横穴系

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記事作成日:2020/10/4
最終編集日:2021/6/6
ここでは、トンネルに類似する外観を呈するものの往来可能ではない(むしろ行き止まりとなっている)ものを横穴系と命名しまとめている。
写真は床波の市道新浦潮田線沿いにある複数の横穴。
後述する防空壕ではなく居住地だった可能性もある


隧道の総括記事でも述べているように、当サイトではトンネルは市外に存在するものも含めてウォッチや記事化の対象としている。市内にトンネルが極めて少ないためで、対象を拡張することで物件数を充実させることに寄与している。

以下では形状がトンネルに似ていながら往来用ではないものを、絶対数の多い順にまとめている。
《 防空壕 》
空襲時に難を避けるために掘られたもので、その目的から里山に接した私有地にみられる。
写真は宇部護国神社裏手の山にある防空壕。崩落の危険があるため上部を含めて立入禁止となっている。


戦前の防空壕など現在は殆ど存在しないと思われがちであるが、土地の再開発で現地に手が加えられるまでは今でも多くの防空壕が遺っている。殊に丘陵部の斜面や里山に近い民家に目立ち、それらの多くは戦後に資材庫などに転用された。家を解いた後の瓦を再利用する目的からか古い防空壕の内部にはしばしばそれらの資材が詰め込まれている。

人里から相当離れた道沿いに掘られた防空壕がいくつか知られる。かつてそこに民家があったか、保有する牛馬を隠す目的で掘られたものと考えられている。また、本山や亀浦の海岸沿いにはいくつかの横穴が知られ、防空壕ではなく居住地だったことが知られる。このような形態の居住地が昭和中期頃まで存在していた。
《 坑道 》
石炭を始めとする鉱物を採取するために掘られた横穴。
写真は黒崎坑道


海底炭鉱に起因するものが最も多く、東見初から山陽小野田市の本山までの海岸沿いにかけて多くの炭鉱があった。市街部や近隣地域にあったものは殆どが原形を喪い何処に存在したかも分からなくなっている。

内部の状態が分かっておらず潜入は極めて危険なため、すべての坑道は法令により厳重に封印することが求められている。ただし冒頭の黒崎坑道のように内部を埋め戻すことで、途中まで潜入可能になっているものがいくつか知られている。

石炭採取目的以外のものとしては、ある種の鉱物を高濃度で含む石の採取を目的として掘られた横穴が厚東と鍋倉に知られる。
《 墳墓 》
市内には随所に古墳跡が知られる。多くが後年の地形改変で最低限の記録保存を行った上で取り壊されたり移設されたりしているが、現地にそのまま保存されている例もある。
写真は厚東区吉見にある萱曲古墳


古代では墳墓に葬られるのは豪族などの有力者に限られ、一般庶民は深山の沢地などへ棄てられていた。後年、死者から発生する毒素が短期で飲料水に混入することによる疫病が経験的に認識されると、沢地を避けて尾根筋に埋められるようになった。周囲より高い丘陵部や里山の見晴らしが良い場所に墓地が多いのは、この継承と思われる。

初期は土葬であるため、埋葬後に経年変化で洞が発生する。埋葬後はその形状から土まんじゅうと呼ばれていたし、洞が発生して一部崩れ落ちて露見したものは塚穴と呼ばれた。常盤校区の字塚穴や琴芝校区の字塚穴川はそれらに由来する。塚穴は既に市内には一つも存在しない。
《 グラウト坑 》
概ねダムに関連する設備で、監査廊に付随して建設される。監査廊そのものはダムの躯体および周辺の地山にある往来可能なものであるが、派生して造られる行き止まりのものはグラウト坑と呼ばれる。

ダムサイト近くの道路を走っていると、壁面にトンネル状の断面を持った構造物を見かけることがある。ダム躯体にあるものは監査廊と見当がつくが、ダム上にあるものは検査用の通路トンネルと間違われやすい。菅野ダムにあるものが著名である。


これはダム建設において両岸の強度を上げるために薬液注入(グラウト工)を行ったときの横穴で、奥は行き止まりである。監査廊自体もカーテングラウチング施工の後で点検通路としているものである。ダム竣工後は扉で塞がれ殆ど使われることがないが、稀に資材置き場へ転用している例もある。

市内では今富ダムの監査廊にグラウト坑がみられる。監査廊の枝線として存在しているため、ダム見学会のときでなければ観察できない。厚東川ダムにも存在すると思われるが、監査廊自体が見学対象外なため調べられていない。
《 その他 》
絶対数は少ないが、かつては往来可能なトンネルおよび地下通路だったものの片方が塞がれることで横穴系になった事例がある。
写真は市道小羽山中央線のいか土付近に存在する閉塞された地下通路。


ここはかつて沢地を流れる川があり、川沿いに農道が存在していた。田を作る人がなくなった平成10年代に排水路を残して沢地を全部埋め潰し宅地造成したため閉塞されたものである。現在は上流にあるまこも池の排水路としてのみ機能している。詳細は封鎖されたボックスカルバートを参照。

市外の鉄道関連事例としては、山陽本線のアンダーパスの片方が塞がれている場所を2011年に見つけている。


これは山陽本線の3線区間を調査に向かう過程で偶然発見された。[1]その後再訪しておらず塞がれた経緯などは調べていない。
この総括記事は、当初用語集横穴系として項目記述していたものに加筆し物件例を追加して作成されている。
出典および編集追記:

1.「山陽本線・3線区間立体交差を訪ねる【下】|Amebaブログ

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