇部市立図書館を指して「図書館」と呼び、島1丁目の現地にあるこの建物を「旧図書館」と記述する。
《 歴史 》
旧図書館は昭和27年6月17日に起工され、昭和28年5月25日に落成している。[2]
【 建物の概要 】
鉄筋コンクリート2階建て構造で、広さは337坪、大成建設が1,985万円で落札、建設している。[3]
写真は正面玄関。


西向きの玄関を入るとロビーで、数脚置かれたソファで待合いに使うことができた。ロビーより正面に一般閲覧室へ向かう階段があり、左側に事務所とトイレがあった。現在は市教育委員会が使用している1階部分の事務所およびその奥には倉庫があるようだが、旧図書館の開館時代から一般の立ち入りはできなかったため詳細は分からない。したがって建物内部の詳細は数年前に撮影したロビーおよび2階の一般閲覧室までに限定されている。
【 閉館と移転 】
平成初期に宇部紡績工場跡地へ市立図書館を新築してからは、旧図書館はその役割を終えることとなった。図書館の利用者増に対して立地が分かりづらく、車での来訪者が一般的となる中で駐車場は如何にも狭かった。一般閲覧室が2階にあってエレベータなどはなく足腰の弱い高齢者には利用しづらく、また蔵書の絶対量も充分ではなかった。閉館の際にイベントなどが行われたかは分かっていない。

この時期は宇部を離れていたこともあり詳細な顛末は分からないが、旧図書館の閉館後は宇部興産(株)の研究室が1階部分を利用していた時期がある。その後旧図書館の1階部分に市教育委員会が文化財活用推進室として事務所を開いた。これに伴い郷土資料館に担当者が常駐しなくなり、常時施錠された状態で見学するには文化財活用推進室の事務所に出向き鍵を開けてもらう手続きが必要になった。更に後年、船木に学びの森くすのきが完成してからは郷土資料館は閉鎖され、更に市教育委員会も港町庁舎へ機能移転した後に施錠されまったく使われなくなった。
建物の内部
項目に設定されたリンク先記事の写真を含めて以下の画像は、まだ館内に入ることができていた2013年時の撮影である。

昭和中期以前築の建物らしい風合いや意匠、素材が至る所に観察される。特に学生時代から社会人までお世話になった宇部市民は数知れず、郷愁を感じさせる。デザイン面で特に秀でている要素が目立つ建物ではないが、内部の様子を覚えている市民は多い。


階段を上がると特徴的な窓ガラスの目立つ踊り場があり、折り返して上がった正面には小児向けの閲覧室があった。この閲覧室はふれあい教室として使われる以前は小児向け専用の一室となっていて、当時から一般の出入りはできなかった。階段を上がって正面に一般閲覧室へ入る木製の扉があり、昔から入退室の際には各自が開閉することとなっていた。入室して左側に閲覧用のテーブルがあり、正面に貸し出し返却の手続きを行うカウンター、その奥に一般貸し出し向けの書架が置かれていた。また、入室して左側には専門書の書架があり、特に重要な書籍は室内の階段を経て高い位置に排列されていた。

閲覧用のテーブルは一続きの長いものが数台置かれていたが、夏休みなどはいつ来ても学生が占拠していて一般人が閲覧できないという指摘からカウンター近くに一般閲覧用の小さなテーブルが置かれた。貸し出し返却の手続きはカウンターに常駐する司書による手作業だった。
建物の外部
旧図書館は時期を違えて増設されており、西側に倉庫、北側に別館がある。
写真は旧郷土資料館前から建物を横方向に撮影。


別館は本館裏側の2階と渡り廊下で繋がっており、閲覧申請のあった蔵書を取り出すときの担当職員の通路だった。この通路部分は一般利用者が立ち入ることはできなかった。

別館の西側端に玄関があり、市立図書館の銘板が掲示されている。


別館自体は子どもの読み聞かせなどで一般に利用されていたという報告がある。
【 屋外展示資料 】
本館の西側、旧郷土資料館の前面と横には別の場所から運び込まれた郷土関連の史跡などが据えられている。旧図書館や旧郷土資料館の内部に入ることはできないが、敷地に展示されている郷土資料があるため現在でも旧図書館の敷地への立ち入りは自由である。
旧図書館の売却問題
情報この項目は分量が多くなったので単一記事に分割されました。記事の移転先は項目タイトルに設定されたリンクを参照してください。

《 アクセス 》
公共の施設たる図書館は概ね市街部の目抜き通りやそれに準ずる道に面して造られる。ところが旧図書館はそうではなかった。地図で示されるように、旧図書館は産業通り市道小串通り鍋倉線)から離れ、車の離合がそう容易ではない狭い道を進んだ丘にある。特に産業通りから旧図書館までを連絡する道は、現在も市道図書館線という名前で管理されている。

産業通りの広さは旧図書館が存続していた頃と変わりはないが、後述する小串土地区画整理事業が始まるまで県道の小串通り区間は狭かった。浜バイパスは小松原通りを横切った先にまだ広い道がなく、今から思えば車で利用するには大変不便な場所である。もっとも平成初期までは今ほど交通量が多くなかったからさほど問題にはならなかった。
この場所は島1丁目であるが、この住居表示変更が行われたのは小串土地区画整理事業以降であるため、平成初期までは校区名を元にした「鵜の島の(にあった)図書館」という呼び方もよく耳にした。

最終編集日時点で敷地への市道は、駐車場の手前スロープに縄が張られ車が入れなくなっている。ただし立入禁止になっているわけではなく、スロープ左横の階段から歩いて到達できる。近隣在住者がイヌの散歩で敷地を歩いている姿もときどき見受けられる。
派生記事: 島について
旧図書館の用地も土地区画整理の対象からは外され、現在も昔のままの地勢を保っている。
出典および編集追記:

1.「宇部市|教育支援課

2.「宇部市|図書館年報」の(令和2年度図書館年報)p.32 本市の図書館の略年表(PDFファイル)

3.「歴史の宇部」(上田芳江)p.158

4.「有志6人が”新川歴史研究会”、旧市立図書館保存など呼び掛け【宇部】|宇部日報
《 個人的関わり 》
後述するように高校時代の通学路途中という好立地故に下校後しばしば立ち寄っている。補習科時代の利用頻度も高かった。以下、ある程度時期をまとめつつ記述している。

注意以下には長文に及ぶ個人的関わりが記述されています。レイアウト保持のため既定で非表示にしています。お読みいただくには「閲覧する」ボタンを押してください。

当サイトにおいて傍目にも非常識と思えるほど膨大でくだくだしい記事を書き連ねることがまったく苦にならないのも、旧市立図書館と大学図書館時代で過ごしてきた数年間があったからと言えよう。

ホームに戻る