市道横尾線

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現地踏査日:2014/5/17
記事公開日:2014/7/9
平成26年4月現在で宇部市には988路線もの認定市道が存在する。[1]殆どの市道には整理番号が与えられているが、1番から順に詰めて作成されているのではなく、規模による分類や将来の拡張を考えて1〜2桁、200番台、300番台…のように間を空けて割り当てられている。このため市内でもっとも後に認定された路線番号は1052番(市道流川原線[2])のように4桁に達している。

そうなると番号だけに着目してこんな興味が湧いてくる。
認定番号1000番の路線は何?
それが本路線、市道横尾線だ。

番号と位置の関係は県内の県道指定に準拠していて、北から順に逆時計回りとなるように決められている。しかし整理番号が800番台からは路線改定や統合、区画整理に伴って生まれた新しい市道を順次割り当てているようで番号だけでは市内のどの辺の路線かはまったく分からない。例えばすぐ次の1001番はたまたま北ヶ迫線という同じ東岐波区にある路線だが、999番は現在新しい琴川橋を架け替えていることで知られる岩鼻中野開作線である。

この市道の起点を示す。


車が移動の足になる方なら、地図を見るなり「あっあそこだ」と分かるだろう。東岐波にある宇部市内でもトップクラスのショッピングモールだ。私は個人的関わりに薄いものの、一時期は仕事にプライベートに訪れた地である。それらは後述する派生記事で触れるとして…

上の地図を見ると、本当にすぐ近くを宇部・山口の市境が通っていることが分かる。それも市境の足取りはまったく千鳥足状態な歩み方でひどくギザギザしている。進入路一つ隔てて隣接する店舗が宇部と山口に分かれている場所すらある。このような市境となった理由を考察するのも一興だが、いずれ取り組むかも知れない「市境トレース」というジャンルへ委ねるとして、ここでは「昔の地勢に基づいている」とだけ書いておこう。特に本路線終点付近にみられる市境のギザギザは、横尾池全体が宇部市側へ含まれるように汀部分へ設定されたと考えられる。[3]

さて、机上の話はそこまでとしてそろそろ現地の時間軸へ移動することとしよう。

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この日は東岐波行きの第3幕であった。山口宇部道路を自転車で走って丸尾経由で東岐波入りしたのは先週のことで、第3幕ではここまで古原田上池の西岸にみえる謎の遺構を再確認し、花ヶ浴池さやの池へ立ち寄っていた。サヤノ峠を再訪しようかとも考えたが、この時点で時刻は午後3時近く。そろそろアジトへ戻る方向で撮影を行おうと思い、横尾池方面へ自転車を走らせていた。

横尾池の撮影を一通り終えた時点で、整理番号がちょうど1,000番となる本路線のことを思い出した。
この路線は市道ながら通る車の殆どはショッピングモールを訪れる買い物客である。秀逸な景観はないし道中興味深いネタが隠れているわけでもない。整理番号がキリ番というただそれだけの市道と言って差し支えないレベルだ。
まあ、それほど長い路線でもないし、派生記事でショッピングモールについてちょっと書いておきたいことがあるので無理やり市道レポート向けの写真を撮っておくことにした。

横尾池の撮影をしていたので、一旦本路線の起点に向かって走り直すことになる。
国道190号接続部が起点だ。


国道側から撮影。
市道から国道へ出るための感応式信号機が設置されている。
感応バーと先頭車両の停止位置に注意…後で話題になる


ここから山口市がもう目と鼻の先であることは、カメラのズーム機能で容易に窺える。
起点のT字路を過ぎた先に国道維持出張所の管理区間変更の標識に並んで市境標識が見えている。


市道の起点側はショッピングモールの最も大きな出入口で、この角にハイパーモールメルクスの表示板が設置されている。
あまりにも大きくて歩道からでは全体像が収まらなかった。
信号待ちの車がズラッと並んでいるので時間をかけて撮影できなかったのもある


ハイパーモールメルクスを含めてかつてこの場所が何であったかなど書きたいことが結構ある。個人的関わりも含めて記事を作成しておいた。
派生記事: ハイパーモールメルクス宇部
ここより市道レポートスタート…といくべきところだが…
現地ではスタートを切ろうとしつつもあることがとても気になっていてその顛末を知りたい自分が居た。
気になっていることとは…
この信号…壊れているんじゃないの?


私が横尾池から本路線の起点へ向かうまでに、既に数台の車が国道へ出ようと信号を待っていた。さて私が起点に到着し、ここまで4枚の撮影を行い…その間まったく信号が変わらないのである。
確かに本路線はメルクスへの出入りが主なので優先権は完全に国道側にある。それにしても待ち時間が異常に長い。上の写真のように国道を往来する車の姿がなくなり、方や本路線には十数台もの車が信号待ち。それでも国道の信号はずっと青状態で、特に歩行者向けの横断歩道は青のピコピコ状態にすらならない。

どこかおかしいのでは?
もしかしてこのT字路にセンサーが設置されていて、私がここに立っているために「市道を横切って渡ろうとする歩行者が居る」と誤認され青状態を保持しているのだろうか…とすら思われ、そこへ居続けることが憚られた。そもそも信号待ちしているドライバーには明らかに苛立っている表情が見えたので。

既に国道へ出ようとする車は数十台に膨れあがっていた。
本路線部分の車が動かないので、各店舗から市道へ出ようとする車までも数珠繋ぎになってしまっている。


さすがにおかしいと感じ取ったのか、信号待ちをしていた「前から2台目のドライバー」が運転席から降り、手動で国道を渡る方向の押しボタンを押した。

それから更に待つこと1分近く…漸く歩行者向けの押しボタンリクエストに反応し(もちろん国道を渡る歩行者は誰も居ない)信号が変わった。


青になった途端、しびれを切らせたように動く車々。どれもこれもかなりの急発進状態だ。そんな中でも余りにも待ち時間が長かったせいか青になったことを知らず発進が遅れる車があり、それを催促するように後ろからクラクションを鳴らすドライバーあり…最後の方の車は黄信号はおろか赤でも国道へ突っ込んで強引に退出していった。無駄に待たされ苛立ったドライバーたちの挙動がまったく明らかだった。
無理もない。国道に対する枝道の信号だから青時間はかなり短い。結局、このサイクルで国道へ退出できた車は十数台程度で、なお半分以上の車が再び次の青を待つ事態になってしまっていた。

こんなことになった原因は2台目のドライバーが取った行動から理解できた。
先頭車両の停止位置が悪く、信号機を変える感応バーが感知していなかった。
1・2枚目の写真を見ると、先頭で待機する軽四が停止線よりもかなり手前で停まっていたため、国道へ出ようとする車は「存在しない」と判断されて信号機が変わらなかったのだ。普通ならあまりにも長時間信号機が変わらなければおかしいと感じるものだが、この高齢者運転手は特に疑うこともなく実直に信号が変わるのを待ち続けていらっしゃったのだった。
国道を横切る方向に歩行者向けの押しボタンは設置されているが、メルクスへの来訪者は9割以上が車である。国道の歩道を歩く人は殆ど居ない。異変に気付いた後続車のドライバーが車を降りて押しボタンを押さなかったら、市道に並ぶ車列はいつまでも国道へ出られなかっただろう。感応式信号機の盲点であり、他の場所でも起こり得る。[4]感応バーの設置位置の問題もあるが、リクエストが受理されたかどうかは先頭に停まる車が注意しなければならない。

まあ、いいや…自分は自転車だし進む方向は全く逆方向だし…^^;
最後の顛末を見届けた上でスタートする。先ほどの「感応バー事件」の余波で退出する車も滞り気味だ。


最初の十字路。横切る道はすべて地元管理道だから本路線に優先権がある。
信号機はないが、見通しが良いので適宜譲り合って通っているようだ。


店舗の入っている区画に対する十字路には右折専用レーンが設置されている。
平成期に入ってからの整備なので、道路設計の段階から考慮されていたようで右折ドン詰まりを回避できている。


分離された歩道が両側に備わり、特に交通量の多い区間はガードパイプが設置されている。店舗がある最後の区画を過ぎると、まるで別の道路みたいに静まりかえった。
カメラで周囲を収めつつ進んでいるうちに奇妙な道路仕様に気付いた。


用を為していない歩道切り下げがある。
歩道切り下げが何を意味するかは語感から分かるだろう。車道の両側には歩車道境界ブロックが設置され、道路に降った雨水が流れ込まないように歩道は一段高くなっているのが通例である。しかしそれだと車道から敷地へ車を乗り入れることができないので、そのような出入口では縁石の頭を切り下げると共に歩道も車道側へやや傾けて設置して段差を解消する。
上の写真を見ると、敷地へ向けての切り下げ加工がされていながら、結局使われなかったようで敷地はネットフェンスで締め切り、乗り入れ口部分もガードパイプを設置して塞いでいる。

その先にある建物入口前の切り下げ加工。
ここは割と標準的な施工だ。しかし切り下げられたブロックの幅が建物の玄関に対して全然合っていない。


この建物が使用する駐車場部分が典型的だ。
切り下げ加工されているものの自転車置き場の背面になるのでまるで用を為していない。


これは各区画にテナントが入る前、市道設計の段階で切り下げの位置決めを行ったからである。気を利かせて当初から切り下げで設計施工されたものの、敷地内の建物や駐輪場の配置の都合で活用できなかったのだろう。特に珍しいものではなく市内でも結構見受けられる。「官製トマソン」とも言えるだろうか…

最後の建物を見送ると、そこから先は分譲計画地になっていた。
横尾台ニュータウンと呼ばれることになるようだ。


道路の規格は起点からのと変わらないが、歩道の仕様が違っている。側溝に蓋を掛けてその上を歩道としている。
この部分は起点付近よりも古い施工ではないだろうか。
円形側溝ではない旧来タイプなので


道路構造ばかりではなく周囲にも目を配ろう。
振り返ると漸く建物に遮られず日の山が見えるようになった。


やがて本路線は時系列でつい先ほど訪れた横尾池に沿って進むようになる。
池の角がそのまま終点だ。


横尾池については以下の派生記事を参照。
派生記事: 横尾池
この辺りは宇部・山口の市境がほぼ道路中心付近を通っているものと思われる。あるいは上り線の歩道などは物理的には山口市に含まれているかも知れない。しかし管理上は本路線のすべてが完全に宇部市へ属することとなっている。[5]

終点到着。
市境の設定状態がそういう状況であるせいか、周辺に市境の標識は見当たらなかった。


終点から先はセンターラインのない道幅半分以下の農道となっている。入口部分には外部からの車が通らないよう促す立て札が設置されているにもかかわらず、双方向からガンガン車が通っている不思議な道だ。まあ、宇部市外の道なので深く追及はしないが…一応記事にしておいた。
派生記事: まるっきり守られていない通行制限標識
終点より振り返って撮影。
日の山の裾野を通る道にしては全体的にほぼフラットであった。


車が見当たらないので長閑な道に見えそうだが、とんでもない。写り込まないようにタイミングを計って撮っている。特に上の写真などは3方向から完全に車の姿がなくなるのを待たなければならずかなり手間がかかった。その殆どがメルクスでの買い物客の車だろう。
本路線の終点は進行方向左からやってくる市道新出横尾線の終点とは一致していない。市境の折れ点に終点が設定されており、そこより北側の道は山口市道となっているからである。

最後に知見や個人的関わりは少ないのだが本路線の名称に含まれる地名「横尾」について項目を設置しておいた。
派生記事: 横尾について
ここまでの撮影を終えた後、農免道路まで出てアジトへ戻った。
再度この方面を訪れることはあっても本路線に関して追記されることは多分ないだろう。

【路線データ】

名称市道横尾線
路線番号1000
起点国道190号・メルクス入口
終点市道新出横尾線・終点付近(山口市境)
延長約600m
通行制限
備考

延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください
出典および編集追記:

1. 宇部市の道路(PDF:196KB)

2. 県道妻崎開作小野田線の流川交差点〜東須恵三差路までの区間で、現在なお県道指定されている。将来的に東割交差点の西側にある十字路の新線に起点を移動し、上記路線は市道へ払い下げるための先取り認定と思われる。

3. 特に本路線の終点付近で北側へ張り出している市境ラインは、1970年度版の航空映像を観察することでかつての横尾池の岸辺ラインと一致することが分かる。

4. 山口宇部道路の片倉I.C.から県道西岐波吉見線へ出るT字路、市道南小羽山線の終点で小羽山中央線に出るT字路の感応式信号で同様の事態を経験している。

5. 道路センターに市境が設定されている道路がどちら側に帰属するかの扱いは個別に決めているようだ。経路の途中で明白に市外区間があっても全体を一本の市道扱いにしていたり、市境までの枝道部分を相手方の市道としている場合がある。

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