市道恩田八王子線【1】

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現地踏査日:2012/5/9
記事公開日:2012/5/22
この記事を書くにあたって今回、新しい試みを導入した。[1]
それは今から紹介する市道に関しては、あまりにも私個人にまつわる裏話が多く、そのまま掲載すると写真も文面も膨大な量になるし、純粋に市道だけを追っていきたい読者には些か煩雑になると思われるからだ。

これまでの市道レポートでは既に記事化されている市道はテキストにリンクを張り、沿線にある別カテゴリの物件は寄り道記事として案内し、一件扱いするほどではない些末な話題や思い出話などはそのまま本文中に埋め込んでいた。
この路線は寄り道記事として扱うほど写真枚数や記事量を持つ物件が少ないものの、市道それ自体とはあまり関係がない雑多だが個人的には遺しておきたい当時の出来事や想い出が多い。
そこでカテゴリはこの市道として扱い、複数の記述を一本の「相乗せ記事」に盛り込む形で作成した。それぞれの項目には相対リンクを含めて記述されているので、クリックすれば該当項目を直接参照できる。
もっとも裏話と言っても写真を伴わず、私の個人的な想い出数行に収まってしまうものは本文中に埋め込む今まで通りの方式で記述する。

既に公開している中にも市道レポートからかなりかけ離れた記述を多く含むものがあり、それらも同様の扱いにすべく再構成するかどうかは別途考えることにする。
最初から全く仕様を変えずに統一的な記事を構成することの難しさを実感している次第だ

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道路のもつ本質的機能は、言うまでもなく人や荷物を運ぶ経路である。あるものは古くから往来があってその機能を拡充するために幅が拡げられ、別のものは交通需要に応える形で何もなかった地へ新たに造られる。

しかし幼少期を恩田で暮らした自分は、大きな道路が交通の提供という以外の役割を担っていたことを経験的に気づいていた。
生活圏の境界となる道路。
広くて交通量の多い道路は、子どもたちにとってはしばしば生活空間を隔てる境界線となり得る。自己責任を負って一人で出歩くことが不十分と思われる年齢のうちは、親から「道路よりあっちに行ってはいけません」と言われたことのある人は少なくないだろう。学校としても主要な道路や線路を境界に見立てて「校区内・校区外」のエリアを画定していた。

さて、この市道の経路をルートラボで示そう。


市道恩田八王子線はこの近辺にあって相当な延長をもって南北を隔てるラインを形成している。東西のラインを挙げるなら、国道190号やJR宇部線が順当なところだろう。
そして実際、JR宇部線は中学時代では自転車通学できる境界線とされていたし、市道恩田八王子線は私にとっては家という内なる世界、学校や級友という当時の自分にとっては外の世界を隔てる道として意識されていた。
家と恩田小学校を結んだ線に対しこの市道はほぼ垂直二等分線であったからかも知れない

想い出深い道は市道に限らず沢山あるが、道路それ自体ではなく周辺に想い出深い場所や事件を引き連れている道はそう多くはない。これから向かう市道恩田八王子線はそうした道の一つである。
些かプライベートで内輪ネタっぽい内容に終始するかも知れないが、歴史的・郷土史的に遺すべきものだけではなく個人的に「遺したい・伝えたい」ものは積極的に盛り込みたいと思う。

それではスタートしてみよう。

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国道190号の恩田小学校前交差点である。ここに市道の起点がある。
恩田小学校前交差点と言っても東門まで数十メートル離れている


詳細な地図で起点をポイントしている。


形としては反対側からやってくる市道宇部新川恩田線の続きになる。実際、国道を横断して真っ直ぐこの市道へ走り込んでくる車は多い。


仮に市道宇部新川恩田線を国道190号で終点にせず、これから向かう恩田八王子線と一本化して「市道宇部新川八王子線」としても充分に通用するだろう。
実際にそうならなかったのは管理上の問題もあるのだろうが、案外これが原因ではないかと思われる要素があった。
いきなり狭い道。


市道宇部新川恩田線が国道に取り付く終点部分は上下線と右折レーンを含めて3車線分の幅員がある。それに引きかえこの市道ときたら…
まあ普通車が通るのに支障はないが、物理的に離合できる程の幅がない。そのためここからの短い区間は起点側からの終日一方通行に指定されている。更には離合可能となるように拡幅できる余地もない。左には商用ビルが建ち、右側は工務店の敷地でブロック塀が連なっているからだ。

拡幅できず双方向からも通行できない道となれば、それなりの扱いになってしまうのだろうか…傍目にも路面は傷みまくっており、子どもたちが日々渡る横断歩道もペイントが掠れていた。


大人なら数歩で跨ぎ越せてしまえるほどの横断歩道だが、交通量は昔から結構多かった。地図を見ても分かるように、起点から進攻すれば恩田交差点をショートカットできるからだ。これが終点側から走るならここを通れず、一旦恩田交差点まで出て左折し、恩田小学校前交差点で再び右折…という面倒な経路になる。

反対側から車がやってくる心配がないので、道幅は狭いながら多くの車がスピードを落とさず突っ込んでくる。恩田小学校の東門が近くここを渡る児童数が多いせいか、登校時には昔懐かしい「緑のおばさん」が立っていた。
もっとも緑ではなく黄色の旗を持っていたし年齢も「オバサン」とか言ったら殴られそうな若い母親だったが

緑の若奥様(何)が旗を持って立っていたのは国道側ではなく市道入口側だったと思う。もしかすると当時は一方通行ではなく出てくる車もあったのかも知れない。

一方通行を示す矢印のペイントが数ヶ所、そして指示標識が見えている。終点側から進攻できるのは歩行者のみである。


恩田に暮らしていた頃からこの道は車でも自転車でもそれほど通ったことはない。市街部から家に帰るには市道神原町草江線の接続される恩田交差点より一つ東の交差点であり、この道を通る用事が殆どなかったからである。

さて…
さっそくだが、ちょっと寄り道をしてもいいかな?
この市道とは殆ど何の関係もないのだが、近い場所まで来ている今書いておかなければ「墓場まで持って行ってしまう」想い出の一つになってしまうので…
派生記事: 初恋の女の子 方針により削除
この細い一方通行の道は数十メートルで終わり、その先でセンターラインがある対面交通の道に合流する。



ここで合流するのは恩田交差点を経由する市道恩田線である。
その記事で解説している通り、道路構造としてはこちらから太い道に合流しているものの、管理上は現在の市道がそのまま続いていることになっている。

そうは言うものの通行の優先権は市道恩田線側にある。八王子方面に向かうにはここで一旦停止し、恩田交差点から来る車をよく見据える必要がある。


車が通り去った後に合流点を撮影。
カーブの内側、横断歩道のところにちょっと古そうな平屋があるのだが…


市道レポートから外れてしまうので、これも先の内容とあわせて別の記事に収録している。
市道恩田線の終点にも近いので同様の記事リンクを配置した
派生記事: 小学生のときよく通った「くじ屋」
合流点の横断歩道を渡り振り返って撮影。既に公開した市道恩田線の終点である。
夕刻などは恩田交差点に向かう車の信号待ち車列がこの合流点まで伸びてくる。市道恩田八王子線からの車が支障なく出て来れるように信号待ちする車は横断歩道の手前で待つのが暗黙のお約束となっている。
この場所に限らず出入りの多い枝道の前は空けておくのがドライバーの常識


この近辺、昔住んでいた恩田の家から若干遠いながらも幼少期の想い出が色濃く遺る地だ。
先に書いた「くじ屋」に行くときは、この左側に見える地区道を通っていたものだった。
昔よく利用したこの近辺の地区道はいずれ別途記事にする


また、道路の反対側にある理髪店は中学生の間、校則仕様に頭をバリカンで刈ってもらう行きつけのお店だった。
うちの親父は遠い野山に引っ越した現在もなおここ以外の店へ散髪に行かない

さて、この理容院・美容院を過ぎてすぐ右側へ沢を下るような分岐に出会う。
市道笹山通り線で、車線幅は現在の市道よりも細いながら交通量の多い重要な市道だ。
東見初公園前に起点があり、この場所が終点となっている。


この辺り市道の両脇は店舗や営業所、住宅が殆どだが、やがてごつい鉄骨の塔を伴った施設が見えてくる。
左側にある小さな商用の店はかつてはヤクルトの取次所だった


見初変電所である。
市道の両側が民家や店舗で埋め尽くされた中、相応な敷地を占めて現役で活動している。


別途記事をこしらえてあるので興味のある方はどうぞ寄り道を…
派生記事: 見初変電所【1】
大方の想像に反して、見初変電所を含めてこの辺りは幼少期には殆ど通っていない。
この近辺に来るのは幼少期から中学生時代にかけて先の「くじ屋」へお菓子を買いに行くか、散髪か、笹山にいる友達の家へ自転車で遊びに行く用事くらいだった。他方、市道のこの先へ行くなら交通量の多いこの道ではなく別の道(市道笹山岬台線)を通っていたからである。

唯一の例外が下の写真で市道の右側にある建物だ。
この近辺では比較的大きな個人営業のスーパーで、中学生頃から自転車でスナック菓子を買いに来ていた。
マート名の看板が降ろされているが今も営業していると思う


このスーパーのすぐ先に市道としては初めての押しボタン式信号に出会う。ここには右に細い道が接続しており、時間柄下校している子どもたちが歩いていた。


この細い道は市道五反田笹山線で、成立の由来は分からないが昔からある道の一つだ。
かなり昔から子どもたちの登下校路として指定されており、押しボタン式信号の設置もかなり早い。少なくとも30年は今の場所で子どもたちを安全に横断させる仕事を果たしている。

恩田小学校の南門を出た子どもたちはここから市道の歩道を歩くようになるので、この押しボタン式信号を過ぎると子どもたちの喧しい談笑が聞こえるようになる。

この信号機から若干離れて逆方向に入る道がある。


市道笹山岬台線で、先の古道よりは広いのだが、子どもたちの主要な登下校路なので早朝の時間帯は許可車以外の進入はできない。


個人的にはこの市道への出入りが極めて多かった。ここが起点なので、道草したい方のために寄り道記事を案内しておこう。
派生記事: 市道笹山岬台線
この市道分岐のすぐ先で初めてのバス停に出会う。笹山バス停である。
恩田交差点から数えれば2つ目で、市道恩田線、市道恩田八王子線と経由するバス路線になっている。
一度も乗ったことがないので何処行きのバスになるのかも分からない


また、このバス停のある場所、市道笹山岬台線の入口角にある建物は元は酒屋だった。私が初めて自分のお金で買ったアルコール飲料(メロンリキュール)はこの店で買い求めた。派生記事はこちら。
派生記事: 末岡酒店
さて…
起点からここまでは5月9日の撮影なのだが、この日の市道追跡調査は次回持ち越しとなってしまった。
撮影ポイント付近が下校している子どもだらけ…sweat
現地での振る舞いは、記事構成を考えて話題性のある場所を見つけて停車してカメラを構え、また次を探しながらちょっと走って停車…を繰り返している状況である。こんなペースで交通量の多い車道をトロトロと走るのは危険なので、(好ましいことではないのだが)殆ど歩道を乗って進むなり押し歩きなりしている。
しかし今までの写真でも分かる通り、前方の歩道を歩く「ちびっこ集団」に追いついてしまった。

歩道は歩行者が最優先だから同じペースで撮影はできそうにない。いや…それ以前にこんな場所でカメラを構えたなら「何を撮りよるん〜?」とか興味津々に寄ってくるだろう。まあそこまで興味をもってくれるなら、是非とも将来性を見込んで撮影助手に…って考えたいのだが、ちょっと無理だsweat
まあ、この場所は大して重要度の高いものはないから…とばかりに、カメラはポケットへ入れて緩速走行でちびっこ集団を追い越そうとした。
真似っこして一緒に歩道を駆け足でついて来る…sweat
うーん…
可愛いけど、困ってしまいました(>_<);
子どもの直感力に恐れ入る…この大人は人畜無害だ?とかパッと見て分かるのだろうか…

この路線はちょっとダメだから別の路線を…と思って別の道に入ったのだが、そもそも子どもの下校時間帯だから何処へ言っても同じことだった。それでこの日は他の市道走破も諦めて一旦アジトへ帰ったのだった。
何だかいじめっ子に出会って逃げ帰ったみたいだね^^;

(「市道恩田八王子線【2】」へ続く)
出典および編集追記:
1. 本編は、市道を起点から終点へ向かって撮影して進むのみならず沿線にみられる興味深いネタや個人的関わりのある場所などを記述するようになった最初のレポートである。後にこの派生記事を別ファイルに作成するのが標準仕様となった。更に当該項目の辞書的項目を記述する総括記事、道路レポートのような時系列記事を分割し管理するようになった。本編も総括記事が作成された折にはそこから呼び出されるよう変更される予定である。(2015/5/20)

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