宇部丸山ダム【旧版】

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記事作成日:2012/10/7
最終編集日:2019/12/14
情報この総括記事は内容が古くなったので旧版に降格されました。現在の総括記事は こちら をご覧下さい。旧版は互換性維持のために残していますが、編集追記されず将来的に削除します。

宇部丸山ダムは、厚東川の支流の一つ、2級河川薬師川の下流部を堰き止める形で造られた利水向けのダムである。県のサイト[1]では企業局のダムとして概要が掲載されている。
なお、正式名称は宇部丸山ダムとされているが、県内近辺に同名のダムが存在しないことから「丸山ダム」と呼ばれることが多い。本稿でも丸山ダムという呼称で説明する。
《 アクセス 》
丸山ダムを中心にポイントした地図を掲載する。


丸山ダムは国道2号沿いに存在しており、国道からも一瞬だが壁のように聳える堰堤を観ることができる。
市街部を基準にするなら、国道490号との重用区間開始地点となる瓜生野交差点で右折し国道2号を木田方面に向かう。

辻堂バス停を過ぎた直線区間で、丸山ダムの堰堤が一瞬見える場所がある。


ダム堰堤は国道2号から100m程度しか離れていない場所に聳えている。 灌漑用水需要期となる5月から9月末まではダム堰堤の手前に噴水が上がっているのが見える。
詳細記事: 灌漑用設備(噴水)


堰堤前を過ぎた先に「丸山ダム」の大きな看板が出ている。この看板は車地側から来たときにはよく見えるが、瓜生野側からだと木の陰になって見えづらい。
その後別の位置に新しい標識が設置された…詳しくは近年の変化を参照


この看板の前がダム下公園への入口になっているが、進入路はチェーンが張られ車は入れない。また、公園とは言ってもベンチなどはいっさいなく宇部丸山ダム竣工のモニュメントが設置されているだけである。
先述の噴水も入口には車を停められないので、このスペースに停めて歩いて行く。
詳細記事: ダム下公園
その先に押しボタンと感応式を兼ねた信号があり、読みづらいながら「丸山ダム」の地名表示が出ている。


押しボタン式信号からは斜めに伸びる細い道(市道木田線)と直角に曲がる広い対面通行の道(市道薬師堂立熊線)があるので、広い道の方に入る。

国道2号を逸れると市道はすぐに小さな沢を遡行するきつい登り坂になる。
この沢の入口付近に厚東川1期導水路のNo.6が存在する
200m程度進んだ坂の途中に左へ曲がる分岐に出会うので、ここで左折する。
なお、この分岐に丸山ダム関連の案内板は出ていないので注意が必要。


この進入路から先は企業局管理の通路という扱いになる。

最初に見える右への分岐路は固定式の車止めがあり侵入できない。
これはかつての工事用道路の痕跡と考えられている。ダム湖の水位が低いときには湖底に伸びる道が観察される。
詳細記事: 工事用道路


そのすぐ先左側に砂利敷きの駐車場がある。
ダム堰堤からはやや離れているが、広さは充分にあり正規に駐車場として案内されている。
詳細記事: 駐車場


駐車場は花見の時期は賑わうし、普段でもルアー釣りなどで意外に来訪者があって常時車が停まっている。
駐車場内には企業局管理のトイレが設置されている。

管理道が一番高い位置にさしかかったところに舗装されていないコブ状の膨らみがあり、丸山溜め池の由来やダムに関する説明板が設置されている。
太陽光発電量をリアルタイムで表示する電光掲示板は撤去された


この先を下ったところ左側に舗装された駐車スペースがあり、ダム堰堤が見えてくる。
その袂に水利使用標識が掲示されている。
同じものがダム下の薬師川にも掲示されている


ダム堰堤上は車で通行可能である。
右側ダム湖上に見えるのは有帆ポンプ場向けの取水口である。


ダム堰堤内側の様子。
垂直壁で何処からも上がれる場所はないのは一般のダムと同じである。


下流側の様子。
左岸側が公園になっている。
監査廊入口が僅かに見えかけている


先述のダム下公園から堰堤上までは階段で行き来が可能であるが、訪れる人が少ないせいか夏場は藪に覆われ接近困難になる。また、右岸側は管理区域になっているので階段自体が存在しない。

帰路は来るとき通った市道をそのまま引き返すのが分かりやすいが、国道2号の往来が極めて多く、車の切れ目を見つけて合流するのが非常に困難である。特に右折して瓜生野交差点方面に向かいたい場合、上下車線の車が切れるまで1分以上待つような事態も起こり得る。狭い道を通ることを厭わなければ、一旦ダム堰堤を通って左岸側へ渡り、国道2号の一つ山側を通る市道瓜生野線を通れば瓜生野交差点へ安全に出られる。
《 特徴 》
・丸山ダムは企業局の管轄となるダムである。このようなダムはさほど珍しくはないものの数は少ない。県内では他に美祢ダム水越ダム湯の原ダムが挙げられる。このうち毎年夏季に開催される「森と湖に親しむ旬間」で見学可能なのは湯の原ダムだけである。

・ゲート操作の必要がないダムの管理所は無人化が標準だが、丸山ダムに関してはダム管理所そのものが存在しない。この理由は職員の詰める管理事務所がある厚東川ダムから近いことと、後で述べるように厚東川ダムと連携して働くよう設計されているからと思われる。

・ダム湖は大小2つの沢を堰き止める形で生じており、尻尾の折れ曲がったザリガニのような形状をしている。
今のところ特に愛称などは付けられていない。当サイトでは「ダム湖」ないしは「丸山ダム湖」と表現している。[1]

・ダム湖の西側の沢には古くから灌漑用の溜め池があり、丸山溜め池と呼ばれていた。この溜め池は瓜生野の灌漑用水確保のために二俣瀬の三賢人と称されるうちの一人、茂平によって築堤された。ダム西側の管理道沿いに丸山水神社が存在し、丸山溜め池の由来を記した石碑がある。昭和40年代後半の国土情報画像[2]では湛水される以前の丸山溜め池を見ることができる。

・丸山ダムの工期は昭和46〜50年度で買収用地は49haである。水没家屋が5戸あったことが知られている。[3]湛水時の伐採は充分には行われていなかったようで現在でも水位が低下したとき入り江部分の至る所で埋没林がみられる。

・美祢ダムと同様、ダム湖に流入する主な河川が存在しない。形式的には薬師川の途中を堰き止めたことになっているが、この川自体の流入量はかなり限られる。それにも関わらず水位は概ね一定している。
その理由は丸山ダムが実質的に厚東川ダムの延長として機能しているからである。即ち小野湖と丸山溜め池の底部は導水路で接続されており、設計当初は2つのダム湖の水位は常に連動していた。ただし2015年以降は後述する丸山ダムポンプ所の存在により、概ね丸山ダム湖の水位の方が高くなっている。
薬師川の水量の影響度がきわめて低いために丸山ダムに蓄えられた水の殆どは導水路を経て小野湖から送られたものである。
用水確保のために別水系の河川から導水路で給水するダムはあるが、ダム湖同士を物理的に接続して用水の相互運用を行っているのは県内ここだけであり、県では当初この水資源開発手法を「高度な水運用」と表現していた。

・相互運用の導水路は小野湖と丸山ダム湖相互の湖底および上部層に造られている。低水連結路はEL=20.00m、高水連結路はEL=33.00m [3]でいずれも湛水面以下にあり常に水圧がかかっている。両ダム湖の湛水面より低い沢を通す場所では直径4000mmの巨大な鋼管が地表部に現れている。これは県の運用する最大径の導水管であり、航空映像からもはっきり視認することができる。


関係者以外殆ど知られていない物件だが、現地へのアクセスは容易で県道小野木田線から道々池への分岐路途中にある。フェンス越しに巨大な鋼管が山の斜面から降りてくる奇観に接することができる。(俗称「水色の大蛇」

・厚東川第2期利水事業の当初計画では、薬師川から尾根一つ西に隔てた大坪川を堰き止め、丸山ダム湖同様に湖水を相互運用する大坪ダムを造る計画があった。しかし立熊地区をはじめとする水没家屋が多く代替地問題が難航したこと、計画策定後のオイルショックにより工業用水需要が低迷したことから事実上撤回されている。詳しくは以下の記事を参照されたい。
詳細記事: 大坪ダム
・ダム湖の東側半島部分に小野湖からの水を受ける注水塔があり、市道薬師堂立熊線から分岐する管理道を経て塔の手前までは行くことができる。
車では進入できない
詳細記事: 宇部丸山ダム・注水口


・ダム湖の南西にある半島に取水塔があり、山陽小野田市の有帆ポンプ場に送水している。


注水口と異なり、太い円筒柱の上にサイコロ状の建屋が乗った独特な形状をしている。(俗称「灰色の豆腐」
詳細記事: 宇部丸山ダム・取水口
この近くには太陽光発電用パネルを載せた筏が浮かんでおり、造られた電力で水質浄化装置を駆動し、余剰分を中国電力に売電している。
かつては発電量を示す電光掲示パネルがメインのダム堰堤駐車場端に設置されていたが、暫く故障中の貼り紙がされた後、現在は企業局アピールの表示に差し替えられている。太陽光パネルによる発電自体は現在も継続されているが、経年変化により発電量は当初よりも下がっているという。

・取水塔より厚東川2期工業用水を取り出す過程で利用されていなかったダム水の位置エネルギーを利用する形態でのマイクロ発電所が建設され、2016年4月より稼働開始されている。これは有帆ポンプ場向けの送水隧道に接続される制御バルブの一つを発電水車に置き換えることにより実現している。詳細は以下を参照。
詳細記事: 宇部丸山発電所
・ダム湖の水の殆どが小野湖からスクリーンを経て流れてきているので、ダムの周辺には網場が存在しない。そのため湖上がスッキリしており広大な溜め池という印象を受ける。


また、上記写真のようにダム堰堤付近の数ヶ所で時折下から水が沸き上がってくるのが見えることがある。アオコなどの発生を抑える水質改善目的の循環装置が沈められている。
駐車場の説明パネルでは一箇所の固定式となっているが実際には数台稼働している

春期にはサクラが楽しめるダムとしても知られる。時期になると駐車場が花見客の車で一杯に埋まる。しかし他の季節はルアー釣り客以外の来訪者がなく管理道周辺に鬱蒼と生い茂る木々の印象から心霊スポットと考える人もいる。同様の噂では木屋川ダムの豊田湖の方が顕著で、いずれもダムに付きものなローカル版の都市伝説に過ぎない。ダム湖付近で何か事件があった等の情報は知られていない。

・元々が利水目的のダム湖のせいか、親水公園のような眺めて楽しむ設備投資が殆どされていない。ただ、ダム湖には外来種の魚が棲むらしく平日でも釣り目的で訪れる人が多い。立入禁止の標識が散在していたが、立て札の多くは文字が読み取れない程度の状態で放置されており、フェンスも設置されておらず事実上黙認されている。かつて貯水率が低下したときには根掛かりの起きやすい護岸付近に釣り糸の着いた大量のワームが投棄されている状況であった。

・堰堤上を含めて車でもダム湖を周回することができる。市道薬師堂立熊線の区間を除外して一連の道は丸山ダムに付随する企業局の管理道扱いになっている。秋口以降、管理道を周回する種別マラソン大会が開催される折りには周辺は丁寧に草刈り整備される。

・大会が開催される以外の時期では、管理道は地元管理道を含む区間を除いて殆ど整備されていない。沿線は構造物やガードレールにスプレーでマーキングされたり外部から持ち込まれた不法投棄物がダム湖付近にまで散乱するなど、治安の悪さが目立つ。民家などは一切なく、鬱蒼と生い茂った木々に覆われてダム湖を見渡せる場所は殆どない。野生動物や不審者に遭遇した場合の危険を考慮すれば単独での歩行や自転車散策は勧められない。

・丸山ダムの流水路断面は一つのカーブではなく、途中に水平状の踊り場を持つ二重のカーブになっている。


この独特な形状の理由は、ダム以前から存在していた工業用水と立体交差させるためと思われる。洪水吐からのダム水流下は試験湛水時以外一度もない。丸山ダムは上流部に大量の水を運ぶ川がなく、洪水時には小野湖からの送水を断って厚東川ダム側で放流できるので、丸山ダムの洪水吐からダム湖の余剰水が流下する事態は殆ど考えられないと言える。

・調整池のダム堰堤寄りを厚東川1期導水路が通じており、分水桝(No.7-1)や灌漑用水向けに取り出す分岐用調整池が存在する。この分岐のために導水路は僅かながら(延長2m程度)開渠区間をもつ。一連の施設群はフェンス内側の管理区域内にあるので、一般にはフェンス越しか堰堤上からしか観ることができない。
3枚横に並んでいる大判蓋の下を1期導水路が通っている


なお、この管理区域内に監査廊の右岸側入口が存在する。

・ダム管理道の北西側は中国電力の山口変電所に極めて近接している。変電所の敷地横からもこの方向に舗装路が伸びており、その末端部分と管理道は100m程度(歩数換算で230歩[9])しか離れていないにもかかわらず車が通れる道は存在しない。自転車の押し歩き程度なら往来可能な山道が存在する。管理道がもっとも変電所に近づく場所では変圧器の電気音が聞こえる。

・ダム湖の北側半島部に使われていない取水塔らしき構造物がある。壁をマーキングされたりガラス窓を割られるなど荒れた状態で放置されている。


詳細は派生記事を参照されたい。
詳細記事: 宇部丸山ダム・廃取水塔
・2014年のはじめ頃までは丸山ダムの水位が低く保たれる現象を確認していた。即ち小野湖と丸山ダム湖の水位が連動せず厚東川ダムの貯水率が90%台でありながら丸山ダムの貯水率が40%台という状況になっていた。[5]
詳細は調査を要するが、厚東川ダム下に最近造られた丸山ダム送水ポンプ場に関係がありそうだ。

・2014年に宇部丸山ダムポンプ場が完成してからは、状況に応じて動力を用いて小野湖のダム水を丸山ダム湖へ送出している。厚東川ダムは利水のみならず治水機能を持たされているため、夏場の渇水が予想されても当初設計の基準以上にダム水を貯留しておくことができず排出せざるを得なかった。宇部丸山ダムは当初計画に治水が盛り込まれていないため、ポンプ場の完成により従来は捨てていたダム湖水を送出することで無駄なく利用し渇水に備えることが可能となった。[6]
したがって小野湖と丸山ダム湖を連絡する導水隧道は現在も機能していると思われるものの、前述のような小野湖と宇部丸山ダム湖の水位はかならずしも一致はしない。仮に日照り続きで小野湖の水位が下がろうとも宇部丸山ダム湖側に送水するので、今後はよほどの干ばつに遭遇しない限り丸山ダム湖の水位が下がることがなく、低水位調査は二度と実行できないと思われる。
《 近年の変化 》
・国道から見づらい位置にあった標示板はより低い見えやすい位置に新しいものが設置された。


・昭和20〜30年代の国土地理院の航空映像を解析することで現在の丸山ダム湖はダム建設でいきなり出現したのではなく、それ以前からあった丸山溜め池とは別に厚東川1期工業用水を貯留する緩衝池が存在していたらしいことが判明した。[7]

・宇部丸山発電所が2016年4月より稼働開始し「森と湖に親しむ旬間」で本年度より見学対象となった。あわせて発電所カードが来訪者向けに配布されるようになった。ただし丸山ダム自体は見学対象ダムにはなっておらず今のところその予定もない。[8]
また、同年10月からは宇部丸山ダムのダムカード配布が始まっている。カードを受け取るための条件は他のダムと同様だが、ダム事務所が存在しないのでダム直下にある二俣瀬地域交流センターダムの郷や二俣瀬ふれあい市場でダムを訪れたことが証明できる画像を提示する形式となっている。

・2019年12月頃からダム下の伐採された雑木エリアの造成工事が始まっている。国道2号に面した部分には住宅地にみられるような練積ブロックによる雛壇が造られた。写真は堰堤上からの撮影。


国道側には管理用道路を造っていますとの工事看板が出ている。雛壇部分に何ができるかはまだ調査されていない。

なお、全体的に内容が古くなってきており写真も品位に劣るものが多いため、総括記事を再構成する予定。
《 個人的関わり 》
注意以下には長文に及ぶ個人的関わりが記述されています。レイアウト保持のため既定で非表示にしています。お読みいただくには「閲覧する」ボタンを押してください。

出典および編集追記:
1.「山口県|企業局総務課|企業局関連ダム

2.「国土画像情報閲覧システム - 丸山溜め池付近(昭和49年度)の航空映像

3. 市上下水道局では丸山湖と呼んでいるようである。

4.「わたしたちの宇部 資料編(昭和48年度版)」p.36

5. 貯水率などの情報については「山口県企業局|企業局関係のダム状況掲示板(リンク切れ)で閲覧できる。例えば平成26年3月28日0時現在(Excelファイル)において丸山ダムの貯水率は厚東川ダムの半分以下にまで絞られている。

6. この機能は2016年の梅雨明け以降続いた小雨で極めて有力に奏功した。厚東川ダムの水位が従来であれば自主節水の検討段階に入る基準値(36.0m)を一時的に割り込みながらその後の大雨(8月28日)で水位を回復し自主節水に至らずに済んだ遠因である。(2016/9/2)
しかし翌年は小野湖上流部の浚渫工事で同様の操作で宇部丸山ダムに貯留した上で水位を下げたものの、工事後も降水量が極めて少なく現在小野湖の水位は近年ないほどに下がっている。宇部丸山ダム湖を満水にしているとは言っても貯水量は小野湖よりはるかに少なく、今後の小雨の状況によっては深刻な水不足に陥ることが心配される。(2017/6/14)

7.「宇部(MCG624)1962/05/22(昭和37年)国土地理院による航空映像」では昔からあった丸山溜め池に隣接する形で工業用水が貯留される湖のようになっていたことが分かる。
画面左下の高解像度表示ボタンを押すと詳細画像が閲覧できる

また「宇部の水道」p.75 の丸山用水に関する記述でも1期水から取水し溜めていたという記述がある。

8.「山口県企業局|宇部丸山ダムのダムカードについて

9. 2020年6月2日調べ。管理道の黄色いガードレール切れ目から山口変電所方向に歩いて奥の舗装路端にあるアルミフェンスまで230歩だった。これはおよそ160mに相当する。

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