市道丸山黒岩小串線【9】

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(「市道丸山黒岩小串線【8】」の続き)

正解発表…
”本線”はここで右折である。

直進は市道西の宮鎌田線という別路線になる。通称工学部通りと呼ばれる市道西の宮野中線から出発してここが終点となる市道だ。


別路線となるこの道はこの十字路が終点となる。終点場所へ到達する記事リンクを案内しておく。
終点位置を案内しているので起点から眺めるには上スクロールが必要
派生記事: 市道西の宮鎌田線|終点
よく見ると、舗装の施工継ぎ目もここで右折方向についている。もっとも路線として異なるというだけで、直進する道も相応な利用価値がある。交通量としては本線に沿った流れが多いようだ。
十字路に沿って植え込みが密になっているために交差点の見通しは極めて悪い。直接の目視が効かないのでこういう場所を車で通るのは昼間よりも夜間の方が容易である。遠くから黄色いライトを視認できるからだ。もっとも仮に鉢合わせになっても十字路は相応な広さがあるので、お互いが大きく内回り・外回りすることで離合可能だ。

カーブの内側は地面が痩せているために脱輪防止の柱が立っている。
この程度なら真砂土で埋めてしまった方が安全にも思えるのだが…そうもいかないのは民地だからだろうか。


ほぼ直角に右折し、その先は今までより更に若干道幅が狭まる。
正面に見えるのは携帯会社の電波塔で、最近建てられたもののようだ。


交通はそれほど頻繁ではないが、運が悪ければ数台の車列に出会う。カーブミラーが随所に設置されているので、常に先を予測して対向車に出くわしたときの離合箇所を頭に入れつつ進むのがセオリーだ。
沿線住民の敷地は離合する車がその端を踏んでいくことも…

十字路を過ぎると市道は下り始める。それも進むにしたがって下り勾配が加速していく。


カーブの途中、民家の敷地入口から例の奇妙な引き留め鉄塔が見える。
周囲には変電所もないのに何故かこの鉄塔でいきなり終わっている。


この鉄塔は真締川沿いに進むメインの道からも見える。変わった形をしているので目立つしこの方面に興味があるなら気になる存在だろう。
実は後日、再度この道を通ったとき、鉄塔の真下まで接近してきた。当初、民家の敷地内に建っているように見えて接近を諦めていたのだが、ミラーがある場所から地区道が通っていて容易に近づくことができる。いずれ派生記事として案内しよう。
派生記事: 宇部南支線 No.2鉄塔
(記事が書き上がり次第リンクで案内します)

更に下り勾配がややきつくなる。線形もS字カーブが連なり見通しは悪い。


「カーブ スピードおとせの札が2箇所にみられる。
何処へ向かって下っているかは明らかだろう。


両側の木々が退いた後、突然に視界が開けて真締川に出会う。
市道は高度を下げたところで真締川を直角に横切る。


真締川まで降りてきたことから分かるように、この近辺は標高ゼロメートルにかなり近い。江戸期あたりなどは舟が琴崎付近まで遡行していたようであり、現在でも満潮時には西の宮近辺までは潮が上がってくる。市道が起点の丸山地区以来低い場所を通ることになるポイントだ。

市道はそれでなくても狭い幅員を更に縮小させたコンクリート橋を渡る。この橋は鎌田橋と呼ばれている。
現在はまったく何の特徴もない古びたコンクリート橋だが、真締川に架かる橋としては歴史的に見て重要な地位を占めていた。詳細は以下の記事に。
派生記事: 鎌田橋
橋を渡って接続するのは、市道真締川西通り2号線である。
市道でありながら殆ど「裏国道490号」と言えるくらいに交通量の多い路線だ。


メインな市道に接続されたのでこの市道もそろそろお役ご免となりそうだが…
いやいや…そうではない。橋の名前にもあるように真締川の左岸側は鎌田である。ここから真締川の下流側には同じ左岸から川を渡って接続されるメインの市道で終点となる路線が少なくとも2本あるが、本路線はまだ小串まで先がある。それ故にこのメインの通りを横断しなければならないのだが…

鎌田橋を渡ったこの場所には最近まで横断歩道がなかった。そのため橋を渡ってメインの道を横切ろうとする歩行者は、橋の袂の狭い角っこで車が切れるのを待たなければならなかった。その合間にも左折して鎌田橋を渡ろうとする車がやって来れば巻き込まれる危険があった。

以前の状態の写真があった。
この写真を見れば橋を渡って横断しようとする歩行者の晒される危険が分かるだろう。[2009/10/18]


現在の様子。
橋の右岸側に歩行者・自転車向けの退避スペースが設置され、新規に横断歩道帯もペイントされた。車進入防止のポストコーンや横断旗も設置されている。ここ2〜3年の間のことだ。


横断歩道を渡り、振り返って撮影。
この分岐部分は鎌田橋に正対しておらず若干上流側から始まっている。間口は鎌田橋の接続箇所よりはずっと広い。


実際の交通の流れではメインの西通り2号線を突っ走る車が一番多いのだが、意外に横切る流れもある。とりわけ左岸から鎌田橋を渡ってきた車は、ここで一瞬西通り2号線を走ってすぐ左折することが多い。狭い道を苦にしないドライバーはとことんまで走り倒す傾向にあるが(微笑)この先向かう終点の接続場所を知れば、確かに最短経路となっている要素がある。

私を含めた多くの地元地域在住読者は先行きがかなり見えてきたことだろう。実際私など、そろそろ一連の超大作の最後を何と言って締めくくろうかとエピローグを考えているわけであるが…^^;

コンビニ駐車場の横を通り過る。


市道はちょっと見違える感じで幅が広くなる。両側の側溝もかなり新しい。
しかしそれは単なる見せかけだ。


ここまで示した時点で、車で何度か通ったことのある方なら市道の行く末を確信なさった読者もあるだろうか。
もしかしてあそこに向かうのでは…とも…
この先始まる「試練」を避けようとしている訳でもなかろうが、ここで右にチラッと逸れる道がある。
市道維新山西山線で、ここが起点となっている。


市道維新山西山線は恐らく真締川の西を遡行する現在のメインの道より昔からあった古道だ。真締川の氾濫を逃れるように山沿いへ貼り付いて進み、途中は車で通れない場所がある。
右に見えかけている看板は車両通行不能と書かれている

さて…終点を目指すなら覚悟を決めて頂かなければならないのだが…
いきなり直線の急坂!!


カメラは水平に構えている。どれほどの勾配がついているかは、水平に築かれている擁壁の天端と見比べて頂ければ分かるだろう。
もっとも道路脇に建ち並ぶ家並みからして、急斜面を利用してひな壇を造った新興住宅地ならこの程度の坂道なら割と普通にある。しかし地元管理の道ではなく認定市道だ。それも遠路はるばる宇部空港付近から一路ここまで駆けつけてくれた上得意客市道(?)である。
きつい…sweat
この勾配は鎌田橋を渡る手前の下り坂どころではない常軌を逸したレベルである。とても自転車に乗って進める状況ではない…いや、試してみようという気も起こらない。
時折坂の下からやってくる車も例外なくローギアでウンウン唸りながら登っている。


本編に収録する写真を撮るためにこの日は風呂ヶ迫交差点をスタート地点として駒を進めてきた。純粋にこの市道走破のみを目的としていて、この先の何処も踏査目的地を設定していなかった。早い話、市道の終点まで到達したらアジトへ帰ることにしていた。
そのためこの先終点まで無理して自転車を押し歩きする意義に薄い。新興住宅地の端に自転車を停め置き、ここからは終点まで歩くことにした。

市道は新興住宅地の前を蛇行しつつ高度をあげていく。そして最後の住宅地を見送った後、今までにないほど貧相な規格の道に成り下がってしまう。もっとも勾配だけはまったく緩むことがない。
山肌を削っただけの坂道…


なんかもう…無理やり感アリアリな道だ。どうしてもこの先到達しなければならない場所のために腹をくくって一直線かつ単一勾配で繋げただけの道である。しかも道幅が異常に狭い。完全に一車線分しかなく、両側には側溝すらない…切りっ放しの地山が剥き出しだ。市道真締川南小羽山線のときも最後の最後に強引な登り坂があったが、あれよりはるかに急だ。

これほど特異な場所であるだけにこの坂道はドライバーにはかなり広く知られている。しかし通称名があるらしいことは私もある参考資料に依って最近知った。
話題豊富なためにさすがに別途記事で言及せざるを得ない。
派生記事: 幽霊坂
この坂の最後のあたりは特に狭く、思えば市道の全区間においてもっとも幅が狭くもっとも縦断勾配がきつい。

そうして登り切った先は…
とっても見覚えがあるあの場所なのだった。

この「有名な場所」に到達することで市道はその役割を終える。既に当サイトでも記事化している。
この撮影アングルから思い出して頂けるだろうか…


少し離れて反対側から撮影してみようか。

今さっき、この道のカーブ中ほどにある黒々と見えている場所から出てきた。
これなら分かるだろう。



市道小串小羽山線、今の県道琴芝際波線の旧道区間である。
しかも直角曲がりで嫌がられていたあの有名な場所だ。


ちょっと長いが、坂の途中から終点に到達するまで歩きつつ動画撮影してみた。

[再生時間: 54秒]


ここへ接続することによって市道丸山黒岩小串線は、異様に長い旅路を終えるのであった。
終点を撮影後再び歩いて自転車の元まで戻った

市道丸山黒岩小串線のすべての経路を書き込んでいる。
あまりに長いので広域地図でしか全体表示できない。詳細部分は+マークをクリックして拡大し適宜ドラッグして欲しい。


「人生山あり谷あり」に擬えて言えば、この市道も様々な様相を見せる人生のようでもある。

始まりは誠につましいものだった。丸山公園の近くから県道のおまけみたいな古い道を進み、亀浦の丘陵地帯に向かった。誕生して独り立ちする時期だろうか。
そして国道190号にまみえ、交通の流れを分け与えられることで対面交通規格に「出世」した。常盤スポーツ広場入口からの新しい区間では設計速度50km/hを与えられるまでになり、市道として「脂が乗った」区間だった。
しかし開を過ぎた辺りからは交通量に見合った規格が与えられず、些か荷が重い役割だった区間は恰も「責任ばかり重い平社員」のようでもあった。
大小路交差点を過ぎて交通量を失い道路規格も住宅道のようになった様相は、良く言えば悠々自適な転職自営業者、悪く言えば脱サラ失敗組のようでもあった。その状況は最後まで持ち直すことがなく、先へ進むにつれて「下り坂人生」の様子をみせる。

そして最後にドラマがあった。殆ど標高ゼロメートル付近にまで「落とし込まれた」状態から、名前こそ冴えないものの爆発的な登り坂を経由することで小串の高みに到達する。そこがゴールだった…
残念ながら終点の小串は路線内の最高地点ではなく、その栄誉は開付近に譲ることとなったが、鎌田橋の標高ゼロメートル付近から終点まで僅か300m程度で30m近い高低差を稼ぎ出しているのだった。ちょっときつくて辛いが、最後にパッと馬力を出して花火弾けるが如く有終の美を飾る人生も悪くはない…^^;

それはそうと、何故にこの路線が丸山に始まり小串のこの場所で終点を持つように設定されたかは謎である。連載記事中でも述べた通り、一部には行商人が往来する古道も含まれていた。しかし起点の丸山と終点の小串に古くからの結びつきがあったとは思えない。
恐らく真の答はがっかりさせるような結果ではないかと思う。即ち「古くからある道から順に繋がっている部分を単一路線として設定した」などのように…まったく管理上の区分に過ぎないという答えである。

ともあれ…長かった。
実走するのは2〜3日間で延べ数時間に過ぎなかったが、記事制作にはその数倍以上の日にちがかかった。年を跨ぎ、常盤池関連の記事充実を進めてからは旧道区間を派生記事に仕立てるなど構成を変えたり、派生記事を書き直す場面もかなりあった。市道関係だけで撮影枚数は500ショットを超えている。その中から記事に見合う写真をリサイズしてアップロードするだけでも相当に時間がかかったし、単一フォルダに写真を詰め込み過ぎたせいで、今でも市道の「14番ディレクトリ」だけは表示速度が極端に遅い。

それも一応の終わりにこぎ着けたというだけである。この市道に限らず、道は必ず将来にわたってその姿を変える。微細な道路改良なら一年も経たないうちに現状とは異なる部分が出てくるだろう。あるいは問題となっている区間に道路改良が施され、市道の交通量に対して荷が重いとか下り坂人生などと表現された部分も「一転して出世」との書き換えを要求される状況になるかも知れない。
しかし…幽霊坂に関してはこれからも昔のままの姿を伝え続けて欲しいと願う
【路線データ】

名称市道丸山黒岩小串線
路線番号14
起点県道220号宇部空港線・丸山バス停付近
終点市道小串小羽山線・交点
延長約7.8km
通行制限大型車両通行不能区間・一般車両通行制限区間あり。
備考恐らく最長の市道。

延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください

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