常盤小学校近くにある謎のレンガ積み構造物【1】

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(「常盤小学校近くにある謎のレンガ積み構造物」の続き)

※ 物語の構成上、核心部分に入るまでかなり引っ張ることになるかも知れません^^;

長く雨が続いて自転車で出かけられずウズウズしていたが、4日は予報外れて午後から晴れ間が広がった。それで用事を済ませた後、私は常盤小学校に向かって車を走らせた。

常盤小学校の正門に向かうなら山口宇部道路を横断せずこの場所で左折である。しかし先に「馬守り坂」の写真を撮ろうと思ったのでここを直進した。


自転車で走破したときから分かっていたように、市道常盤公園江頭線の馬守り坂付近は幅員が狭い。徐行しつつ周囲を見回したものの車を停め置ける場所が見つからなかった。そこで市道常盤小学校線の終点側から正門に向かって車を進めた。どうしても停める場所がなければ、閉鎖された東門の前に傾斜したスペースがあることを知っていたからだ。

常盤小学校線も幅がそれほどなく途中で車を置けなかった。結局、閉鎖された東門の前の傾斜スペースに車を停めた。
ここはホントに傾斜がきつい…車を横付けにするのも一苦労だった


例によって右手にデジカメ、ポケットには替えのバッテリーというお約束のスタイルで歩き始めた。
ターゲットが洞穴なので念のためにサーチライトは車に積んであるが、まずは身軽になって視察することに。


山口宇部道路のボックスカルバートをくぐる。
思えば前回の視察ではまるっきり違う方向を観察していた。


常盤小学校を背にすると、新しい感じのするマンションは左側になる。前回私は同じ側の藪を注視していた。しかしブログコメントとして頂いた当初の情報では、
> 廃隧道は小学校の西の校門を出て、宇部有料をくぐってすぐ、マンションの向いの右手の林の中にあります。
…となっている。
即ちマンションの反対側の藪は全くノーチェック状態だった。

ボックスカルバートを出た直後から右側の藪を逐一調べながら進んだ。
これは単純な雨水桝だ。山口宇部道路を通したときに造ったものだろう。


何やら先行き不味いシチュエーションになりそうな予感を覚えながらも、淡々と藪の中をチェックしつつ歩く。
マンションが近くに見えてきたのでそろそろの筈だ。


9月上旬ではまだ藪の勢いは衰えない。伸び過ぎた木々の枝は用水路の上まで進出している。
この奥にあるとしたら…潜入にはそれなりの覚悟が要りそうだ。


いやはや…何とも居心地が悪い。市道の真ん中まで堂々と躍り出て周囲を撮影しづらい事情があった。

写っているターゲットからも先方の状況が推測されるだろう。子どもたち数人が寄り集まって時折こちらをチラ見しながらヒソヒソ話している。既にこちらの動向を察知していて、機会あらばツッコミを入れてやろうという風にも見える…sweat


まったく塩梅悪いことに、最も怪しいと思われる藪の切れ目がそこにあった。

用水路の向こう側には、そこだけ木々が生えるのを遠慮している奇妙な空間があった。
何かありそうだ…


黒々としたその空間に目を向けた。
レンガ造りのアーチが!!


暗闇に反応してフラッシュが作動した。手前の枝にクモが巣を造っていたので、可哀想だが退いてもらってフラッシュオフで撮影した。

レンガ造りのトンネルである。見るからに古そうだ。いや…トンネルと言うには短いしかなり小さい。大人なら背を屈めないと頭が当たる程のサイズだ。


そのトンネルは市道の方を向いていながら、用水路に橋は架かっていなかった。通路にしては変だ。
市道のこの方向は丘陵地帯なので、この高さでトンネルを掘るならもう少し長い筈だ。しかし目測で長さ10m足らずのトンネルの向こうには既に明かりが見えている。閉塞していないどころか、日の射し込む空間があることを示していた。
今すぐ潜入したい。しかし…
用水路は大人の私なら容易に跨ぎ越せる程度の幅だった。しかし子どもたちが見ている前でそれをやるのはまずい。私が立ち去った後で同じことを真似されて怪我させたら大人の責任である。
この辺りの基本的な考え方は「守っていただきたいこと」を参照してください

場所柄、小学校に近いので現地へ赴く前から子どもたちの目に触れなければ良いがと懸念していた。下校する子どもたちがゾロゾロ歩いていたなら別の場所で時間調整を考えていた。幸い下校時間は過ぎていたが、まさかマンションの前で遊ぶ子どもたちが居ようとは…
車をあの場所へ停めに向かう時点で子どもたちがあの場所で遊んでいた

私は見るからに美味しそうな遺構を目の前にして、次のアクションを起こせないでいた。しかし私がこの物件へカメラを向けた時点で子どもたちは察知したらしく、わらわらと寄ってきてしまった…sweat
「わー、何撮ってるんですかー?」
「新聞社の人ですか?取材に来たん?」
「僕たちテレビに出るかも知れないの?」
あっと言う間に取り囲まれてしまった。

こういう場合、どう反応すれば良いものだろう…
私がカメラを向ける場所に気付いたってことは、知らないのは私くらいのもので地元の方々はもちろん子どもたちも知っている有名な物件かも知れない。その正体が何であるかは事前のメールで情報を頂いている。しかし子どもたちにはどう映っているのだろう…逆に尋ねてみた。
「あそこにあるレンガのトンネルは一体何?」
「防空壕!秘密の基地!」
「学校の先生は知っているの?『あそこに行ってはいけませんよ』とか…」
「先生らも知らんと思う。だってあそこは俺らの秘密の場所だもん。」
私とてまだ入口部分をチラリと見ただけだからどれほど危険な場所なのかは分からなかった。しかし小学校の登下校路にモロに口を開けているレンガトンネルが存在するわけで、冒険心旺盛な子どもなら用水路に板を渡してでも入ってみたいだろう。
昭和期の子どもと違い今の子どもたちはこういう場所に興味を示さないものなのだろうか…
「ねぇねえ…僕たちってテレビに出るの?」
「テレビじゃないけど有名になっても知らんぞっ。」
「わ〜い♪写真撮って〜♪」
どうしても撮ってくれとせっつくので、子どもたちが特定できない程度に離れた場所から撮ってやった。
載せてあげたから君たちも有名になれよ…もちろん良い意味でだぞ…^^;


これだけまとわりつかれるとちょっと踏査にならない…sweat
後回しにしよう。先に馬守り坂の写真を撮りに行こう…と思い、一旦その場を後にしようとした。

人の気も知らずに子どもたちはもう大はしゃぎ。
「あれっ?防空壕の写真撮らないんですか?」
「中に入ってみんの?」
「後で行くよ。」
いや…言われなくたって中に入るってばさ。ホントは君たちが思っている以上に早く潜入したくてウズウズしているもので…^^;
恐らくあのマンションに暮らす子どもたちだろう。ここであんまりワイワイガヤガヤ騒がれているうちに保護者の方々に出て来られるのが怖い。藪にカメラを向ける人間などまず正しく理解されないだろうし、私の出で立ちからしてもアブナい変質者と決めつけられそうだし…冷たい視線を浴びせられ、子どもたちに「もうお家へ帰りなさい」なんてことになりそうだ。

子どもたちが飽きて他の場所へ退散してくれるのを期待して一旦そこを離れた。大好きなあの娘にわざと無関心を装って冷たい素振りを見せる芸を演じるようなものだった。


そうそう…
まだそれほど距離が離れていないところで背中の方で男の子の声が聞こえた。
「ねぇ…もしかして…女の人?
違う。女の人ではない。
女の子と呼びなさい。←コラコラw
あ…
このネタはリアルで私にお会いした人じゃないと分からないよね^^;
馬守り坂の記事を書くための追加の写真は本当に必要だったので、後ろを振り向かず黙って歩き去った。私が去ったことで子どもたちは一旦マンションへ戻っていったようだ。

== 数分が経過… ==

何だか虐めっ子から逃れているような気がしないでもないが(苦笑)馬守り坂の写真を数枚撮った後、再び歩いてあの場所に向かった。


子どもたちは誰か特定の子の家に遊びに行っているようだった。
横倒しのまま歩道に置き去りにされた自転車が如何にも子ども特有の所作だ。


休耕田と森林の境目に細い道がついているように見える。
もしかするとあの裏に出てくる道があるのかも…


用水路にコンクリート床版が架かっている。
田への出入りのためだろうが、もしかすると古い里道という可能性は…


最初の情報提供者によると、登下校路沿いにあるレンガ造りのトンネル以外に別の遺構があるらしい。
小学校の正課クラブでこの丘陵地帯を探検したときに友達が報告したということで、詳細は分からないという。
それほどの物件なら、反対側からも到達できるのではないか…と考えたわけだ。

田と森林の縁を辿るように先へ進んでみたが、道らしきものは消失していた。先日まで雨続きだったことが災いして、足元は緩く水分を含んだ畔にハマりそうだ。
道もなさそうだしここで引き返した。


もう一つ気になった場所。
用水路に一枚だけコンクリートの蓋が掛かっている場所があった。


意味もなく用水路に蓋などしない。人が通る里道があったり田に一輪車を持ち込む用途で設置する場合が殆どだ。
常盤池のにしめの鼻踏査でも溝蓋を見落としたために入口を見つけられなかった

古い道の可能性がありそうとみて藪の中を探った。
何もない…ただの藪だ。潜入すれば何か見えるものがあるかも知れないが、今の時期はご免被りたい。


まだマンションの子どもたちは私が舞い戻ったことに気付いていないようだ。
早々にあの場所へ潜入し姿を消した方が良さそうだ…

(「常盤小学校近くにある謎のレンガ積み構造物【2】」へ続く)

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